忍者ブログ
Norlys(ノールリース)-日々のあれこれ
Posted by - 2024.05.17,Fri
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

Posted by norlys - 2007.07.02,Mon
「『キタダケソウ』を見たいので、北岳に行きませんか」というお誘いをイチもニもなく受けて、週末に北岳を登ってきました。
6月30日はちょうど林道南アルプス線の開通日。

林道南アルプス線は、白根三山と鳳凰三山の谷間を縫って山梨県南アルプス芦安と北沢峠を結ぶ総延長約34Kmにおよぶ林道。
1年のうち6月末から11月始めのわずか5ヶ月間だけ一般車両を除く市営バス・タクシー(と許可車両、緊急車両)のみが通行でき、それ以外の期間は冬季閉鎖となってしまう。以前は一般車両の通行も可能だったそうで、その幸せな時期を残念ながらわたしは知らない。
この林道の利用者のほとんどは登山客とおそらくは管理維持の業者のみ。維持するだけでも相当の費用になるだろうに、一方で受益者がとても限られていて、自然を護ったり自然に分け入ることはもはやすごい贅沢なのだと思う(登山客のためというより治水の重要性のためにこの道が存在するのだと信じることにします)。

この地域は地形が急峻で岩質が脆いため、通行期間中でもたびたび落石によってたちまち閉鎖されてしまうそうな。不幸なことに、開通初日の朝も落石により夜叉神峠のゲートでバスがストップ。不幸中の幸いは、当初復旧まで3時間と目されていた作業が短時間で終わり、1時間強のタイムロスで済んだこと。6時10分には終点の広川原に到着して早々に出発する予定だったけれど、なんだかんだで8時に歩き出し。

週の頭から週末の天気は優れないという予報がでていたけれど、岩じゃなくてごく普通の山歩きなのでよほどの暴風雨でなければ当然決行、という予定でした。出発直前になって晴れマークに変わり、夜叉神峠のあたりでは見事な快晴だったものの、近づいてみれば山頂付近はガスの中。

今回の山行の間、天気はずっとこの調子で、下界ではまずまずの天気の中、雲の中をうろうろしていた自分たちでした。

kitadake_sou.jpg二俣から右俣→肩の小屋→山頂→北岳山荘というルートは去年の夏の登りで歩いたので、今回は八本歯のコルから山頂をパスして北岳山荘を目指すことに。

先週半ばに、今年の富士山では5月に大雪が降った一方で6月の降雨量が少ないため、山頂付近にかなり雪が残っている、というニュースを目にしたので、北岳にも多少雪は残っているのだろうと、よくよく下調べもせずにそれでも一応、軽アイゼンとストックだけを持っていきました。

それも、同行のYさんが持ち物リストを挙げてくれなかったら軽アイゼンを入れ忘れていたほど、すっかり平地と山の気候の違いを失念していました。ダメ過ぎです、自分。



二俣の手前に着き、そこから山頂直前まで圧倒的な質量で大雪渓が続いているのを見て、これは軽アイゼンではなくて12本歯を持ってくるべきだったかもと思い。実際に、12本歯のアイゼンとピッケルを装備している人がたくさんいました。

今年の北岳例年よりも残雪が多いとのこと。GWに2000m級の春山を登ったときは、山頂直下以外はすっかり夏道でしたが、さすが3000m級。

さらに反省すべきことに今回は荷物が大きくなってしまい(山小屋泊まりなのに。。)、急斜面を登る体力が続かず。
浮石がゴロゴロ転がっている雪渓のど真ん中で、あの石を目安に休憩~とか、今更ですが危険すぎ。ほんとうに幸いなことに、左俣を登っている間に目撃した落石は、握りこぶし程度の小さな石が上の方で転がって自分たちのところまで届く前に止まった1回のみ。もうちょっと雪面がキレイだったらスキーで滑降したら気持ちいいだろうなぁ。。。とかボンヤリ考えている場合ではなかったのです。。

途中で、北岳バットレスの第4尾根ルートに入るD沢方面ってこの辺だろか~と朦朧とした頭で考えるも、偵察する気力が微塵も残っておらずスルー。残念。

へろへろになって八本歯のコルへの分岐に到着。ここからは梯子の連続だけど垂直に高度を稼ぐので、ぐんぐん山頂が近くなるのを実感でき、精神的にちょっとだけ楽に。
雲の下層部にたどり着いてしまったようで、ガスが濃くなったり薄くなったり、時折小雨が降ったりという天気。気温は高くもなく低くもなくそこそこ快適。湿度が高いこともあって水が全然減らないけれど、荷物を軽くしたい一心でむやみに給水。なにしろポカリの粉末を混ぜてあるので、むやみに捨てられず。。

