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Norlys(ノールリース)-日々のあれこれ
Posted by - 2024.11.29,Fri
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Posted by norlys - 2008.09.08,Mon
週末の土曜日は奥多摩で沢登り。
前日の金曜日に天気予報を見ると、土曜の方がかろうじて天気がもちそうだったので、奥多摩の日帰りの沢に行きましょう、場所は当日決めましょうと、いうことに。

朝4時に起床。外はまだ薄暗い。いつの間にかすっかり日の出が遅くなったことに気付く。
朝5時前に家を出て電車に揺られていると、空には眠そうな雲が垂れ込めている。山の方が天気が良さそうな予報だったけど、これでホントに大丈夫なのかな。。と、ちょっと不安になる。

6時ちょうどに集合場所へ。メンバーはY君とUさんと自分の3人。
出発前にみんなで「関東周辺の沢」をぱらぱらめくりながら、行き先を相談。
めぼしい星3つの沢はすでにUさんか自分が遡行済みだったため、まだ誰も行ったことのない沢ということで「巳ノ戸谷」に決定。

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巳ノ戸谷は日原川を代表する険谷とのことですが、美しい滝や釜が多く水量も豊富でお腹いっぱい満喫できました。渡渉、高巻き、シャワークライミングでの直登、ちょっとしたゴルジュ泳ぎ、ツメと沢登りのあらゆる要素が凝縮されています。
下調べもせずに当日遡行を決めたので、下山路も核心であることを思い知りました。結果としては時間はかかったものの無事に下山することができ、沢登りならではのルーファイの面白さも満喫しました(行き当たりばったりはやめましょう、はい)。
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遡行記録、続きます。

途中、日原川の流れを見ると、それなりに水量は多いものの先週のように白濁はしておらず、なんとなくホっとする。

日原の集落を過ぎ、日原街道から日原川沿いに左折して日原林道を進み八丁橋手前のスペースに駐車。すでに3、4台の車が停車中。ここで沢装備を準備。その間にも2、3台ほど車がやってくる。みな釣り師さんのようで、沢屋さんは自分たちのみ。

準備をしている最中に沢靴下を忘れたことに気付く。げげげ。
まぁ、昔の沢屋さんたちはわらじで沢に突入していたことを思えば、なんとかなるだろー。

8時45分に歩き出し。しばらくは日原林道を歩く。八丁橋まではダート道だったのに、八丁橋から先は立派なコンクリート舗装になっていてちょっと不思議。管轄が違うんだろか。

林道の左手に流れる日原川はかなり深い峡谷。この高さから入渓点まで下りるのもそれなりに苦労かも。。と思う。8時57分に林道から沢への下降点に到着。

沢へ下りる道は踏み跡明瞭ながら、土壁がたっぷり水を含んでいてグズグズのガレガレ。落ちたら結構まずそう。

P9060416_s.JPG9時10分に日原川に到達。対岸に巳ノ戸谷の出合が見える。轟々と水流豊かな流れにちょっとビビル。
トポには「水量が多く水勢が強い場合は渡渉は困難を極める。入渓を中止する勇気も必要」とある。
この日の水量は膝上程度なので、まぁ大丈夫だろうと判断する。

巳ノ戸谷の出合は狭く、両岸が切り立った場所。スレートの岩は黒く、深遠の淵という言葉が似合う。数万スケールの年月で水が大地を穿つその悠久の営みに驚く。そして、こんなところが東京にもあるという事実にまた驚く。

巳ノ戸谷の出合に釣り師さんがいらっしゃる。「あっち?」と日原川上流を指差されたので、「いえ、そっち」と巳ノ戸谷を示すと、心なしかがっかりした表情をされる。そりゃそうだよな。ごめんなさい。とはいえ、今更ルートを変更するのも難しい。なるべく釣り師さんの邪魔にならないように、目の届く範囲ではおとなしく右岸の岩を伝って歩く。

P9060345_s.JPG狭く深いゴルジュが徐々に開けてきて、渡渉から10分ほどしたところで大滝15m滝下に到着。どう見ても直登できそうにない。左岸の明瞭な踏み跡を辿って高巻き。斜面はややぐずぐず気味だけど、それほど悪くはない。

沢床や釜や滝は黒いスレートなのに、脇の土壁はぽろぽろと剥がれる緑泥岩に泥が詰まった感じで脆い。これは遡行した範囲の巳ノ戸谷全体に言えることで、水流がそれだけ深く地層を抉ってこの渓谷ができたのかな。。と思う。

大滝を越えると沢は河原が広く穏やかな流れに変わる。左岸に古いわさび田の跡が続く。立派な石積みだけが残り、野性化したワサビがちょろりと生えている程度。

「沢登りルート図集100選」という本に1977年の巳ノ戸谷遡行記録があり、この中ではこのワサビ田はまだ現役として書かれているが、「関東周辺の沢」の1994年の遡行記録ではすでに「ワサビ田跡」になっている。
それにしても、至近の集落である日原集落でさえ片道1時間強の道のりで、いったい誰がこんな辺鄙な場所にワサビ田をしつらえたのだろう。。なんてどうでもいいことを考えてしまう。

