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Norlys(ノールリース)-日々のあれこれ
Posted by - 2024.05.08,Wed
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Posted by norlys - 2009.06.26,Fri

谷川でアルパインを登った余熱が冷めず、山と渓谷社から出ている「日本のクラシックルート」をぱらぱらと眺めていたら、全国のアルパインルート一覧のページの地域別の項目に「千石嵓」とか「大蛇嵓」という名称を見た。

大台ヶ原の千石嵓には、サマーコレクションという有名なマルチピッチルートがあるという話を以前Tさんに聞いたことがあったっけ。

「千石嵓」「大蛇嵓」と活字の表記が並んでいるところを眺めると、「嵓」という文字がやけに印象的で、そういえば谷川にも「嵓」の付く地名が多いよな~…と。
というよりも、自分は関東の人間なので「嵓」という地名は、上越地方の谷川周辺地域において「岩峰」を指す地域限定の方言だとばかり思っていたのでした。

たとえば、谷川岳山頂から西南方面にある顕著な岩峰の「爼嵓」(まないたぐら)。それに、「一ノ倉」や「仙ノ倉」の「クラ」も「嵓」と同じ音。倉=嵓=クラ=岩峰・断崖絶壁、と。
一方で、「ドウドウノセン」や「マワットノセン」というように、「セン=滝」。
ゆえに「仙ノ倉」は「滝場の(多い)岩峰」という意味なのだと聞いて、なるほどな~と思ったのでした。

「滝(タキ)」という言葉の用例は奈良・平安時代の文書にも見られるそうなので、谷川周辺地域で滝を「セン」と呼ぶのは、河川を「カセン」(「河」は幅の広い流れで、「川」は幅の狭い流れ)と読むように、セン=川、仙=水の流れるところ -> 滝、と変化したのかも。
専門家ではないので、ただの推測ですが。

しかしまぁ、関西でも「嵓」という地名があって、しかもこれまた古くからクライミングエリアとして親しまれている岩場があるなんて…と、なんだか目かウロコ。

まさか偶発的な自然発生による相似とは思えないので、どういう経路を経てこの文字が伝播したのかという点に興味が湧きました。

というわけで、「嵓」という文字について、ちょいと検索。

-------------------------------------
[ ]
異体字 : 巖(異体字)
・音読み
呉音 : ゲン(ゲム)
漢音 : ガン(ガム)
・訓読み
けわ-しい

【くら】【嵓】【蔵】【倉】【鞍】
屏風のようにそびえたつ岩壁。山稜や山腹に露出した大きな岩や岩場。くらは岩の古語。山名や川(谷、沢)名に蔵、倉、鞍 などがつく場合は、露岩や断崖のあるものが多い。

倉・蔵・鞍・座などは当て字で、本当は、峨・嵓・岩などの字をクラと読む。
-------------------------------------

そういえば、「神楽」の語源は「神様が宿るところ」でしたっけ。
神の座 -> かむくら・かみくら -> かぐら -> 神楽、と。

「座」は当て字で、本来は「峨・嵓・岩」なのだとすれば、はるか昔の神話の時代には神様は高い山にお住まいで、なればこそ山は神様の領域で、こうして原始的な山岳信仰が生まれたのかな。
詳しくないのでよくわかりませんが、あれこれ考えるのは面白いです。

また、「稀少地名漢字リスト」に「嵓」の文字が用いられている地名一覧がありました。
-------------------------------------
【嵓】 [JIS第3水準]
SJIS: ──
Unicode: 5D53

