ハセツネこと「第15回 山岳耐久レース 長谷川恒夫カップ」が終了しました。
24時間の制限時間内に、71.5Kmの山道を走る、というレースです。
コース全体の概念図はこちら。
結果は、18時間43分24秒でなんとかゴールイン。
完走というよりも、わたしの場合は無事「完歩」というのが正しいのですが。
山の会からは自分を含めて4名が参加し、みんな無事にゴール。
みんな、ほんとうにすごい。パチパチ。
山を登るようになってからネットで情報を拾ううちに、ハセツネなるレースがこの世にあることを知り、かねがね「いつかは参加してみたい。。」と思っていました。
興味があった一番の理由は、夜に山を歩いてみたいけれど、ヒトリではちょっと怖い。。ハセツネのような大きな大会なら人がたくさんいるから怖くないかも~と。なんて、ビビリな動機^^;
あと、学生時代はマラソン大会や長距離走が大の苦手だった自分ですが歩くことは大好きなので、ハセツネなら時速3Kmペースをキープすればなんとかゴールできる、つまり歩いても完走(言葉が矛盾しているような)できるかな、と。
大会3ヶ月くらい前からジョギングやコースを試走して体をつくっておいたほうがいいと言われつつも、やはり走ることは苦手でほとんど練習らしき練習はしていませんでした。
まぁ参加することに意義があるということで…と半ば自嘲気味になりつつ、当日の朝大会会場に着くと、周囲にいる人がみなトップアスリートに見えて(まぁそうなんですが)、びびりまくり。
過去の大会に参加した実績のあるY君やH師匠、ハセツネは初参加だけどマラソン大会の出場経験のあるSさんのアドバイスやサポートを受けてぼちぼちと支度を進めるも(みなさま、本当にありがとうございました)、会場の雰囲気に呑み込まれそう。あまりに圧倒されてもう鼻血がでそう(でなかったけど)。
午後1時に、本部会場のある、あきるの市立五日市中学校校庭の校門からスタート。
前日の晩に雨が降ったものの、大会当日は見事な秋晴れ。暑くもなく寒くもなく、まさにトレラン日和。
自分はのっけから歩く気まんまんだったのですが、周りの人々が走り始めるのにつられて足を運んでいました( ̄ー ̄;)
出だしのロードから今熊神社の山道に入ると一気に団子状態。
楽器を奏でる人も歌う人もいないけれど、なんだか昔テレビで見た南米の巡礼登山みたいだな。。。と思うと、なんだか楽しくなったり。
途中でSさんが走る方が(ペースが)いいみたい、ということでさっと前に出て行くのを見送りながら、自分も行列の中で歩みを進めました。Sさん、さすが。早いなー。
H師匠いわく、醍醐丸あたりで団子状態が解消するとのことでしたが、今年は参加者数が多かったせいか、団子状態はなかなか解消せず。無理して追い越しをかけるとかえってヘバりそうだったので、団子の一員になって黙々と歩き続けました。
アップダウンがありながらも生藤山までは登りの方が多いので、割合のんびりしたペースで歩き続けたのは良かったのかも。
徐々に周囲が暗くなり始め、連行峰でヘッデンを装着。これが初めての休憩。「長く休憩をとらない方がいい」というY君のアドバイスが脳裏をよぎり、ヘッデンを取り出しただけで再び歩き始めました。
生藤山は1年ちょっと前に山の会のお試し山行で軍刀利(グンダリ)沢を遡行したときに踏んだ山頂で、懐かしいなぁ~と思いながら通過。
ここまできたら、第1チェックポイントの浅間峠(22.66Km地点)まで休憩ナシで午後6時半には到着できるかな。。。と、歩き続け、第1チェックポイントに到着したのはスタートから5時間34分53秒後(ICチップで計測しているのでリアルタイムで速報がでます。便利ですね)。
このペースを維持できれば24時間以内にゴールできるかも。。でもまだコース全体の3割かぁ遠いなぁ。。と逡巡しつつ、チェックポイント脇の休憩所で10分ほど休憩。
第1チェックポイントまではトレッキングポールの使用が禁止されていますが、いよいよコイツの出番だとポールを伸ばして再始動。
浅間峠から三頭山に至る笹尾根はとても気持ちの良いルートだそうで、いつかは歩いてみたいなぁと思っていたところ。
この機会に歩けてうれしいなぁ。。でもまわりが真っ暗でなにも見えないやー( ̄▽ ̄;) と、ココロの中でヒトリぼけ&突っ込み。
微妙にまったりペースなので、もう少し速度を上げたいなぁと思いつつも、集団の先頭の方がちっとも道を空けてくれません。後ろを見ればヘッデンの灯りの列がずらり。先頭のストッパーの人、マナーが悪いなぁ…と内心文句をたれるも、第1チェックポイントを過ぎたあたりから左膝が痛み始めていたので、一気に抜け駆けする気力はなく。
結局、笛吹峠で集団が一瞬バラけた隙を突いてようやくストッパーを追い越しました。
しばらくは行けども行けども前を歩く人がいません。ストッパー、恐るべしw
