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Norlys(ノールリース)-日々のあれこれ
Posted by - 2024.05.13,Mon
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Posted by norlys - 2009.01.21,Wed
なんかばたばたと広告原稿の作成を終えて、ふ~と一息いれますかとつらつらと日経BP社の土木建築系ポータルサイト、ケンプラッツの記事を見ていたら、なんでも年末年始にかけて映画「黒部の太陽」の上映会が相次いで行われたとか。

年末には大阪でノーカット版、年明けには土木学会の主催で短縮版、と。
え~。。。知らなかった。残念。

黒部の太陽」(1968年公開)は、関西電力主導の下、建設会社などの協力を得て建設された黒部ダム(通称「黒四ダム」)の工事の様子を描いた映画。主演俳優は三船敏男と石原裕次郎。原作は木本正次。

元祖プロジェクトXみたいな内容らしい(自分は未見につき想像。去年の残雪期に剣岳を登りに黒部アルペンルートを乗り継いだとき、トロリーバスの改札脇の液晶画面で映画の一端が放映されていたのをチラ観したことしかない)。

黒部ダム建設工事は、戦後高度経済成長期初期の1956年に着工した世紀の巨大プロジェクト。現場はいかんせん遠隔の僻地。しかも工事を進めると破砕帯と呼ばれる弱層にぶつかり大量の地下水が噴出。工事期間中の殉職者は171人にのぼるという。この時代でも労働基準法に基づく労働環境のチェックはあったようだけど、それでも今同じような職場があったら世間は大騒ぎになるんじゃなかろか。

「この映画は大画面で見てほしい」という主演俳優のひとりである故石原裕次郎氏の遺志を受けて、DVD化などは行われていないのだという。(それとは別に版権の問題が絡むという説もあるとかないとか)
たまにはそういうスタンスの映画があってもいいと思う。でも、あんまり大事にし過ぎてお蔵に入れっぱなしするのはもったいないよな~。。とも思う。

トロリーバスに乗って立山の雄山山頂を過ぎると、「間もなく破砕帯です」というアナウンスが流れ、トンネルの脇にここが「破砕帯」ということを示す電光標識が輝いている。
どうやら難工事の最難関だったということは分かるけど、その様子を再現した迫力溢れる映像を観たら、きっともっと印象に残るだろうに。(というわけで、トロリーバスの改札脇の小さな液晶パネルでは、この映画の出水場面が繰り返し放映されているのだと思う)

実際に、現在50代から60代にある土木関係者の中には、学校の映画鑑賞会などで映画「黒部の太陽」を観て感動し土木の道を選択した人が多いのだとか。映像の力というやつでしょうか。

しかしまた、いったいなぜ、なにがそれほどまでに圧倒的なんでしょか。
この映画を観て感動したという人は、いったいどの役に自分の将来を投影したのでしょか。遠く人里離れた不便な場所で、思いもかけない事故が起きて人が死ぬかもしれない、そんな過酷な現場のどこに惹かれたのでしょか。

規模がどでかくて困難なプロジェクトを遂行し、成果が目に見える形となって残る。そんな巨大プロジェクトに自らを没してみたいという純粋な気持ちなんでしょか。

今のご時勢にこういう大規模プロジェクトを発動するのは難しいだろうし、環境アセスメントとか労働環境とか管理維持を考えたらもっとスマートで別のアプローチを考えることもできるような気がするけれど、確かにそういう時代があったのだということを、若い世代の人たちが共有できないのはもったいような気もする。

剣岳から戻ってきた後に、黒四ダムよりも前の時代に建設された黒部渓谷第3ダムの建設現場を舞台とした「高熱隧道」を読んだ。戦時中で国力増強のためには電力確保が必要ということで遂行された難工事。
冬の黒部の「泡雪崩」という現象により宿舎が一晩にして約600m先の対岸に吹き飛ばされたとか、165度もに達する高温の岩盤を貫通するための困難などが描かれていた。掘り進めば掘り進むほど岩盤の温度は上がり、肌が爛れそうな熱気の中、ダイナマイトの自然発火を恐れながら作業を進めていくという、苛烈な工事現場。技術指導に当たる技師の視点から書かれていて、次々と人間に挑むような大自然の力と共に、現場で働く人夫たちという集団が醸し出す脅威の描写が圧巻。

でもこの本を読んで、よ~しおいらもトンネル技師やダム技師になるぞ~とは思わないような。。(いや、思う人もいるのだろ)

工場群とか倉庫街も嫌いではないけど、自分はやっぱりダムとかトンネルとか橋脚とか、自然のなかの巨大人工建造物の方が好き。そこが厳しい環境の中であればあるほどぐっときます。谷川の万太郎山の中腹ににょっきりと聳える関越トンネルの空気孔とか、ボートで漕ぎ出すとどこまでも果てが見えずに不安を誘う奥只見湖とか。まぁ色々。(人造湖とはいえ、奥只見湖は建造物ではないかな。どうも基準が曖昧。。)

あぁ、わたしたちはここまで来た。厳しくて思いがけない困難や試練を次々に与える大自然と対峙して、遂にここまで来た。その証、または墓標。

今となっては案外地球はちっちゃくて、これ以上インパクトを与えると自分たちの生存にも支障をきたすかもしれないから地球にやさしくしようぜ、と言われるようになったけど、まだ地球はどこまでも巨大で常に人間の前に立ちはだかる試練であり切り拓き克服すべき存在だった頃の碑。

と、たぶんずっと先の未来の人たちには映るんじゃないかな~なんて気がしなくもない。はて。
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Norlys(ノールリース)。極光、いわゆるオーロラ。雪の降る季節と雪の降る景色がすき。趣味は編み物。週末は山を散策。

色々と気になることをメモしたり、グダグダ書いてみたり。山の記録はなるべく参考になりそうなことを…と思いながらも思いついたままに垂れ流し。。
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