某巨大掲示板の山板を徘徊中に遭遇した新聞記事。(それにしてもクライミング関連スレのキティっぷりは異常。。)
山梨市西部にある大石神社内のボルダリングが問題視され、JFAと地元クライマーが地域の方々との交渉を試みるものの理解得られず登攀禁止に。このことを発端として、最近のクライミングブーム(ですよね?)に伴うアクセス問題等の説明。
3月28日から31日の4日間にわたり全4回、毎日新聞山梨地方版に掲載された記事、だそうです。
記者の方ご自身もまたクライミングをされているのか(というか、絶対やってる)、クライマー側にかなり好意的な内容。
新聞社のサイトは公開期間が短いので、全文はまるっとRead moreに(すみません)。
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(1)クライミング人気から見えるもの:/1 アクセス問題
◇神体の岩、人気スポットに 地元住民との摩擦で自粛
-しかし、近くの農家の男性(80)は「県外ナンバーの車が何台も来た。みんなで守ってきたご神体に、由来を知らない人が登ったりコケをはがしたりするのは許せない」と話す。
- しかし一方で、かつてアクセス問題が起きながら、急激な競技人口増加をチャンスとして、クライミングを地域振興につなげようとする取り組みも県外では始まっている。県境に近い東京都奥多摩町の岩場だ。
(2)クライミング人気から見えるもの:/2 地域振興へ新エリア
◇御前岩立ち入り禁止解けず 地元に配慮、理解得られたが
- 「冬の収入減をカバーでき、利益も出ている。天然の岩が観光資源になるという新しいモデルです」と(TOKYOトラウトカントリーの)堀江さんは言う。近くに住む男性(77)も「今となってはクライマーへの反発はないよ。若い人が来てにぎやかだね」と話す。
- ただ、御前岩の立ち入り禁止が解ける見通しは立っていない。22年前の記憶は住民の一部に根強く残っている。「一度失った信頼を回復するのはいかに困難かを思い知らされました」とJFAの室井さんは話す。
(3)クライミング人気から見えるもの:/3 冒険心少ない国民性
◇無意味に見えても一生懸命 「危険なスポーツ」理解不十分
- 山野井さんは「アクセス問題」(クライマーと地元住民の摩擦)の原因の大部分は、急激なクライマー増加とクライマー側のマナーにあると指摘する。ただ、「危険なスポーツ」に対する理解が不十分なことも背景にあると考えている。「楽しくてクライミングをやっているという事は分かってほしいですね」
- そして、こう続ける。「少しは迷惑をかけるかもしれないが、人はお互い迷惑をかけながら、かかわり合っている存在。そのかかわりをただマイナスととらえないでほしい」
- 妙子さんはこう言って笑った。「無意味に見えることでも一生懸命やっている。それを理解してもらいたいけれど、本当に難しい。母でさえ分かってくれなくて、いまだに『ちゃんと就職しなさい』と言われます」
(4)クライミング人気から見えるもの:/4止 遭難事故
◇過失に厳しい日本社会 「権利」理解してもらう必要
- ただ、法律の世界にも「日本社会の価値観」は反映されていると溝手さん(広島在住の弁護士。自身もクライマー)は言う。「世界の中でも日本は過失に厳しい国ですね。例えば米国には過失犯を処罰する法律のない州もある。しかし、日本では事故が起きると追及の矛先が当事者に集中する。寛容さが少ないとも言えます」
- 一方、クライマーと地元住民の摩擦である「アクセス問題」については、別の観点も考えられるという。
米国には、自然を国民共通の財産とする「公共信託」という考え方がある。北欧や英国では、国民が自然を利用する権利(万民利用権)が認められ、私有地でも所有者は一定の制限を受ける。
- 同協会理事の室井登喜男さん(36)=韮崎市=は「『危険なことはしない』のではなく、自身の選択のリスクを認識して取り組み、その結果は受け入れるという原則は、社会人なら誰もが持っていなくてはならないと思います」と話す。
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この特集記事、自分にとっては身近な内容ですが、クライミングにまったく興味のない人にとってどう映るのか、その点がちょっと気になります。
「ふーん、でっていう」と華麗にスルー? かもしれませんねぃ。。良くも悪くも。
それにしても。第3回目の山野井夫妻へのインタビューの中で、妙子さんのコメントがめっちゃツボ。