ワサビ田を過ぎると右手に「押し出し」が現れる。かなり古そうな地すべりの現場。この谷の両岸はとにかく脆い。長雨の直後や雨の日にはたしかに入渓しない方が良さそうな気がする。
間もなく「忌山の悪場」が現れるので、ここで1回目の休憩。いつの間にか雲の切れ間からわずかに青空覗いている。ほっ。

P9060359_s.JPG再び歩き出すと、すぐに「忌山(いみやま)の悪場」に到着。10時ちょっと過ぎ。
なんというか、「忌山の悪場」というネーミングがすごい。すばらしい。近寄ってはいけない雰囲気がビシバシ伝わってくる。でも踏み込んじゃうけど。
(右岸に忌山の悪場をまるっとパスする高巻きルートがあるそうなんだけど、入口は見当たらなかったし、たぶんここの岩質からいって、あまり安全な道ではなさそうな気がする。。どうなんでしょう)

狭い回廊に5m、4m、4mの滝が段々と続く連瀑帯。それぞれの滝は下に小さいけれど割合深い釜があり、滝の落ち口からはぼうぼうと水が走っている。
高さはそれほどでもなく、傾斜も緩いので、水流の右左に手がかりを見つけてクリア。

8mの滝が現れる。滝のど真ん中に大きな流木が引っかかっている。ここは直登が厳しそうなので、右岸を高巻き。傾斜は緩いけど、岩が案外脆そう。滝の落ち口辺りでトラバースして滝上にちょこんと出る。釜を横切って次の3m滝の右を登る。

その次の3m滝の釜はやや大きく、取り付きまでずぶ濡れになること必至。気温はそこそこ高いのだけれど、水温が低いので泳ぐ勇気がでてこない。でも泳ぐのが大好きな自分は、敢えて荷物を脇にデポして泳いでみる。水深が深くて楽しい。あぁでも、やっぱりつべたい。

P9060380_s.JPG忌山の悪場のハイライト(?) 6m滝に出る(8mという記録もある。でも6mくらいだと思う)。どこをいったい登ったものやら。。と思案に暮れていると、Y君が右壁を登り始める。なんか難しそうだな~。。高巻きルートはないものかな~。。と逡巡していると、途中まで登ったY君が戻ってきて「ロープ出す?」とのこと。ぜひぜひお願いしますということで、Y君リードで登り始めました。

取り付きの泥壁はホールドが豊富ながら全体的に脆い。途中の木がしっかりしているのだけが幸い。滝つぼにかかる巨木の末端を足場に落ち口を目指す。落ち口手前には古いハーケンが二つほど。ただしあまり信用ならない。
なんというか全体的に微妙なバランスが必要で、自分としてはこの6m滝がこの沢の核心でした。

悪場を過ぎると沢はまたなだらかになる。11時10分頃、明瞭な二俣が現れる。左手は鞘口窪。
くっきりと右折する本流に従う。しばらく釜と小滝が連続。鋼鉄のワイヤーが落ちていて、それが長く続いているのが気になる。

トポには右岸に「小屋跡」があると記されているけれど、物の影も見当たらない。1977年当時の遡行図でもすでに「小屋跡」なので、すっかり自然に還ってしまったのかもしれない。

徐々に倒木が煩くなる。ぬるっとしていて、案外いやらしい。

11時25分、左岸に「山抜け」を見る。ここもまた地すべりの跡。
(歩きながらばしばしカメラで写真を撮っているので、今回かなりのんびりモードです)
下部は「押し出し」でここでは「山抜け」と呼ぶのは、名づけた時代が異なるからなんでしょうか。ちなみに、「山抜け」の方が少し新しい印象でした。

相変わらず釜と小滝が連続。ところどころ大量の流木が詰まっている。いったいどこから落ちてきたんだろ。
切り出した木の名残なんだろうか。流木を攀じ登ったりくぐったりと、結構せわしない。

6mの滝は釜を泳いで左岸から取り付く。さほど困難はないし6mもないと思う。

P9060423_s.JPG11時35分、5mの滝下に出る。ここは5m以上はありそうな気がする。右壁が登れそうな気もするけれど、落ち口がややハング気味だし岩が苔生していて直登は厳しそう。なので、さっくり左岸を高巻く。踏み跡明瞭。ただし水分をたっぷり含んだ石交じりの泥はぐずりぐずりとしている。

3m階段状の滝を過ぎると、左手に孫七窪の出合に到着。
この辺りから水流がやや細くなると同時に、格段に岩が緑苔でぬめり始める。
木々の隙間から日光が差し込んでいるけれど、水流を浴び続けたせいかかなり体が冷えている。
おまけに沢靴下がないせいで(冷たいけれど、まぁ思ったよりは大丈夫)かかとが擦れてちょっと痛い。

とはいえ、良さそうな休憩ポイントがないので、しばらくは小滝、釜、流木を越えながらぽくぽく歩く。

P9060407_s.JPG12時45分、右岸に五平窪の出合を見る。五平窪にかかる滝はスダレ状でキレイ。
左岸に湧水している箇所があり、地面の隙間からじわじわと水が染み出している。試しに少し飲んでみたら、ミネラル臭くて苦かった。