さらに、木々の隙間から星や月が見え隠れするのに、周囲はガスガス。50m置きに設置されているというルート案内を見るたびにホっとしながら夜道を走り…もとい、歩きました。
西原峠に到着したところでしばし休憩。だいぶ冷え込んできたので上着と手袋を装着。
それまでも足を痛めたのか小休止…という人が道端にちらほらいましたが、この辺りの道端ではどうやら本気寝している人が増えてきました。
ちゃんと起きれるんだろうか。。。と自分まで不安に。
しばらく行くと、今度は別のストッパーに捕まりました。この先三頭山まで急登が続くのでペースが落ちるのは仕方ないし、山道が狭いので道を譲るのが難しいのはわかりますが。。
ストッパーさんのペースで歩いていると時折ふら~っと眠気が襲ってきて、これはマズイなぁと登り斜面でひとりずつ抜いていくようにしました。山女の意地の見せ所!と、下りで一気抜きをしたかったのですが、左膝がどうにも調子悪く。。残念。
なんとか三頭山避難小屋に到着した時点で残りの水がわずかになってしまい、「指定水場以外で補給を受けたらアウト」という大会規則を噛み締めながらも、運営の方のテント脇に並んだポットやペットボトルを心底羨ましく眺めたり。
まぁ気温もだいぶ下がってきたし(手元の時計で6.6度でした。体温も計測されているので、実際の気温はもっと低いはず)、三頭山を過ぎれば下りメインだから第2チェックポイント(42.09Km)まで頑張ろう。。
スタートから約38Km地点、水の補給を受けられる第2チェックポイントまであと4Kmというところで、ついに水がなくなりました。
まぁあと4Km、あと1時間なら水ナシでも大丈夫、でも今一番なにがほしい? と聞かれたら、「水、とにかく水」と答えるだろうなぁ。。と自問自答。
スタートから11時間4分2秒、約24時過ぎにようやく第2チェックポイントに到着。やったー、水だ、水が呑める~と、喜び勇んで水の補給を受け、トイレに行き、しばらく休憩。食欲はあまりないけど、とにかくなにかお腹に入れておこう。。と思ったら、あれ、行動食袋がない。。
おかしいなぁ。。と水の補給所に戻って尋ねると、ありました。ほ。
喜び勇んでプラティパスを引っ張り出す際に転げ落ちたようです。危なかった。。
さて、もうちょっと休憩しよう。。。と、地べたに座り込んだとき「あれ?」という声が。おおーH師匠ではありませんか。なんて奇遇。
動くと暑いのに、停滞するとたちまち身体が冷えるので、ぼちぼちと再出発。
第2チェックポイントを過ぎると人もまばらになり、ようやくのびのびと歩けるようになりました。
山道の幅も広くなだらかな登りが続き、いつの間にかガスも晴れて暗闇の中に山のシルエットが浮かび、山頂に誘うようにヘッデンの灯りがちらちらと揺れて動き、見晴らしのよい場所からはオレンジ色の絨毯のように街の明かりが見えました。
さて。御前山の手前の急登を登っているときに、ふっとお腹の中で真っ黒い塊が暗い穴の中に落ちていくイメージが浮かびました。親指と人差し指を輪にしたくらいの大きさの暗い塊が、真っ暗の底なしの穴にすーっと落ちていくのを俯瞰している。。という感じ。
大会の1週間くらい前から、胃の上部、右肋骨の直下辺りが猛烈に痛くなり、しばらくぼりぼりと胃薬を飲み続けていました。食欲はあるし、その他に顕著な症状はないけれど、とにかく胃が痛い。
なので、このイメージが頭に浮かんだ瞬間、「あ、できものが落ちた」と妙な確信を得ました。
あまり神経質になっていた自覚はありませんが、どこかで気に病んでいたのかな。実際、大会が終わってからは胃の痛みは収束気味。
過去のさまざまな場面でもこれほど胃が痛んだことはないので、気持ちよりも身体の方がナイーブになっていたなんて…と思うと、我ながら不思議。
登りはともかく下りになると左膝の痛みがいよいよ増してきたので、御前山の山頂直下の休憩所の端っこでテーピング。ちょっとだけ楽になったようなならないような。膝頭のあたりを押すと、ちょっとぷよぷよしていて、うーん水が溜まったかもなぁとガッカリ。
歩けないわけじゃないし、毒食わば皿まで。
行けるところまでいってみようと歩き続けました。
それでもまぁ、大ダワまでの下りの連続の辛いこと、辛いこと。
よく踏まれている登山道だけにトゥルントゥルンです。雨が降らなくてほんとうに良かった。。
さすがに12時間近くも行動し続けているので、ところどころ睡魔の波に襲われて、道端やベンチの上で5分ほど睡眠をとりつつ、じわじわと前進。
鋸山から大岳山、大岳山からゴールまでの道のりはかつて歩いたことがあり、未知の山道も楽しいのですが、既知の山道を真夜中に歩くことが新鮮で楽しかったです。
また大岳山の山頂直下には簡単な岩場があり、良い気分転換になりました。