[用例]
青森県むつ市川内町 嵓倉山(がんくらやま・自然地名)
青森県むつ市川内町 嵓倉沢(がんくらさわ・自然地名)
山形県西置賜郡小国町大字小玉川 大嵓尾根(だいぐらおね・自然地名)
※「ダイグラ尾根」という表記が多い。
福島県耶麻郡猪苗代町大字若宮 日向嵓(ひなたいわ・自然地名)
福島県南会津郡檜枝岐村 柴安嵓(しあんぐら・自然地名)
福島県南会津郡檜枝岐村 俎嵓(まないたぐら・自然地名)
群馬県利根郡みなかみ町谷川 爼嵓(まないたぐら・自然地名)
※福島県は燧ヶ岳、群馬県は谷川岳。
群馬県利根郡みなかみ町藤原 幽嵓沢(ゆうくらさわ・自然地名)
群馬県利根郡みなかみ町藤原 オキノ嵓沢(おきのくらさわ・自然地名)
群馬県利根郡片品村大字戸倉 字 景鶴山 松嵓高山(まつくらたかやま・自然地名)
新潟県魚沼市下折立 松嵓沢(まつくらさわ・自然地名)
新潟県魚沼市宇津野 巻嵓沢(まきくらざわ・自然地名)
新潟県魚沼市宇津野 前嵓(まえくら・自然地名)
新潟県中魚沼郡津南町大字結東 字 逆巻 大嵓(おおいわ・自然地名)
長野県下水内郡栄村大字堺 赤嵓(あかくら・自然地名)
長野県下水内郡栄村大字堺 赤嵓沢(あかくらさわ・自然地名)
長野県下水内郡栄村大字堺 赤嵓ノ肩(あかくらのかた・自然地名)
長野県下水内郡栄村大字堺 白嵓(しろくら・自然地名)
長野県下水内郡栄村大字堺 白嵓沢(しろくらさわ・自然地名)
長野県下水内郡栄村大字堺 箱嵓沢(はこいわさわ・自然地名)
※マピオンでは「箱嵒沢」。
三重県多気郡大台町岩井 天狗嵓(てんぐぐら・自然地名)
三重県多気郡大台町大杉 大日嵓(だいにちぐら・自然地名)
三重県多気郡大台町大杉 平等嵓(びょうどうぐら・自然地名)
奈良県吉野郡上北山村大字小橡 蒸籠嵓(せいろぐら・自然地名)
奈良県吉野郡上北山村大字小橡 千石嵓(せんごくぐら・自然地名)
奈良県吉野郡上北山村大字小橡 大蛇嵓(だいじゃぐら・自然地名)
島根県大田市仁摩町大国 竜嵓山(りゅうがんざん・自然地名)
岡山県苫田郡鏡野町養野 泉嵓神社(いずみいわじんじゃ・神社名称)
和歌山県西牟婁郡白浜町 嵓屋峠(いわやとうげ)
  [参考:平成19年度白浜町上水道水質検査計画書(3ページ)]
和歌山県西牟婁郡白浜町 嵓上(がんじょう)
  [参考:平成19年度白浜町上水道水質検査計画書(3ページ)]
和歌山県日高郡印南町古井 古井嵓上神社(ふるいいわがみじんじゃ・神社名称)
-------------------------------------

こうしてみると、「嵓」の字が地名に用いられている地域分布はそれほど多くなく、かなり偏っているような印象。
圧倒的に、大台ケ原周辺と谷川周辺が多いです。
同じクラでも「倉」という字を当てている地名なら、全国的にたくさんありそうだけど。

南魚沼・桧枝岐・湯檜曽周辺には平家の落人伝説が伝えられていますが、その昔に奈良と三重の境にある大台ケ原辺りから東に流れて来た人が「嵓=クラ」という言葉をもたらしたのかなぁ。。なんて勝手に空想。

また、島根、岡山、和歌山に残る「嵓」は読み方が「クラ」ではなく、まさに「岩」。それに自然地名ではなくて神社の名称が多いので、このあたりでは大台ケ原よりももっと古い時代に「嵓」という文字が伝わったのかも。。島根あたりでもっと「クラ」読みが多ければ、出雲神話の時代まで遡れそうなんだけど。。
なーんて勝手に妄想。

しかしまぁ、青森で読みが「ガンクラ」になるのはどうしてなんだぜ? と思うけど、「岩倉」という地名は結構全国に多くて、しかも天照大神の神話に結びついている場所だったりする。なにか関連があるかもしれないし、後付かもしれない。どうなんだろう。