五平窪を過ぎると沢相がやや河原っぽくなる。ここで2回目の休憩。
写真を撮りながらのんびり歩いたこともあるけれど、思いのほか時間がかかったな。

休憩後、再び歩き出す。ぼちぼち沢を上がるハズなのでみなキョロキョロと周囲を見渡しながら。

自分の時計の高度計はすでに標高1200mを越えている。Y君の高度計では1100mちょっと。たぶん自分の高度計が狂っているんだろう(というか、以前修正してしまった後からちゃんと合わせていない)。
1180mのところで沢を横切る仕事道を上がるはずだけど、どうもそれらしき道が見当たらない。

と、沢いっぱいに倒木が横たわるところで、Y君が左岸にかかる古びたテープを指差す。
どうやら沢から上がる踏み跡らしきものが見える。

13時20分に遡行終了。踏み跡を辿ってトラバース気味に斜面を上がると、苔生した石が石畳状に上に続いている。石畳を忠実に直登し、目の前に笹藪が現れたところで右にトラバースする踏み跡を辿る。獣道にしてはフンがないので人が歩いた道だと思われる。少し歩くと、ガレ場に至る。ここで踏み跡が途絶える。水のチョロチョロ流れるガレ場を登り、傾斜が厳しくなったところで右手に再び踏み跡を見つける。

枝尾根に出たところで沢装備を解除。
自分は踵が擦れて痛いので、ついでに沢靴を脱いでトレランシューズに履き替える。
空模様はあまりすぐれず、時折パラリと雨が降ってはすぐに止む。殆ど降られたうちに入らないが、急いだ方が良さそう。

P9060514_s.JPG枝尾根を10mばかり登ると木を切り倒した広場に出る。
どうやらちゃんと仕事道に合流できた模様。時すでに14時20分。まぁ標高差もあるし、行きつ迷いつという感じがだからそんなもんか。

あとは丹念にトラバースルートを辿り、ジグザグの下り道を下る。かなり整備された道で、普通の登山道と遜色ない。こんな山深い場所にこれほど手の込んだ地図にない道があることに驚くばかり。
Uさんが膝の調子が悪いので、のんびり下る。

途中で道が2箇所分岐するけれど、最初は右、次は左を選んで下る。分岐の先がどこに続くのかとても興味深い。トポに記されたとおり日原川にかかる「立派な吊り橋」を渡り、16時20分に日原林道に出る。



P9060538_s.JPG←仕事道から林道に出たところで振り返ると、入口の看板に「立入禁止」と書かれている。(お約束のようなので貼っておこう)
あらら。。

日原林道を八丁橋方面に歩き、車に戻ったのが16時40分。荷物を片付けて、この日は奥多摩駅前のもえぎの湯が満員御礼だったので、沢臭いのを我慢して東村山にあるかたくりの湯まで遠征(一応通り道)。

家にたどり着いて沢道具を片付けたら、あとはこんこんと眠り続け、翌日のお昼に目が覚めました。びっくり。

*****
過去の記録を見ると、自分たちが高巻いた大滝や8m滝、5m滝を登っている記録がありました。
すごいな~。自分たちは下調べ不十分ということもありましたが、下調べをしていても安全第一で高巻いたのではないかと思います。どうなんだろ。

ちなみに、この巳ノ戸谷は、「沢登りルート図集100選」では、スバリ「初心者向け」「初心者同行以外はザイル不要」「登山靴よりわらじが良い」とされ、「1級」の沢に格付けされています(「関東周辺の沢」では2級)。
う~ん。。昔の人は勇猛果敢だったのか、この30年間で谷がよりいっそう峻険になったのか、定かではありません。「登山靴よりわらじ」かぁ。。

また、おそらく沢からの下降点は、自分たちが沢を上がったところよりもう少し上流だったのではないかと思います。ただ、残置テープ類や踏み跡などが確かに存在していたので、前人未踏のルートではなさそうです。

家に帰った後、しみじみと2万5千分の1の地図を見ても、どこにも仕事道の跡はありません。
おそらくこのルートだろうな、と思われる斜面と稜線があるだけです。
また、今回はかなりのんびり下山しましたが、速度を上げればもっと短時間で下山できると思います。

あまりネタを明かすとこの沢の面白さが半減してしまいそうですが、地図にない道(でもとてもしっかりした道)を歩くことはかなり面白い経験でした。
いずれまた機会があったら、再訪してみたい沢ですが、忌山の悪場の6mを自力でクリアできる自信がないなぁ。。

あと、ところどころ「なにかがいる」気配が濃厚で、幻聴がひどかったのですが、おそらくは単に睡眠不足のせいでしょう。あまり悪い感じではありませんでしたし。うふふ^^;
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自己紹介:
Norlys(ノールリース)。極光、いわゆるオーロラ。雪の降る季節と雪の降る景色がすき。趣味は編み物。週末は山を散策。

色々と気になることをメモしたり、グダグダ書いてみたり。山の記録はなるべく参考になりそうなことを…と思いながらも思いついたままに垂れ流し。。
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