Norlys(ノールリース)-日々のあれこれ
Posted by norlys - 2010.03.16,Tue
週末は八ヶ岳の小同心クラックを登ってきました。
風はあるものの晴天の下、無事にオールフリーで小同心クラックを登攀し、横岳山頂に出て癒しの硫黄岳経由で赤岳鉱泉ベース戻り。
以下、記録です。相変わらず短くまとめるということができません。。
*****
■3月13日(土) 曇り時々雪、美濃戸口~赤岳鉱泉~大同心稜偵察
去年の12月くらいからYさんと「今年は小同心クラックに行きたいねぇ」と話していたものの、なかなか機会が得られず。2月半ばから雨の多い週末を恨めしく思いながらも、チャンスを窺う。「今度こそは」と狙っていた週末。土曜日はイマイチながらも日曜日は晴れの予報。キタ。
土曜日の朝、都内を出発。途中で買い物をしつつ10時前に美濃戸口に到着。うっすらと霧雨が降ったり止んだり。装備を整え10時20分頃に美濃戸口を出発。
前後して複数のガイドパーティ団体さんたちも出発。11時20分に美濃戸山荘に到着。小屋の前は沢山の人で賑わっている。一休みしてすぐに出発。前後して、自分達を含めて総勢20名ちょっとで南沢の林道を埋める。南沢の赤い川床の上を雪解け水がざばざばと流れていく脇を右岸左岸とえっちらおっちら。
ものすごい人数だけど、どのパーティも適度なペースを維持していたので、渋滞に合うこともなく(幸い渋滞を引き起こすこともなく)。
樹林帯の中の景色は一向に変わりばえせず、細かい霧のような雪の舞うけぶった視界の中、淡々と歩く。ふと唐突に目前に鉱泉のアイスキャンディーが現れた。「あ、着いた」。霰のような雪が風に舞う中、午後1時半に赤岳鉱泉に到着。気温はマイナス5℃くらい。それほど寒くない。
自分達が目にしているだけでも相当数の人が赤岳鉱泉入りしているので、快適なテン場が確保できるかどうかが不安だったけれど、予想に反してテントはまばら。到着時点で5張弱。結局、自分達も含めて10張くらい。
狙っていた快適なテン場を無事に確保し、しかも1週間前の降雨のお陰か下地ががっつり固まっていたので簡単に整地するだけで終了。荷物をテント内にしまい、サブザックに必要最小限の荷物を入れて大同心稜への取り付き点を偵察。
硫黄岳への登山道を登り、まもなく右手に現れる大同心沢の道標を見た瞬間、「あぁ、これなら大丈夫」とYさんの安堵の声。トレースは一般登山道並みにばっちり。大同心沢に沿って100mほど歩くと、右岸から大同心稜への取り付き点もくっきり。
ひとつ肩の荷が降りた気持ちで偵察から戻り、小屋で受付をしてビールを買い、テント内で明日の準備と夕食。今回の食担はYさん。なんとデザート付き。びっくり。おいしゅうございました。ありがとうございます。
地図やガイドブック、過去の記録をプリントアウトしたものを広げてしばし検討。ガイドブックには「初級、入門」といかにも楽しそうな文句が踊る。でも騙されないぞ(笑)と思う。
外は、雪は止んだものの相変わらずガスっぽく風雪が舞っている。19時に就寝。
夜中に何度か目を覚ます。0時半頃にトイレに向かうために外に出ると風は収まり、空には満天の星。テント内は霜がびっしり。気温はマイナス6度くらい。この後さらに冷え込んだようで、起床時にはプラティパス内の水が半分凍りかかっていた。
■3月14日(日) 晴れ、赤岳鉱泉~大同心稜~小同心クラック~横岳~硫黄岳~赤岳鉱泉~美濃戸口
3時45分に起床。立て続けに、セットしておいた携帯電話のアラームが鳴る。お湯を沸かしてめいめい朝食。まだ胃が起きていないので食欲はまったくないものの、登攀中は飲食できないので、無理やり流し込み。4時半過ぎに小屋のトイレに寄り、アイゼンを装着。外はまだ暗いけれど、うっすら稜線が識別できる。星はあまり見えない。無風。ぼちぼちあちこちで動き出す気配が濃厚で気が急いてしまう。5時10分に出発。
昨日偵察した大同心沢に入ると、今日ついたトレースは見当たらない。どうやら本日の一番乗り。ラッキー。
尾根伝いの急な登りをトレースを追いかける。ときおりずぼっとはまるもののほぼノーラッセル。次第に周囲が明るくなり途中でヘッデンを消す。左に硫黄岳、右に阿弥陀岳がくっきり。山頂付近は朝陽を受けて赤い。
