新島の旅、3日目。
2日目の夜も満点の星空。ただ夜半過ぎから西風が強まってきた。朝から風がぼうぼうと吹いている。
もし風がなければ、連絡船にしきに乗って式根島に足を伸ばしてみようかと考えていたけれど、どうやら欠航の様子。残念。
それでは、と、宿でママチャリをレンタルして、コーガ石の採石場を散策に。
新島に旅行をすることを決めた直後に、たまたまとある設計事務所さんからコーガ石にうちの会社の製品を使えないかというお問い合わせがあった。あら偶然。それで、とてもニワカだけどコーガ石のことを調べて興味が湧いた次第。なにしろSiO2おたくなので(あるのか、そんなジャンル)。シリカ、かわいいよ、シリカ。
そういえば。新島のガラスアートセンターというガラス工芸専門の美術館では、このコーガ石を原料にしてガラス作品を制作しているそう。コーガ石に含まれる微量の鉄分によって独特の美しいオリーブ色になるという(工業用ガラスの原料としては不要な不純物を逆手にとったそうな)。体験講座があるとのことで問い合わせたけど、残念ながら年末年始はお休みでした。
向山に続くなだらかな道をえっちらおっちら歩く。ママチャリだと坂道がしんどいのと、なにしろ風が強いので、自転車は押して歩く。道端に椿の花が咲いている。宿の人が言うには、今年の開花は早いらしい。
「ほらあれ、地球温暖化だから」「はぁ、そうですね。。」
九十九折の坂道を登っていくと、集落や海が一望。見下ろす海はシケシケ。初日よりも風が強いかも。それでも出発時にはこの日だけ雨の予報だったから、晴れているだけありがたいと思うことにしよう。
しばらく道路を登っていくと「さくら園」という桜の木の植林地点に到着。その先の少し下り坂を進んだところにかろうじて車が入れる幅の脇道があったので、とりあえず入ってみる。未舗装のコーガ石の砂の道。ときどき車輪が砂に嵌る。砂が白いので、なんだか雪道みたい。
細かいアップダウンとくねくねと曲がる砂道。ちょっと不安になりつつ、地図を見る限りどん詰まりの小道はないはずだからきっとどこかに通じているはずと先を進む。と、20分ほどしてぱっと視界が開け、石切り場に出た。
幾層かに掘り下げた跡が段々と窪地を成して、端には捨てられたザレの山。あちこちに転がっている白いコーガ石が松の木の緑や空の青さに映えてとてもきれい。なんだか日本庭園みたいにも思える。
メジャーな観光スポットである向山展望台がある方の採掘場ではなくて、たぶんもっと古い時代の採石場なのかな。採掘跡が割合こじんまりとしているので、手掘り時代の場所かも。よくわからないけど。
敷地の脇に小さな加工所の建物があった。現在でも稼動しているのかどうかは不明。いずれにしても晦日だから人がいないのは当然か。ところどころに規格外なのか、打ち捨てられた板石が積んである。
同居人が言うには「加工所の奥に人がいた」そうだけど、自分は気付かなかった。周囲にはほかに車や乗り物が見当たらなかったし、たぶん気のせいだろう。
ここの広場はどん詰まりのようなので、来た道を引き返す。帰りは下りなので楽チン。途中で、別の採掘場に入ってみる。赤い結晶を含んだ石が多い。サーモンピンクみたいな結晶粒や、赤レンガみたいな色の結晶粒が半透明なガラス状の部分とあいまってこれはこれでキレイ。
ただ、海からの風が強くて砂埃がひどいので、ちょっと入ったところで速やかに撤退。
新島におけるコーガ石の埋蔵量は推定約10億トンだといわれている。10億トンってどのくらい? 東京ドーム何杯分? 向山丸々ひとつ分? 本州みたいに広い陸地なら山ひとつなくなってもまぁさほど支障はなさそうだけど、島というスケールで考えると、なんだかタコが自分の足を食っているような気がする。ま、10億トンもあるならそんなに深く考える必要はなさそうな気もする。
一気に坂道を下り、本村の中を散策。パン屋さんでパンを買う。お店の人は式根島からの電話を受けていて、パンを予約したいのだけど次の連絡船が出るかどうかわからないみたいな話をしていた。
羽伏浦や間々下や向山にはほとんど(全く)人家はないのに、本村の集落にはぎゅぎゅっと家が立ち並んでいて、路地裏みたいな小路で結ばれている。全体的に白っぽい家並みで、観光地なのに看板とかセンスの悪い屋外広告とかネオンとかがなくて、なんだかイタリアの小さな漁村みたいにも思える。もっとどぎつい感じのザ観光地かと勝手に予想していただけにちょっと意外。夏の様子はもう少し違うのかもしれないけど。
宿に戻るには前浜前の道を通るのが近いのだけど、いかんせん猛烈な風。飛沫と砂がビシビシ飛んできてとてもじゃないけど無理。なので、少々遠回りをして帰る。
風に吹かれたせいか、ぼーっとだるくてお昼ごはんを食べたら速攻昼寝。
昼寝から目が覚めてもまだ陽が高かったので、ひとりで間々下浦海岸をお散歩。今日はサーファーさんたちの姿がない。海岸沿いにはまたしても自分ひとり。砂浜の先にある岩場を歩く。レンガ色をした割合大きめの石がいくつかゴロゴロ転がっている。SiO2の含有率が高いらしくガラス質。つるりと滑らかで硬そう。上を見ると白い堆積岩層の上にレンガ色の大きな岩が露頭している。あそこから落ちてきたんだろうな。どうか今ここで落ちてきませんように。。
足元の悪い岩場だから、岩の下部からではなく、脇とか裏とかからなんちゃってボルダリングごっご。岩の上に這い上がるまではいいけど、クライムダウンする方がよほど怖い。今は満ち潮なのか引き潮なのかわからないけど、帰り道がなくなったら困るので、ぼちぼちと宿に戻る。
いったん宿に戻り、またしても露天風呂へGo。今日は風が強いので一番ぬるい浴槽はとてもぬるい。地元の方もぷらっと立ち寄ってはお風呂に入りに来る。タダだもんな。うらやましい。とっぷり陽が暮れて、月や金星や星が光りだす。きれいだなー。それにしてもナトリウム分が染み込んで、自分自身が大分しょっぱくなった気がする。
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色々と気になることをメモしたり、グダグダ書いてみたり。山の記録はなるべく参考になりそうなことを…と思いながらも思いついたままに垂れ流し。。
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