「無意味に見えることでも一生懸命やっている。それを理解してもらいたいけれど、本当に難しい。母でさえ分かってくれなくて、いまだに『ちゃんと就職しなさい』と言われます」
いまだにかよ! と苦笑すると同時に、古き良き日本のお母さん的な発想にじんわりと温かいものを感じました。
そういう世代ごとの共通意識や各個人のメンタリティは性急には変えようがないので、ゆっくりと少しずつ歩み寄れればいいなぁ、と。難しいけど。
また、日本の場合は、里が山に近いこともあってか巨岩が御神体であるケースがとても多いけど、そういう歴史の積み重ねを無碍にすることなく、お互いに歩み寄れればいいかなぁ。。と。難しいけど。
そういえば、アメリカのCave Rockも先住民族の聖地を汚したという理由で現在は登攀禁止でしたっけ。Dan Osmanの開拓した歴史的なルートがあるところ。
アミニズムではなく一神教系で、山は悪魔の住む恐ろしいところじゃあ~というメンタリティのお国とか、そもそも水も植物もなくて人が住めない過酷な環境に岩山があるのだったら話は早そうですけどね。。アプローチが大変そうだけども。。
http://mainichi.jp/area/yamanashi/news/20100328ddlk19050005000c.html
http://mainichi.jp/area/yamanashi/news/20100329ddlk19050005000c.html
http://mainichi.jp/area/yamanashi/news/20100330ddlk19050055000c.html
http://mainichi.jp/area/yamanashi/news/20100331ddlk19050091000c.html
■クライミング人気から見えるもの:/1 アクセス問題 /山梨
手足のみで壁や岩を登る「クライミング」は、国体への採用や室内ジムの普及で競技人口が急増し、人気の岩場には多くのクライマーが訪れる。一方でマナーや事故などのトラブルも起きており、県内も例外ではない。そこからは、新規参入スポーツのあり方だけでなく、「冒険」とどう向き合うのかという日本人全体が問われる課題も見えてくる。【中西啓介】
◇神体の岩、人気スポットに 地元住民との摩擦で自粛
山梨市西の住宅街にある大石神社。小高い山の上にある神社には、社名の由来になったとされる高さ12メートル、周囲68メートルの「神体石」をはじめ、多数の大きな花こう岩がそびえる。
「大石さん」と地元の人が呼ぶ、これら境内の岩にクライマーが登り始めたのは8年以上前のことだ。著名なクライマーが登ったことがきっかけで口コミで広まり、5年ほど前からボルダリング(命綱なしで約5メートル以下の岩を登る競技)の人気スポットになった。
しかし、近くの農家の男性(80)は「県外ナンバーの車が何台も来た。みんなで守ってきたご神体に、由来を知らない人が登ったりコケをはがしたりするのは許せない」と話す。
こうしたクライマーと地元住民の摩擦は「アクセス問題」と呼ばれている。
昨年11月下旬、大石神社でのアクセス問題は、地元クライマーを通じて日本フリークライミング協会(JFA)の知るところとなった。JFAからの連絡で、同市内でクライミングジムを経営する内藤聡さん(33)が地元区長に詳しい事情を聞いた。
内藤さんによると、手に付ける滑り止めのチョークが岩に残って、「落書きされた」と思われたことや、岩のコケがはがれたことが反発を招いた。JFAはルールの明確化やマナー向上の呼びかけで、事態打開を図ろうとしたが、住民の反発は根強く、結局は同神社でのクライミングの自粛を呼びかけることになった。
内藤さんは言う。「まだまだマイナーなスポーツで、受け入れられていないのが現状です。残念ですが、地道に理解を求めていくしかありません。山梨には国内有数の岩場があり、地域に根ざしたスポーツになれるはずなのですが……」
クライミングの先進国、米国ではアクセス問題対策専門の団体が活動しており、1万人を超す会員が支援する。JFAも05年度から問題解決のための予算を組んでいるが、たき火によるぼや騒ぎや、転落による死亡事故などをきっかけに、立ち入り禁止になる岩場は全国で後を絶たない。
しかし一方で、かつてアクセス問題が起きながら、急激な競技人口増加をチャンスとして、クライミングを地域振興につなげようとする取り組みも県外では始まっている。県境に近い東京都奥多摩町の岩場だ。=つづく
毎日新聞 2010年3月28日 地方版