傾斜はいよいよ増し、眼前に威圧的な大同心が現れる。右手のルンゼを挟んで小同心と、縦に走る明瞭なクラックも。一気に心拍数が上昇。落ち着け、自分。
草付きに薄いウィンドクラストが張り付いた斜面を上がり、6時10分過ぎに大同心基部に到着。森林限界を越えたためか風が出てくる。
最初、下の段から回りこもうとYさんが先に進むものの、あまりよくなさそうなので上の段からトラバースすることに。このとき、自分は足をもつらせて5mばかり斜面を転げ落ちて…止まった。
まだ登ってもいないのに…と安堵と共に内心苦笑。気をつけなくては。
いったん大同心基部に戻り、上部の快適なバンドをトラバース。うっすら残るトレースを追いかけてルンゼを少し下り気味に横断。幸い最近雪崩れた形跡は見当たらない。その先のトレースは一切皆無。風雪に吹き消されてしまって見当たらず。登ったり降りたりしながらトラバースを続ける。雪のコンディションは悪くない。ただ、足下は吸い込まれそうなルンゼ。
上へ下へとルートを探りながらトラバースを続け、なだらかに開けた小同心基部に到着。この時点でちょうど7時。
目の前には斑に雪の付いた岩壁。これか。今まで遠くから見てきた岩壁はこれか。なるほど顕著なクラックというかチムニーが岩壁を二分している。緊張。
風はいよいよ強く、赤岳方面から吹き付ける。登攀準備を整える。大同心の基部に後続パーティの姿が見える。
1P(35m、Ⅳ-):自分リード
1P目は自分が行きたいと希望していたので、リードさせてもらう。ビレイポイントは残置ハーケンが2枚。「ピッケルは邪魔になるから」と、以前このルートを登ったことのあるYさんからのアドバイスを受け、ピッケルをビナのホルダーにしまう。
「じゃ、お願いします」「はい、行ってらっしゃい」と、登攀開始。この時点で7時半前くらい。
最初は、チムニーを目指して15mほど緩い階段状のフェイス。ホールドもスタンスもガバで着氷もなくひたすら快適。途中、ピナクル状の岩とチムニー手前のハーケンでランニングビレイをとり、チムニーへ。
チムニー内部に入り過ぎると身動きがとれなくなりそうなので、なるべく外側のスタンスを拾って登る。楽しい。30mほどの地点にペツルのアンカー。なるほどこの先は小核心なのかな。頭上にピナクルのシルエットと空が見える。あと5m弱。3、4手か。ぐいぐい登ってピナクルのテラスに到着。
ペツルのアンカー1つと、リングボルト2つの支点からセルフビレイをとり(人気ルートだからかピナクルのテラスの奥にもペツルが2つあった)、笛を鳴らす。と、「ビレイ解除?」としたからYさんの声。テラスから下を覗くと、取り付き点が丸見え。なんだ。
ルベルソキューブでオートブロックビレイをセット。岩に当たるからかロープがやたらと重い。
背後に見える大同心の存在感が圧倒的。今日はまだ誰も取り付いていないようだ。
セカンドのYさんはするすると登って来、そのままリードで2P目の登攀開始。すぐに後続パーティのリードも登って来られ、しばしお話。
2P(45m、Ⅳ-):Yさんリード
1Pの抜け口から上のチムニーへとYさんの登っている様子がよく見える。するすると淀みなくロープが流れ、あっという間にロープ半分。岩壁上部に姿が消え、その後もロープが出ていく。気付いたら残り10mもない。はっとして声をかける。確か2P目は35mのはず…と思っているとロープがいっぱいに。
風が強くコールが届かないけれど、ロープがぐいぐい引かれる手応えがあったので自分も登り始める。2P目もガバが多く快適なチムニー登り。開いた両足の真下に空間が広がり高度感はたっぷり。ただ、チムニーなのでなんとなく安心。残置ハーケンや岩角にセットされた支点を回収しつつ、35mほど登るといったんバンドに出る。目の前にペツルの支点とチムニーの続き。ここが2P目の終了点?と思いながらも上から伸びるロープを追って先を急ぐ。チムニーの幅が狭くなり、ギアラックやヘルメットが引っかかる。身体を振ってチムニーの外のホールドを拾いつつ登り、小同心の肩に到着。