仰ぎ見れば山頂は依然としてガスの中。それでもガスが流れて、ときどきほんの一瞬だけ風景がさあっと開けるときがあって、その一瞬を待って立ち止まることが今回の山行では多かったように思う。

去年の夏の終わりに北岳を登ったときは快晴に恵まれて、雄大な山頂や息を呑むほどの星空や朝焼けの雲海からのびる富士山のシルエットを見ることができました。雨でもいいやと嘯きながらも、どこかで一瞬の奇跡を願ってしまうものなんですね。。

どうにかこうにか八本歯のコルに到着。あぁようやくここまで来た~と思いながら、ボーコン沢の頭方面を眺める。北岳の冬季登山のメインルートとなる池山吊尾根ルートに続く道。いつかは歩いてみたいと思うのだけれど、閑散としたロングルートなのでなかなか機会がありません。いかんせんボーコンの語源は「亡魂」という説もあるそうで。。。うう、おそろしす。

八本歯のコルにやたらとザックがデポしてあるので、はてこの人たちは「どこから来て、どこに立ち寄って、どこに行くために」デポしているものだろうと話し合いながら、トラバースルートに分け入ると、そこかしこにキタダケソウが満開。

ミサイルでも発射できそうなレンズを装着した一眼レフのカメラを構えた人たちもそこかしこに。キタダケソウがどんなものかも知らずにノコノコやって来たくせに、おぉなんとこここそはキタダケソウの聖地ではないですかと、すっかり舞い上がる現金な自分。

キタダケソウは、南アルプス北岳山頂付近にのみに育成する希少な高山植物。キンポウゲ科で、学名はCallianthemum hondoense Nakai et Hara。開花時期は6月中旬から7月上旬。
環境省のレッドリストで絶滅危惧IB類に指定されているそうな。

キタダケソウは実に清楚で可憐な容姿。華美とか優艶という言葉には程遠く、宮崎アニメのヒロインみたいな印象(まさにクラリス。なんだそりゃ)。

3000m近い高山の片隅にひっそりと群生しているというだけでありがたさが当社比150%増しになるけれど、この花を愛でるために、しかも1年に1度のめぐり合いが保証されているわけでもなく、これだけたくさんの人が訪れるのかと思うと、なんかちょっとすごい。

また、キタダケソウを間近に眺めようと登山道を外れて立ち入る人に対して、注意を促す場面に何度か出会いました。いわく「キタダケソウを眺めるために他の植物を踏みにじってはいけない」と。なるほど。。。と感心すると同時に、世の中にこれほど花を愛でる男性が多くいるとは。。。と(妙なトコロで)感銘を受けたり。

植物の中でも特に花というのは、自分にとってはいささか利己的でエロティックな存在でしたが(なにしろ多くにおいて受動的で他の生物を誘惑しては繁殖するし、それだけでは飽き足らずにどんどん環境に応じて進化してさらに繁殖したりするくせに、自力では移動できないから人に「まもってあげたい」という気持ちにさせちゃったりするし)、キタダケソウはあまりにけなげで可憐でした。

そして、遥かかなた3000mの頂の直下にひっそりと咲いている花を偲ぶ気持ちそのものも純粋でキレイだなぁと思うのでした。
PR
Comments
Post a Comment
Name :
Title :
E-mail :
URL :
Comments :
Pass :   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
TrackBack URL
TrackBacks
Calendar
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
最新記事
(07/27)
(07/13)
(07/10)
(03/18)
(03/17)
(03/16)
(03/16)
(03/16)
(03/12)
(03/10)
Profile
HN:
norlys
性別:
非公開
自己紹介:
Norlys(ノールリース)。極光、いわゆるオーロラ。雪の降る季節と雪の降る景色がすき。趣味は編み物。週末は山を散策。

色々と気になることをメモしたり、グダグダ書いてみたり。山の記録はなるべく参考になりそうなことを…と思いながらも思いついたままに垂れ流し。。
つぶやき。
Search
Meteo
Look down on Earth
↑陸域観測技術衛星ALOS(だいち) 「P」ボタンを押すと衛星画像になりますyo
Ads
Comments
[09/23 ヨシ]
[02/06 kacky]
[09/22 kacky]
[07/31 vini]
[07/06 FilsNoel ]
Trackbacks
バーコード
Tool
Log
Template by mavericyard*
Powered by "Samurai Factory"
忍者ブログ [PR]