たったひとつの「嵓」という文字が、こんなに想像を膨らましてくれるとは面白いもので。。と、思うのでした。

そういえば。
「日本のクラシックルート」の全国アルパインエリア一覧には、なぜか「須美須島」とか「孀婦(そうふ)岩」も挙げられている。過去に登攀記録があったらしい。いったいいつの時代にどんな酔狂なクライマーがこれらの太平洋上にある岩礁でクライミングを行ったのか激しく知りたくてたまらない。

もうほんとにね、クライマーって奴は…(笑)。
アクセスには「船をチャーターしなくてはならない」とかあるけど、いったいどれだけ日数と費用がかかることやら。

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Posted by norlys - 2009.05.14,Thu
/*書きかけたまま放置してたログ。

2週連続で上高地・乗鞍方面に通い、高速を下りてからの下道をチェックしようと道路マップを広げたら、ぽっちり黒丸と「カンテン・ガーデン」(正しくは「かんてんパパ・ガーデン」)という印を見つけて、あぁここなんだ。。と思ったのでした。

「かんてんパパ」という商品があることは知っていたし、都内にカフェがあることも知っている。
でもこの製品を製造販売している伊那食品工業という企業のことは知らなかった。

すごい企業ですた。

社員の幸せを露骨に追求する会社
年功序列、終身雇用、低成長――伊那食品工業が問う「会社とは何か」
(NBOnline 2009/04/14)

トヨタも驚愕!伊那食品工業「48期連続増収増益」の秘密
(プレジデントロイター 2009/01/16)

環境goo キーパーソンインタビュー :伊那食品工業株式会社 代表取締役社長 塚越寛氏
(2005年)

理念だけでは企業活動は維持できないかもしれないけど、利他的な理想を掲げ実践し継続することの重要性をひしひしと感じます。

たとえば、政治献金問題で話題になった西松建設の社是なぞ今は「勇気、正義、元気」に変わっているけど、たしか不祥事が取り沙汰された時分には「より良く、より安く、より早く」だった。
なんだよそれ、建設会社じゃなくて牛丼屋かよ!! と、ひとりで笑ってしまったんだけど。。w
Posted by norlys - 2009.04.21,Tue

はにゃ。びっくりした。

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米オラクルがサンマイクロ買収へ、ハード市場に参入
(トムソンロイター、2009/04/21 03:11 JST)

[ニューヨーク 20日 ロイター] 企業向けソフト大手の米オラクル(ORCL.O: 株価, 企業情報, レポート)は、ビジネスコンピューターメーカー米サン・マイクロシステムズ(JAVA.O: 株価, 企業情報, レポート)を1株当たり9.50ドルで買収すると発表した。買収総額は74億ドル。今夏の買収完了を目指す。

 サンに対してはIBM(IBM.N: 株価, 企業情報, レポート)が買収を目指していたが、今月に入って交渉が決裂した。関係者によると、1株当たり最大9.40ドルとのIBMの提案をサンが拒否した。

 オラクルによるサン買収については、サンのソフト部門で収益性が向上する可能性がある一方で、IBMのほかヒューレット・パッカード(HP)(HPQ.N: 株価, 企業情報, レポート)やデル(DELL.O: 株価, 企業情報, レポート)、シスコシステムズ(CSCO.O: 株価, 企業情報, レポート)との競争に直面するハード部門でも同様の成功を収めるかは不透明とみる向きがある。
(以下略)
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びっくりはしたものの、よく考えたら個人的には特に影響ないな(笑)。
将来的に、回りまわってじわじわっとなにかしらの影響はあるだろうけど。

OOoが有料化になったらいやだなー。。。と思ったけど、ネット上では「MSへの嫌がらせとして残るだろう」という予想が多数を占めていて、まぁそうかもね。だといいな。

■新社名予想?