小同心の肩にもペツルのハンガーが2つあり、Yさんはそこでビレイ中。目の前に4mほどの壁。その上が小同心の頭か。Yさんは「60mロープだったら、小同心の頭まで伸ばせたのになぁ」と残念がる。
稜線に出ると風は一層強く右から吹き抜けるけれど、陽射しが暖かい。
(この2P目と3P目のの写真を撮り損ねてたいへん残念です。。)
3P(10m、III):自分がリード
小同心の頭に直登するルートも面白そうだったけれど、左のバンドから草付きの方が行きやすいよ、というYさんのアドバイスを得て、ロープを付けたままちょっと偵察…のつもりが、あっさりと小同心の頭に出てしまったので、スピード重視ということでよしとする。ここにもまたペツルのハンガーが2つ。セルフビレイをとり、肩がらみで確保。すぐにYさんも到着。横岳山頂直下の岩場を通過するパーティが見える。あと一息。
4P:雪稜をコンテ
ロープを半分ずつに束ね、雪稜をコンテで進む。振り返ると自分達のトレースが小同心の頭からぽくぽくと続いている。
5P(25m):自分がリード
横岳山頂直下の岩場。左手には急峻なルンゼを挟んで大同心の岩壁。先ほど稜線に見えたパーティはすでに硫黄岳山荘の手前あたり。
最初にYさんが様子を見にロープを伸ばす。岩に氷が張り付いていて手が悪いらしい。右も左も切れ落ちたルンゼで岩場の先が山頂だから、やっぱりここを登るしかなさそう…。イチかバチかで、自分にリードを交替してもらう。
一段上がったところに古い残置ハーケンがひとつ。雪を払うと、その上にハーケンがもうひとつ。目の前のバンドに上がれば良いのは分かるけれど、いまいち手が悪い。ガツガツとピックで周囲の氷を叩き落す。剥がした氷の下から、胸のあたりにリングボルトが現れる。これで残置支点が3つ。届く範囲のホールドを手探りで確認し、スタンスの順番とムーブを予想する。あとは行くしかないな~と、ワンポイントの乗越しで小バンドへ。そこから右に進み上を目指すと、横岳山頂に、ぽんと出た。おお。うれしい。この時点でほぼ10時。
横岳山頂の標識を支点にビレイシステムをセットし、Yさんをビレイ。すぐにYさんも到着。「おめでとー、ありがとうー、お疲れー」と何度も繰り返す。風は多少あるものの、陽射しが強いので寒くない。
写真を撮りまくり、ロープやギアを片付けてのんびり休憩。絶景かな、絶景かな。
当初は地蔵尾根経由で赤岳鉱泉に戻る予定だったけれど、自分は硫黄岳山頂に立ったことがないのと、山頂直下の岩壁から見たなだらかな稜線が魅力的だったのでぜひにと硫黄岳経由を希望。
折りしも後続パーティのリードの方を迎え、10時40分過ぎに硫黄岳に向けて出発。
山頂直下の岩壁から見上げた稜線は予想通りなだらかで、バテ気味の身にも癒しの風景。振り返って小同心を見ると、3パーティ目が最後のピッチを登っている。
11時35分に硫黄岳山頂着。樹林帯に入ると風は収まり、陽射しが暑いくらい。
12時25分にテン場に戻り、お昼ご飯を食べてそそくさと撤収開始。14時前に赤岳鉱泉を出発し、来たときと同じ南沢経由で下山。下の道はすっかり雪がぬかるみ、小さな流れをつくっている。もう春なんだなぁ。
15時半に美濃戸口の駐車場に帰還。樅の木の湯で温まり、一路帰京。
*****
雪で斑な黒い岩壁、顕著なクラック、八ヶ岳特有の丸っこいホールド、ペカペカのペツル、切れ落ちたルンゼ、仰ぎ見たスカイライン、空の青さ…etc. 脳裏にまざまざとフラッシュバックします。
登攀日和の晴天の中、人気ルートにも関わらず一番乗りでき、オンサイト、オールフリーで登ることができてよかったです(しみじみ)。
「冬壁入門」と言われる小同心クラックは、なるほどエキスパートな人たちにはお手頃なルートなのかもしれないけれど、自分にとってはほどよい楽しめほどよく緊張させられたルートでした。ありがとうございます。
風はあるものの晴天の下、無事にオールフリーで小同心クラックを登攀し、横岳山頂に出て癒しの硫黄岳経由で赤岳鉱泉ベース戻り。
以下、記録です。相変わらず短くまとめるということができません。。
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■3月13日(土) 曇り時々雪、美濃戸口~赤岳鉱泉~大同心稜偵察