■クライミング人気から見えるもの:/2 地域振興へ新エリア /山梨
◇御前岩立ち入り禁止解けず 地元に配慮、理解得られたが
東京都奥多摩町に昨年4月に開業した民間の釣り施設「TOKYOトラウトカントリー」。正面の切り立つ岩場は「御前(ごぜん)岩」と呼ばれ、22年も前にアクセス問題(地元住民との摩擦)からクライマーは立ち入り禁止となったままだ。
しかし、その近くの岩にボルダリング(命綱なしで約5メートル以下の岩を登る競技)用クライミングエリア「大沢ボルダー」があり、アクセス問題解決のモデルケースとして注目されている。
「釣り人だけでなく、クライマーや自転車愛好家が渓谷を満喫できるようなアウトドア拠点を作りたいと考えていました」と、渓流釣り関連の著書でも知られる総支配人の堀江渓愚さん(64)は話す。クライミング経験はないが、近年のクライミング人気を見て、客の少ない冬季の収入源に人工壁を設置しようと考えていたという。
だが、日本フリークライミング協会(JFA)のメンバーが堀江さんを訪ねたことが転機となった。釣り施設内の天然の岩をクライマーに提供したらどうかと提案したのだ。
御前岩は80年代後半、人気のクライミングエリアだったが、用便やたき火の不始末などが問題化、地元住民の反発を招き、88年2月に立ち入り禁止となった。
「地元との友好関係に最大限配慮した結果、多くの方から理解を得られました」とJFA理事の室井登喜男さん(36)は語る。
クライマーからは岩の利用料と駐車料を徴収するが、駐車料の2割(100円)は地元・大沢自治会の自治会費に寄付することにし、行政や観光協会の協力も取り付けた。堀江さんは「地域振興の手段の一つとしてこうした方法もあることを、地元の人にも知ってもらいたかった」と話す。
JFAの協力で清掃や「課題」と呼ばれる登攀(とうはん)ルートの地図なども作られ、新しいクライミングエリアは今年1月31日にオープンした。
町や観光協会も後援した当日の記念イベントには200人以上のクライマーが集まり、大沢自治会の会長があいさつに立った。以後、週末には1日60人のクライマーが押し寄せる日もあるなど、人気は高まっている。
「冬の収入減をカバーでき、利益も出ている。天然の岩が観光資源になるという新しいモデルです」と堀江さんは言う。近くに住む男性(77)も「今となってはクライマーへの反発はないよ。若い人が来てにぎやかだね」と話す。
ただ、御前岩の立ち入り禁止が解ける見通しは立っていない。22年前の記憶は住民の一部に根強く残っている。「一度失った信頼を回復するのはいかに困難かを思い知らされました」とJFAの室井さんは話す。
ただ、アクセス問題の背景には、マナーや事故以外の要素もあると指摘する人もいる。「クライミングは日本人のメンタリティー(心情)に受け入れられにくい部分があります」と話すのは、世界第2の高峰・K2に新ルートから単独初登頂するなどの世界的業績で知られるクライマー、山野井泰史さん(44)だ。【中西啓介】=つづく
毎日新聞 2010年3月29日 地方版
■クライミング人気から見えるもの:/3 冒険心少ない国民性 /山梨
◇無意味に見えても一生懸命 「危険なスポーツ」理解不十分
「日本人は欧米人に比べると危険を気にしすぎる傾向がありますね」--東京都奥多摩町の自宅で、クライマーの山野井泰史さん(44)は、そう語った。
山野井さんは酸素ボンベを使わずに頂上を目指す「アルパインスタイル」という方法で、ヒマラヤの高峰K2(標高8611メートル)などを新ルートから単独初登頂した。妻の妙子さん(54)も世界的なクライマーで、02年には夫婦でチベットのギャチュン・カン(同7952メートル)に挑んだ。その時に雪崩に襲われて自身は手足の指10本を凍傷で失い、妙子さんも重傷を負ったが、その後も2人は旺盛な意欲でクライミングを続けている。
そんな山野井さん自身も「日本人独特のメンタリティー(心情)がある」と言う。「山で風が吹くと『杉林が倒れるかも』なんてぴりぴりすることがある。知らない人を見かければ誰だろうかと気になる。冒険心の少ない国民性なのです。だから、何か事故が起きればかかわりたくないと思うのは自然な心情です」
山野井さんは「アクセス問題」(クライマーと地元住民の摩擦)の原因の大部分は、急激なクライマー増加とクライマー側のマナーにあると指摘する。ただ、「危険なスポーツ」に対する理解が不十分なことも背景にあると考えている。「楽しくてクライミングをやっているという事は分かってほしいですね」