852名刺は切らしておりまして :2009/04/21(火) 00:58:42 ID:gQppZ7jL
新社名が発表されました

オラクルさん

10名刺は切らしておりまして [sage] :2009/04/21(火) 01:52:12 ID:YUYXubc/
新社名:オラ・マイクロシステムズ


■面白かった
14名無しさん@九周年 :2009/04/21(火) 07:05:13 ID:XazMwKDP0
お前にサンが救えるか!
Posted by norlys - 2009.02.20,Fri
忘備録。

「常識」は、単なる思いこみってこともある~『百鬼夜行絵巻の謎』 小松 和彦著(評:栗原 裕一郎)【奨】
(NBOnline 「毎日1冊! 日刊新書レビュー」 2009/02/20)

室町時代に一世を風靡した(?)百鬼夜行絵巻の系譜にまつわる定説を覆す(かもしれない)新たな絵巻との出会いと分析・比較と考察について書かれた本だそうな。読んでみたいけど、1,200円という定価に躊躇。。
ふんだんにカラーページが盛り込まれたビジュアル新書だそうなので、決して高くはないけれど。。
カラビナ1枚分と考えれば安いのか(苦笑)。

しかしまぁ、百鬼夜行絵巻を専門的に研究している方がいらっしゃるということと、今更になって定説がひっくり返される(かもしれない)ということに驚く。

妖怪、動物の擬人化、付喪神など、ずらずらと異形のものを描き連ねた百鬼夜行絵巻が、わざわざ制作され大切に保管されまたは模写されてきたというのもすごい。

なんか、色々とすごいよなぁ。。

美術的価値はあるとしても、自分の家にあってもあんまりうれしくないよなぁ。。百鬼夜行絵巻って。
他人に見せて反応を楽しむためのアイテムとしての使い道しか思い浮かばない。
「…まじパネェっす」という感嘆の声を、内心ニヤニヤ期待しながら絵巻を紐解くという構図。

いったいどういう経緯で百鬼夜行絵巻が描かれ、いったいなにがそんなに魅力的で現代まで受け継がれてきたのか、そういうことはこの本を読めばわかるんだろか。
カラビナ1枚分かぁ。。悩ましいのぅ。。

付喪神に関しては、「古い物には魂が宿るから大切に使い続けなければならないという先人の戒め」という説明があるけれど、今の時代だと魂が宿る前にスクラップされてしまうモノの方が多かろう。。

それにしても、この大切にしないと転じて妖怪となるぞ、バチが当たるぞ、という発想は日本独特だよなぁとも思う。
古い物を大切にするという発想そのものは西洋でもあるけれど、「おばあさんが大切にしていた」とか「先祖代々伝わる」とか、人にまつわるエピソードがあるからであって、モノそのものが主格(擬人化)になることは少ないんじゃないのかな。よくわからんけど。

異形のモノしか存在しない世界-こういう奇妙なモチーフが盛んに描かれる日本の文化って面白いよなぁ。なるほど妖怪や百鬼夜行絵巻の研究は、日本文化の根源的な部分に触れるように思う。

■Related review:
(MSN産経 2009.2.2 08:14)
Posted by norlys - 2009.02.10,Tue
JAXAのメルマガで「はやぶさ」のイオンエンジン再点火の報を知る。

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「はやぶさ」イオンエンジン再点火
地球帰還へ向け第2期軌道変換を開始!

小惑星探査機「はやぶさ」はイトカワの軌道離脱後、2007年10月18日にイオンエンジンを停止させ、地球帰還へ向けた第1期軌道変換を完了しています。
これまで慣性飛行を続けてきた「はやぶさ」のリアクションホイールを駆動させ、三軸姿勢制御を確立後、2月4日、イオンエンジンを再点火させて動力飛行を開始しました。イオンエンジンの再点火確認時刻は11時35分です。
現在「はやぶさ」と地球との距離は約3億kmです。
今後、2010年3月頃までイオンエンジンによる加速を徐々に行い、地球帰還へ向けた第2期軌道変換を引き続き実施する予定です。

(以下略)
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がんがれ、超がんがれ。
Posted by norlys - 2009.01.22,Thu
青森出身のMさんからのメールの結語に「へば!」とあって、これが最近個人的にツボ。
なにしろ言語オタ(万年入口)なんで。
青森の方言の「へばな」を縮めた表現で、「じゃあね/ またね」みたいな軽いお別れの言葉なんだそうな。