去年の12月くらいからYさんと「今年は小同心クラックに行きたいねぇ」と話していたものの、なかなか機会が得られず。2月半ばから雨の多い週末を恨めしく思いながらも、チャンスを窺う。「今度こそは」と狙っていた週末。土曜日はイマイチながらも日曜日は晴れの予報。キタ。
土曜日の朝、都内を出発。途中で買い物をしつつ10時前に美濃戸口に到着。うっすらと霧雨が降ったり止んだり。装備を整え10時20分頃に美濃戸口を出発。
前後して複数のガイドパーティ団体さんたちも出発。11時20分に美濃戸山荘に到着。小屋の前は沢山の人で賑わっている。一休みしてすぐに出発。前後して、自分達を含めて総勢20名ちょっとで南沢の林道を埋める。南沢の赤い川床の上を雪解け水がざばざばと流れていく脇を右岸左岸とえっちらおっちら。
ものすごい人数だけど、どのパーティも適度なペースを維持していたので、渋滞に合うこともなく(幸い渋滞を引き起こすこともなく)。
樹林帯の中の景色は一向に変わりばえせず、細かい霧のような雪の舞うけぶった視界の中、淡々と歩く。ふと唐突に目前に鉱泉のアイスキャンディーが現れた。「あ、着いた」。霰のような雪が風に舞う中、午後1時半に赤岳鉱泉に到着。気温はマイナス5℃くらい。それほど寒くない。
自分達が目にしているだけでも相当数の人が赤岳鉱泉入りしているので、快適なテン場が確保できるかどうかが不安だったけれど、予想に反してテントはまばら。到着時点で5張弱。結局、自分達も含めて10張くらい。
狙っていた快適なテン場を無事に確保し、しかも1週間前の降雨のお陰か下地ががっつり固まっていたので簡単に整地するだけで終了。荷物をテント内にしまい、サブザックに必要最小限の荷物を入れて大同心稜への取り付き点を偵察。
硫黄岳への登山道を登り、まもなく右手に現れる大同心沢の道標を見た瞬間、「あぁ、これなら大丈夫」とYさんの安堵の声。トレースは一般登山道並みにばっちり。大同心沢に沿って100mほど歩くと、右岸から大同心稜への取り付き点もくっきり。
ひとつ肩の荷が降りた気持ちで偵察から戻り、小屋で受付をしてビールを買い、テント内で明日の準備と夕食。今回の食担はYさん。なんとデザート付き。びっくり。おいしゅうございました。ありがとうございます。
地図やガイドブック、過去の記録をプリントアウトしたものを広げてしばし検討。ガイドブックには「初級、入門」といかにも楽しそうな文句が踊る。でも騙されないぞ(笑)と思う。
外は、雪は止んだものの相変わらずガスっぽく風雪が舞っている。19時に就寝。
夜中に何度か目を覚ます。0時半頃にトイレに向かうために外に出ると風は収まり、空には満天の星。テント内は霜がびっしり。気温はマイナス6度くらい。この後さらに冷え込んだようで、起床時にはプラティパス内の水が半分凍りかかっていた。
■3月14日(日) 晴れ、赤岳鉱泉~大同心稜~小同心クラック~横岳~硫黄岳~赤岳鉱泉~美濃戸口
3時45分に起床。立て続けに、セットしておいた携帯電話のアラームが鳴る。お湯を沸かしてめいめい朝食。まだ胃が起きていないので食欲はまったくないものの、登攀中は飲食できないので、無理やり流し込み。4時半過ぎに小屋のトイレに寄り、アイゼンを装着。外はまだ暗いけれど、うっすら稜線が識別できる。星はあまり見えない。無風。ぼちぼちあちこちで動き出す気配が濃厚で気が急いてしまう。5時10分に出発。
昨日偵察した大同心沢に入ると、今日ついたトレースは見当たらない。どうやら本日の一番乗り。ラッキー。
尾根伝いの急な登りをトレースを追いかける。ときおりずぼっとはまるもののほぼノーラッセル。次第に周囲が明るくなり途中でヘッデンを消す。左に硫黄岳、右に阿弥陀岳がくっきり。山頂付近は朝陽を受けて赤い。
傾斜はいよいよ増し、眼前に威圧的な大同心が現れる。右手のルンゼを挟んで小同心と、縦に走る明瞭なクラックも。一気に心拍数が上昇。落ち着け、自分。
草付きに薄いウィンドクラストが張り付いた斜面を上がり、6時10分過ぎに大同心基部に到着。森林限界を越えたためか風が出てくる。
