今週末は北海道でスキーの予定。とても楽しみだけど、先日痛めた右足踵の具合がちと不安。
スキーならブーツでがっちょり固定するから大丈夫だろうと思ったけど、案外そうでもなかった。。
ま、ぼちぼちと。
北海道といえば。お正月に池澤夏樹の「静かな大地」を読了。
以前購入して3ページくらい読んだだけで、ずいぶんと放置しておいた。時間があったのでふと読み始めたら、一気に読み終えてしまった。
面倒なので内容紹介はAmazonからコピペ(おいおい)。
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短い繁栄の後で没落した先祖たちのことを小説にするのは、彼らの物語を聞いて育ったぼくの夢だった--明治初年、淡路島から北海道の静内に入植した宗形三郎と四郎。牧場を開いた宗形兄弟と、アイヌの人々の努力と敗退をえがく壮大な叙事詩。著者自身の先祖の物語であり、同時に日本の近代が捨てた価値観を複眼でみつめる、構想10年の歴史小説。第3回親鸞賞受賞作。
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この小説の主人公は宗形四郎の次女である由良。北海道静内町生まれで札幌育ち。由良の父は幼少時代に家族と共に淡路の洲本から同郷の者たちと共にこの地に入植した。
彼女が自分の叔父にあたる宗形三郎と彼の周囲にいたアイヌの人々の物語を再構築しようと試みる中で、父から聞いた昔話や叔父の手紙、現存する人物との対話や昔話、アイヌ民話などが幾層もに積み重なっていく。
由良の叔父である宗形三郎は、江戸から明治という時代の変革や、淡路から北海道という環境の変化に一切の戸惑うことなく伸びやかに適応し、海外の新しい農耕畜産技術を速やかに吸収しつつ、現地に住まうアイヌの人々と協力して宗形牧場を開いた。この牧場経営は一時期大いに繁栄するものの、やがて嫉妬や批判の対象となり、大きくどす黒い悪意に呑まれていく。
この物語はフィクションだけれど、結構な割合で実際の史実も含まれているそうな。なんでもモデルになった人物は著者の系譜に連なる人たちだという。とはいえ、いわゆる歴史小説のように時間の経緯に沿って一方向に流れる形態ではなく、色々な要素が複眼的に複雑に絡み合う。
まるで大きなジグソーパズルを組み立てていくように、最初のうちは枠とその周辺がおぼろげに形をなし、ある程度まとまったピースがぽんぽんと組まれ、やがて加速度的に終焉に向かい、全体像が完成する。お見事です。
北海道の開拓初期の時代やアイヌの風習など、いかに自分がそれらのことを知らなかったのかということを今更ながらに知りました。(この本はあくまでも小説だし、この本に書かれたことがすべてではないとは思うけど。)
特に、作中でいくつか語られるアイヌの民話はとても興味深いです。日本の各地に残る民話と色彩が異なるような気がします。神様がたくさん登場するからか、民話というより諸国の神話に近いような、なんというか。
(作中に紹介される民話とは別だけど、青空文庫に知里幸恵さんの「アイヌ神謡集」が収録されていました)
また、シャクシャイン(Saksaynu) というアイヌの部族の首長が松前藩に蜂起したという史実も、この本を読んで初めて知りました。日本史とってなかったので。。(トホ
シャクシャインと聞いて、ぱっと脳裏に浮かんだのは、湯河原幕岩の喜望峰にある5.11aのルート。あれが、それか。
日本の岩場100(関東)では「シャックシャイン」と誤表記されているけれど、クライマー間では「『シャクシャイン』が正しい!」と強調される、その理由がなんとなくわかったような気がします。名前を間違えちゃいけないよねってことで。
脱線した。
主人公の由良は、叔父の生き様を再構築する中で、アイヌの民との共生を選んだ叔父やアイヌの民に共感を寄せ、当時の和人の社会や対応を批判する。共感できる点も批判する面もなるほど理解できるけれど、彼女のように一方に思いいれや肩入れする明確な理由があるならば、正直、どんなにか楽だろなと自分は思う。
この本の中で起きた数々の出来事は、割合と今から近い昔の日本で起きたことなんだよな…と考えると、途端にもやもやと自分の目が曇るのがわかる。
著者も登場人物もみな一様に「こっち側においで」と手を振るけれど、その手をとる資格は自分にはないような気がする。
たとえ、「資格なんて問わないよ、あなたがどう思うか、なにを考えるか、それは個人の思想の自由だよ」と言われたとしても、きっと踏みとどまってしまうような気がする。難しい。。
ずっと昔から似たようなことはあったし、今でも人間は世界中で同じようなことを繰り返している。
世界は原初から現在と同じ国境線が引かれていたわけじゃない。さまざまな経緯があって今に至り、今でも領土や資源や宗教や風習や言語を巡って世界中で紛争が絶えない。
まぁ色々と考えてもキリがないのでやめておく。
祈ること、願うこと、思うこと、それだけが自分にできること。
人間の営みの中で僅か1代だけで一瞬の輝きを放って失われた、もうどこにもないユートピア。
北の大地の丘陵に広がる広大な牧草地に立ち、遠く麓の浜辺の町に向かって、もうそこにはいない人たちが穏やかな表情で手を振る情景が浮かぶ。そんな一冊。
色々と気になることをメモしたり、グダグダ書いてみたり。山の記録はなるべく参考になりそうなことを…と思いながらも思いついたままに垂れ流し。。
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