高村薫の「神の火」(文庫本)を読んだのは、かれこれ10年くらい前のことでした。
本屋さんで平積みになっていたのをたまたま手に取り、ぱらっとめくったらページに文字がびっしり埋まっているうえに上下巻で、ややこれは良い時間潰しだなと思って購入しました。自分にとって初の高村作品。
「神から掠めとった炎の砦・原発に男たちは徒手空拳で襲いかかった…。荒波に洗われる日本海の、とある断崖にそれはあった。白いコンクリートの巨大な塔で燃えさかるプロメテウスの火。鉄壁の防護システムで制御された火焔を消し去ることが、彼ら二人の目的だった…。」(Amazonからコピペ)
原子力発電所に浸入して炉心を止める、ただそれだけのために、すべてを捨てて計画に没頭するふたりの男性。原発がターゲットとはいえ、決して高尚な理念や反原発のプロパガンダを標榜するわけではありません。
ただ胸の内の空虚を埋めるための衝動的な思い付きを行動に、そして目的にすり替え、その結果はすべてを虚無に還して虚空という安寧の境地にたどり着く。。。
まさか原子炉をモチーフに、愛憎の交錯する子宮回帰の願望の構図が描かれるなんて想像もしてませんでした。衝撃的でした。
詳細なストーリーはもうあまり覚えていませんが、奇妙なやるせなさと爽快な解放感がない交ぜになった不思議な読後感だけは今でも覚えています。
ふと、先日の中越地震で柏崎刈羽原発でトラブルが発生しているとのニュースを見て、この「神の火」の物語を思い出しました。
「神の火」の舞台として描かれた音無原子力発電所のモデルは福井県にある高浜原子力発電所だそうですが。
柏崎刈羽原発の事故? 状況については、地震発生後からちまちまとヲチしているのですが、今の時点ではなんともいえません。自分の知識不足を思い知るばかりで。。
7号機からヨウ素131などの放射性物質が検出された(地上の濃度は法令限度以下)、というニュースもありましたが、このニュースの続報はなく。
ほんとうのところはどうなんでしょう。あと、ほんとうのことっていったいなんなんでしょう。
「柏崎刈羽原発トラブル」に関してGoogleでニュース検索すると、朝日と時事通信、スポニチそれからTBSといったメディアが積極的に報道し、読売や産経がだんまり気味である点が不気味だな、とは思います。
メディアとしての立ち位置の違いでしょうか。スポンサー(電力会社とか経団連)の影響でしょうか。
ところで。
原子力発電環境整備機構が2002年12月に作成した「処分場の概要」という冊子を見ると、「少なくとも1000年は大丈夫。いちおう10万年後までを視野に入れています」とうたっています。
処分場っていえば、そういえば今年、高知県の東洋町で問題になりましたっけ。コレがアレですかね。
(どうでもいいけど、原環機構ってDjVuを導入しているんですね。。。ローカライズするときは大変そうだわ)
この冊子にはとても詳しい説明があり、実にしっかりとしたプロジェクトで説得力があります。うん、これならウチの隣に処分場ができてもいいんじゃないと思うくらい。でもね。
「すべての地上施設を撤去し、その後には処分場の存在を示すモニュメントや公園などを設けることも可能です。」(on page 22)
オプションですか、そうですか。
スウェーデン(昨年ちょっとしたメルトダウン寸前の原発電事故が起きたそうな)のように、「遠い未来に文化が分断され、現在の言葉が通じなくなっても、その土地の地下に放射性廃棄物が埋まっているからほじくりかえしちゃダメ、ということを後世に伝える方法」まで真剣に考えてほしいなぁと思いますた。
いや、それ以前に「なお、わが国の処分場の長期安全性を判断するための基準値については、将来設定されることになっています。」(on page 43) という一文が。。。ええぇ。処分場候補地募集中なんだから決めようぜ、今すぐ(諸外国の基準値を代わりに例示していますが)。
無闇やたらに原発反対を唱えるつもりはありません。かといって原子力がクリーンエネルギーであると諸手を挙げての賛同はしがたいです。難しいですね。。
なにしろ、1000年とか10万年とか、これだけのロングタームで最終廃棄処理を考えなくてはならない時点で、やはり原子力は「神の火」だなぁ。。。と思うのです。
イナバ物置なら100人乗っても本当に大丈夫かどうか、割とすぐに検証できそうなのですが。。
「諸外国の高レベル放射性廃棄物処分等の状況」 ((財)原子力環境整備促進・資金管理センター 編集、経済産業省 資源エネルギー庁 監修) という冊子も見つけました。全210ページにおよぶ大作なので、時間があるときに読んでみたいと思います。
色々と気になることをメモしたり、グダグダ書いてみたり。山の記録はなるべく参考になりそうなことを…と思いながらも思いついたままに垂れ流し。。
Powered by "Samurai Factory"