午前5時過ぎに大岳山山頂に到着。そうそうここは見晴らしの良いところ~と、束の間眼下に広がる夜景を堪能。
さぁ次は御岳~と歩き続けると、御岳に近づくあたりで空が白んできました。
地平線間際に一条の雲、それ以外は雲ひとつない快晴の空。
地平線上にタンジェリンレッド、オレンジ、レモンイエロー、エメラルドグリーン、スカイブルーの色彩が薄い帯状に重なり、そこから天上までは群青と濃紺のグラデーション。
うは、朝焼けでグリーンフラッシュ! と大感動。眠気もすっかり吹き飛びました。
←もうちょっと明るくなってから携帯で撮ったピンボケ写真。
とにかくキレイでした。
夜間登山、本気でハマりそうです。
というか、ハマってますな。すでに。
周囲が徐々に明るくなって、ヘッデンのお世話にならずに歩けるようになり、とにかく気持ちの良い朝。
こうなったらご来光は、その名にし負う日の出山で…! と、頑張って歩き続けました。
日の出山の山頂手前で運営の方から「最後の登りだよ、ガンバレ」という声をかけていただき、よーしそれならパパがんばっちゃうぞ~、と再奮起。て、パパじゃないけどw
日の出山山頂の見晴らし台で、しばしぼーっと昇る太陽を眺めていました。
(走れよ、というツッコミはナシでよろしくです)
10月21日の日の出は5:52でしたが、地平線すれすれに雲の層があり、雲の層から太陽が顔を出したのは6時ちょっと前。間に合った~。
さぁ、後はアップダウンも緩いし、一気に下るのみ。相変わらず左膝は痛みますが、ひたすらゴールを目指して頑張ってみました。
日の出山からゴールまでは、トレイルランニングらしく、下りと平地でちゃんと走りました。
金比羅尾根の登山道入り口を抜けると「あと1.5Km」という声。
普段なら1.5Kmでさえ走るのは厭だなぁ…と思うのに、すでに70Kmの道のりを辿ってきた自分なので感覚がかなり麻痺しているのか「うは、もうちょっと~」とのろいながらも本気で走りました。
そんなこんなで午前8時ちょっと前にゴール。
ゴール直前で自分が落とした手ぬぐいを拾ってくださった方、すいません。ありがとうございました。
その後はしばらく待機場所の体育館でゴロ寝。もうとにかく眠いのなんの。
先にゴールしていたY君やSさんはすでにひと眠りし終えてスガスガしい様子。すごいなぁ。
とにかく着替えだけでも済まさねば。。とヨロヨロとトイレに行き、顔を洗って、ふー。少しだけすっきり。
少しの間寝て、起きると全身筋肉痛。もうボロボロ。
再度眠りこけて起きたら、今度は少しだけ復活していました。が、歩き方は完全にロボット。
会場近くのメシどころで簡単な打ち上げをして、疲労と眠気に襲われつつなんとか家までたどり着き、念願のお風呂に入ってあとはコンコンと眠り続けました。
ハセツネの大会運営の手際の良さには定評がありますが、今回自分が参加してそのことを実感しました。
要所要所に運営の方が控えていて声援を贈ってくださったり、ルートミスをしないように全コースに渡ってチェックがなされていたり。。
事前の準備から大会当日までに割く時間を考えると、参加者以上にたいへんだったのではないでしょか。
とにかく走り(歩き)続けることができたのは、運営の方のご尽力が大きかったなぁ、と思います。
自分の力だけではなく、運営の方々、一緒に参加してくださった方々、応援メールをくださった方々、みなさんに「走らせていただいた」、という気持ちが大きいです。
ほんとうにありがとうございました。
また来年も参加しようとはあまり思いませんが(今のところ。。)、今回ハセツネに参加してほんとうに良かったなぁと思います。
無事に完走(いや完歩)することができたことで、なんというかすごい達成感。
大げさにいえば、Before ハセツネとAfter ハセツネで、なにかが自分の中で大きく変わったような。。
いや、実はあまり変わってないんだろうと思いますが、なんとなく。
最近マラソンに嵌る人が多いそうですが、この達成感が人気の理由なのかな。
(あ、あとお肌には良いかも。なんかそれはもう色々と出まくった気がします。デトックス?)
ただ、普段あまりハードな運動をしない自分にとっては身体の負担が大きいので、個人的にはもうちょっと短いルートで楽しくオーバーナイトトレッキング♪とかが良いかも。。
最後に。
今回のレースではたいへん不幸なできごとがありました。謹んで故人の方のご冥福をお祈り申し上げます。楽しいはずのレースでご不幸が起きたことはほんとうに残念です。
おまけ。左膝の痛みですが、サポートタイツを履いてストレッチしたらめきめき回復中。階段の上り下りの痛みがなくなりました。良かった。。
色々と気になることをメモしたり、グダグダ書いてみたり。山の記録はなるべく参考になりそうなことを…と思いながらも思いついたままに垂れ流し。。
Powered by "Samurai Factory"