国内では山岳遭難が起きると、当事者以外から「世間に迷惑をかけた」という非難が起きることも少なくない。
だが、友人の多くを山で失った山野井さんはこう考えている。「友人が死ぬと悲しいけど、めちゃくちゃは悲しまない。彼らの行動を理解しているから。その感覚を分かってほしいとは言えないけれど、例えば近くの岩場で事故があっても『クライマーがけがしたんだって。ばかだね』という程度に受け止めてもらえれば」
そして、こう続ける。「少しは迷惑をかけるかもしれないが、人はお互い迷惑をかけながら、かかわり合っている存在。そのかかわりをただマイナスととらえないでほしい」
妙子さんはこう言って笑った。「無意味に見えることでも一生懸命やっている。それを理解してもらいたいけれど、本当に難しい。母でさえ分かってくれなくて、いまだに『ちゃんと就職しなさい』と言われます」
さまざまな要素が絡み合って起きるアクセス問題に、クライマー側はどう対処するべきなのか。山野井さんはこう提案している。
「まずは近所の人たちにあいさつをする。そして、何が楽しいのか丁寧に説明して、少しずつ理解してもらうしかない。10年、20年かけて考えるべき課題かもしれません」
社会的な認知が進む欧米に比べ、日本では社会の側の受け皿が整わないままクライミング人口が増え続けているのが現状だ。その数は10万人に達するとも言われる。こうした状況を法的な観点から読み解く専門家もいる。【中西啓介】=つづく
毎日新聞 2010年3月30日 地方版
■クライミング人気から見えるもの:/4止 遭難事故 /山梨
◇過失に厳しい日本社会 「権利」理解してもらう必要
広島県三次市で開業する弁護士の溝手康史さん(54)は、93年にヒマラヤの高峰アクタシ(標高7016メートル)に初登頂するなど、クライマーとしても活躍しており、遭難事故と法律の関係を解説した「登山の法律学」(東京新聞出版局)も出版している。
山岳遭難の時に起きがちな「迷惑だ」「自己責任なのに助ける必要があるのか」といった非難について、溝手さんはこう解説する。「危険にひんした人を助けるのは国家の義務で、万国共通の理念。救助が出たから迷惑だという論理は法的には成り立たない。事故は好ましいことではないが、冷静に考えるべきです」
ただ、法律の世界にも「日本社会の価値観」は反映されていると溝手さんは言う。「世界の中でも日本は過失に厳しい国ですね。例えば米国には過失犯を処罰する法律のない州もある。しかし、日本では事故が起きると追及の矛先が当事者に集中する。寛容さが少ないとも言えます」
日本人の冒険に対する評価も、欧米とは違うと溝手さんは指摘する。「ヨットで太平洋の単独横断に成功した堀江謙一さんは出航時、国内では厳しく批判されたが、ゴールした米国では英雄視された。日本より冒険やチャレンジ精神への評価が高いのです」
一方、クライマーと地元住民の摩擦である「アクセス問題」については、別の観点も考えられるという。
米国には、自然を国民共通の財産とする「公共信託」という考え方がある。北欧や英国では、国民が自然を利用する権利(万民利用権)が認められ、私有地でも所有者は一定の制限を受ける。
日本国内では、私有地でのクライミングは所有者が禁止すれば続けるのは難しい。溝手さんは「競技の発展のためには、クライミングする『権利』を理解してもらう必要がある」と訴える。
ただ、こうした考え方はまだ浸透していない。
「競技としての社会的認知度が低いため、国民も寛容でない。何かのきっかけや時間が必要です。まずは、クライマー個人がマナーを守り、地元の人に理解してもらう必要があるでしょう」
人気の高まるクライミングだが、国内でも毎年死者が出ている。日本フリークライミング協会は、「最悪の結果」を受け入れられない人は競技をしないよう呼びかけている。
同協会理事の室井登喜男さん(36)=韮崎市=は「『危険なことはしない』のではなく、自身の選択のリスクを認識して取り組み、その結果は受け入れるという原則は、社会人なら誰もが持っていなくてはならないと思います」と話す。
クライミング人気の普及は、新たな価値観を生み出す可能性を秘めているのかもしれない。【中西啓介】=おわり
毎日新聞 2010年3月31日 地方版
色々と気になることをメモしたり、グダグダ書いてみたり。山の記録はなるべく参考になりそうなことを…と思いながらも思いついたままに垂れ流し。。
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