最初、下の段から回りこもうとYさんが先に進むものの、あまりよくなさそうなので上の段からトラバースすることに。このとき、自分は足をもつらせて5mばかり斜面を転げ落ちて…止まった。
まだ登ってもいないのに…と安堵と共に内心苦笑。気をつけなくては。
いったん大同心基部に戻り、上部の快適なバンドをトラバース。うっすら残るトレースを追いかけてルンゼを少し下り気味に横断。幸い最近雪崩れた形跡は見当たらない。その先のトレースは一切皆無。風雪に吹き消されてしまって見当たらず。登ったり降りたりしながらトラバースを続ける。雪のコンディションは悪くない。ただ、足下は吸い込まれそうなルンゼ。
上へ下へとルートを探りながらトラバースを続け、なだらかに開けた小同心基部に到着。この時点でちょうど7時。
目の前には斑に雪の付いた岩壁。これか。今まで遠くから見てきた岩壁はこれか。なるほど顕著なクラックというかチムニーが岩壁を二分している。緊張。
風はいよいよ強く、赤岳方面から吹き付ける。登攀準備を整える。大同心の基部に後続パーティの姿が見える。
1P(35m、Ⅳ-):自分リード
1P目は自分が行きたいと希望していたので、リードさせてもらう。ビレイポイントは残置ハーケンが2枚。「ピッケルは邪魔になるから」と、以前このルートを登ったことのあるYさんからのアドバイスを受け、ピッケルをビナのホルダーにしまう。
「じゃ、お願いします」「はい、行ってらっしゃい」と、登攀開始。この時点で7時半前くらい。
最初は、チムニーを目指して15mほど緩い階段状のフェイス。ホールドもスタンスもガバで着氷もなくひたすら快適。途中、ピナクル状の岩とチムニー手前のハーケンでランニングビレイをとり、チムニーへ。
チムニー内部に入り過ぎると身動きがとれなくなりそうなので、なるべく外側のスタンスを拾って登る。楽しい。30mほどの地点にペツルのアンカー。なるほどこの先は小核心なのかな。頭上にピナクルのシルエットと空が見える。あと5m弱。3、4手か。ぐいぐい登ってピナクルのテラスに到着。
ペツルのアンカー1つと、リングボルト2つの支点からセルフビレイをとり(人気ルートだからかピナクルのテラスの奥にもペツルが2つあった)、笛を鳴らす。と、「ビレイ解除?」としたからYさんの声。テラスから下を覗くと、取り付き点が丸見え。なんだ。
ルベルソキューブでオートブロックビレイをセット。岩に当たるからかロープがやたらと重い。
背後に見える大同心の存在感が圧倒的。今日はまだ誰も取り付いていないようだ。
セカンドのYさんはするすると登って来、そのままリードで2P目の登攀開始。すぐに後続パーティのリードも登って来られ、しばしお話。
2P(45m、Ⅳ-):Yさんリード
1Pの抜け口から上のチムニーへとYさんの登っている様子がよく見える。するすると淀みなくロープが流れ、あっという間にロープ半分。岩壁上部に姿が消え、その後もロープが出ていく。気付いたら残り10mもない。はっとして声をかける。確か2P目は35mのはず…と思っているとロープがいっぱいに。
風が強くコールが届かないけれど、ロープがぐいぐい引かれる手応えがあったので自分も登り始める。2P目もガバが多く快適なチムニー登り。開いた両足の真下に空間が広がり高度感はたっぷり。ただ、チムニーなのでなんとなく安心。残置ハーケンや岩角にセットされた支点を回収しつつ、35mほど登るといったんバンドに出る。目の前にペツルの支点とチムニーの続き。ここが2P目の終了点?と思いながらも上から伸びるロープを追って先を急ぐ。チムニーの幅が狭くなり、ギアラックやヘルメットが引っかかる。身体を振ってチムニーの外のホールドを拾いつつ登り、小同心の肩に到着。
小同心の肩にもペツルのハンガーが2つあり、Yさんはそこでビレイ中。目の前に4mほどの壁。その上が小同心の頭か。Yさんは「60mロープだったら、小同心の頭まで伸ばせたのになぁ」と残念がる。
稜線に出ると風は一層強く右から吹き抜けるけれど、陽射しが暖かい。
(この2P目と3P目のの写真を撮り損ねてたいへん残念です。。)
3P(10m、III):自分がリード