イタリア語の"Ciao!"とかノル語の"Ha det bra!"と同じように、「へば!」も最後の音にアクセントがつくのでリズミカルで響きがかわいいと思う。

という話を集会の後の飲み会でしていたら、北海道の学校を出た先輩・後輩のお二人さんが、「北海道なら『したっけ』だよな」「そうそう、『したっけ』」と言う。

え? 「したっけ」って、接続詞だと思っていたけど、その意味だけじゃないんだ。。

「『したっけ』って聞いたら、つい後に続く言葉を待ってしまいそうだけど。。」と自分が言うと、「そうそう、それで通じないんですよね。え、なに? って言われちゃう」とKさん。うんうん、「したっけ」と言った相手がくるりと立ち去ったら自分も一瞬ぽかーんとしそう。
もっとも「さようなら」も「左様ならば」(では、そういうことで)が転化したものらしいので、「したっけ」も似たようなものなのかも。

したっけ、新島から帰って伊豆諸島に関するコネタをネットであれこれ拾っている中で、青ヶ島小学校のWebサイトで島の方言の一覧を見た。

驚きを表す「まあ!」という意味で「ハゲ!」というのはおもろいな~とか、「いらっしゃる」は八丈島と同じく「おじゃる」なんだな~とか(八丈島の方言では、「いらっしゃい」(=Welcome)は、「おじゃりやれ」)、つらつらっと眺めている中で、

「オモウワヨウ」 - さようなら(船出のとき)

というのがあって、なんか目が釘付けになった。
「おもうわよう」というのは、ずばり「(遠く離れてもずっとあなたのことを)思うわよう」というのが語源だそうで、あまりの意味の深さや重たさに、ぐっときてしまった。

青ヶ島は八丈島の南70Kmにある断崖絶壁に囲まれた小さな離島。人口約200人。

青ヶ島関係の情報を探してみると、島を離れる船やヘリコプターを見送る人たちが紺地に白抜きで「おもうわよう」と染め抜かれた横断幕を手にしている写真がいっぱい見つかる。

"See you again"とか"Arrivederci"とか"再見" みたいに、再び会うことを約束するのではないお別れの言葉。

なんか、無性に沁みる。。
Posted by norlys - 2009.01.21,Wed
なんかばたばたと広告原稿の作成を終えて、ふ~と一息いれますかとつらつらと日経BP社の土木建築系ポータルサイト、ケンプラッツの記事を見ていたら、なんでも年末年始にかけて映画「黒部の太陽」の上映会が相次いで行われたとか。

年末には大阪でノーカット版、年明けには土木学会の主催で短縮版、と。
え~。。。知らなかった。残念。

黒部の太陽」(1968年公開)は、関西電力主導の下、建設会社などの協力を得て建設された黒部ダム(通称「黒四ダム」)の工事の様子を描いた映画。主演俳優は三船敏男と石原裕次郎。原作は木本正次。

元祖プロジェクトXみたいな内容らしい(自分は未見につき想像。去年の残雪期に剣岳を登りに黒部アルペンルートを乗り継いだとき、トロリーバスの改札脇の液晶画面で映画の一端が放映されていたのをチラ観したことしかない)。

黒部ダム建設工事は、戦後高度経済成長期初期の1956年に着工した世紀の巨大プロジェクト。現場はいかんせん遠隔の僻地。しかも工事を進めると破砕帯と呼ばれる弱層にぶつかり大量の地下水が噴出。工事期間中の殉職者は171人にのぼるという。この時代でも労働基準法に基づく労働環境のチェックはあったようだけど、それでも今同じような職場があったら世間は大騒ぎになるんじゃなかろか。

「この映画は大画面で見てほしい」という主演俳優のひとりである故石原裕次郎氏の遺志を受けて、DVD化などは行われていないのだという。(それとは別に版権の問題が絡むという説もあるとかないとか)
たまにはそういうスタンスの映画があってもいいと思う。でも、あんまり大事にし過ぎてお蔵に入れっぱなしするのはもったいないよな~。。とも思う。

トロリーバスに乗って立山の雄山山頂を過ぎると、「間もなく破砕帯です」というアナウンスが流れ、トンネルの脇にここが「破砕帯」ということを示す電光標識が輝いている。
どうやら難工事の最難関だったということは分かるけど、その様子を再現した迫力溢れる映像を観たら、きっともっと印象に残るだろうに。(というわけで、トロリーバスの改札脇の小さな液晶パネルでは、この映画の出水場面が繰り返し放映されているのだと思う)

実際に、現在50代から60代にある土木関係者の中には、学校の映画鑑賞会などで映画「黒部の太陽」を観て感動し土木の道を選択した人が多いのだとか。映像の力というやつでしょうか。

しかしまた、いったいなぜ、なにがそれほどまでに圧倒的なんでしょか。
この映画を観て感動したという人は、いったいどの役に自分の将来を投影したのでしょか。遠く人里離れた不便な場所で、思いもかけない事故が起きて人が死ぬかもしれない、そんな過酷な現場のどこに惹かれたのでしょか。

規模がどでかくて困難なプロジェクトを遂行し、成果が目に見える形となって残る。そんな巨大プロジェクトに自らを没してみたいという純粋な気持ちなんでしょか。

今のご時勢にこういう大規模プロジェクトを発動するのは難しいだろうし、環境アセスメントとか労働環境とか管理維持を考えたらもっとスマートで別のアプローチを考えることもできるような気がするけれど、確かにそういう時代があったのだということを、若い世代の人たちが共有できないのはもったいような気もする。

剣岳から戻ってきた後に、黒四ダムよりも前の時代に建設された黒部渓谷第3ダムの建設現場を舞台とした「高熱隧道」を読んだ。戦時中で国力増強のためには電力確保が必要ということで遂行された難工事。
冬の黒部の「泡雪崩」という現象により宿舎が一晩にして約600m先の対岸に吹き飛ばされたとか、165度もに達する高温の岩盤を貫通するための困難などが描かれていた。掘り進めば掘り進むほど岩盤の温度は上がり、肌が爛れそうな熱気の中、ダイナマイトの自然発火を恐れながら作業を進めていくという、苛烈な工事現場。技術指導に当たる技師の視点から書かれていて、次々と人間に挑むような大自然の力と共に、現場で働く人夫たちという集団が醸し出す脅威の描写が圧巻。

でもこの本を読んで、よ~しおいらもトンネル技師やダム技師になるぞ~とは思わないような。。(いや、思う人もいるのだろ)

工場群とか倉庫街も嫌いではないけど、自分はやっぱりダムとかトンネルとか橋脚とか、自然のなかの巨大人工建造物の方が好き。そこが厳しい環境の中であればあるほどぐっときます。谷川の万太郎山の中腹ににょっきりと聳える関越トンネルの空気孔とか、ボートで漕ぎ出すとどこまでも果てが見えずに不安を誘う奥只見湖とか。まぁ色々。(人造湖とはいえ、奥只見湖は建造物ではないかな。どうも基準が曖昧。。)

あぁ、わたしたちはここまで来た。厳しくて思いがけない困難や試練を次々に与える大自然と対峙して、遂にここまで来た。その証、または墓標。

今となっては案外地球はちっちゃくて、これ以上インパクトを与えると自分たちの生存にも支障をきたすかもしれないから地球にやさしくしようぜ、と言われるようになったけど、まだ地球はどこまでも巨大で常に人間の前に立ちはだかる試練であり切り拓き克服すべき存在だった頃の碑。

と、たぶんずっと先の未来の人たちには映るんじゃないかな~なんて気がしなくもない。はて。
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Norlys(ノールリース)。極光、いわゆるオーロラ。雪の降る季節と雪の降る景色がすき。趣味は編み物。週末は山を散策。

色々と気になることをメモしたり、グダグダ書いてみたり。山の記録はなるべく参考になりそうなことを…と思いながらも思いついたままに垂れ流し。。
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