小同心の頭に直登するルートも面白そうだったけれど、左のバンドから草付きの方が行きやすいよ、というYさんのアドバイスを得て、ロープを付けたままちょっと偵察…のつもりが、あっさりと小同心の頭に出てしまったので、スピード重視ということでよしとする。ここにもまたペツルのハンガーが2つ。セルフビレイをとり、肩がらみで確保。すぐにYさんも到着。横岳山頂直下の岩場を通過するパーティが見える。あと一息。
4P:雪稜をコンテ
ロープを半分ずつに束ね、雪稜をコンテで進む。振り返ると自分達のトレースが小同心の頭からぽくぽくと続いている。
5P(25m):自分がリード
横岳山頂直下の岩場。左手には急峻なルンゼを挟んで大同心の岩壁。先ほど稜線に見えたパーティはすでに硫黄岳山荘の手前あたり。
最初にYさんが様子を見にロープを伸ばす。岩に氷が張り付いていて手が悪いらしい。右も左も切れ落ちたルンゼで岩場の先が山頂だから、やっぱりここを登るしかなさそう…。イチかバチかで、自分にリードを交替してもらう。
一段上がったところに古い残置ハーケンがひとつ。雪を払うと、その上にハーケンがもうひとつ。目の前のバンドに上がれば良いのは分かるけれど、いまいち手が悪い。ガツガツとピックで周囲の氷を叩き落す。剥がした氷の下から、胸のあたりにリングボルトが現れる。これで残置支点が3つ。届く範囲のホールドを手探りで確認し、スタンスの順番とムーブを予想する。あとは行くしかないな~と、ワンポイントの乗越しで小バンドへ。そこから右に進み上を目指すと、横岳山頂に、ぽんと出た。おお。うれしい。この時点でほぼ10時。
横岳山頂の標識を支点にビレイシステムをセットし、Yさんをビレイ。すぐにYさんも到着。「おめでとー、ありがとうー、お疲れー」と何度も繰り返す。風は多少あるものの、陽射しが強いので寒くない。
写真を撮りまくり、ロープやギアを片付けてのんびり休憩。絶景かな、絶景かな。
当初は地蔵尾根経由で赤岳鉱泉に戻る予定だったけれど、自分は硫黄岳山頂に立ったことがないのと、山頂直下の岩壁から見たなだらかな稜線が魅力的だったのでぜひにと硫黄岳経由を希望。
折りしも後続パーティのリードの方を迎え、10時40分過ぎに硫黄岳に向けて出発。
山頂直下の岩壁から見上げた稜線は予想通りなだらかで、バテ気味の身にも癒しの風景。振り返って小同心を見ると、3パーティ目が最後のピッチを登っている。
11時35分に硫黄岳山頂着。樹林帯に入ると風は収まり、陽射しが暑いくらい。
12時25分にテン場に戻り、お昼ご飯を食べてそそくさと撤収開始。14時前に赤岳鉱泉を出発し、来たときと同じ南沢経由で下山。下の道はすっかり雪がぬかるみ、小さな流れをつくっている。もう春なんだなぁ。
15時半に美濃戸口の駐車場に帰還。樅の木の湯で温まり、一路帰京。
*****
雪で斑な黒い岩壁、顕著なクラック、八ヶ岳特有の丸っこいホールド、ペカペカのペツル、切れ落ちたルンゼ、仰ぎ見たスカイライン、空の青さ…etc. 脳裏にまざまざとフラッシュバックします。
登攀日和の晴天の中、人気ルートにも関わらず一番乗りでき、オンサイト、オールフリーで登ることができてよかったです(しみじみ)。
「冬壁入門」と言われる小同心クラックは、なるほどエキスパートな人たちにはお手頃なルートなのかもしれないけれど、自分にとってはほどよい楽しめほどよく緊張させられたルートでした。ありがとうございます。
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非公開
自己紹介:
Norlys(ノールリース)。極光、いわゆるオーロラ。雪の降る季節と雪の降る景色がすき。趣味は編み物。週末は山を散策。
色々と気になることをメモしたり、グダグダ書いてみたり。山の記録はなるべく参考になりそうなことを…と思いながらも思いついたままに垂れ流し。。
色々と気になることをメモしたり、グダグダ書いてみたり。山の記録はなるべく参考になりそうなことを…と思いながらも思いついたままに垂れ流し。。
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