年末の旅の記録をぼちぼちと。
年末は伊豆七島のひとつ、新島へ。
伊豆大島、式根島、神津島、八丈島は過去に訪れたことがあるけれど、新島は今回が初めて。
本当は小笠原に行こうかな~と考えていたけど、間際になって東海汽船に問い合わせたら案の定船は満席。
ご利用は計画的に(笑)。
また、当初は宿をとらずにテント泊の予定だったので通年営業しているキャンプ場がある島とか、冬場は海が荒れやすいので就航率の高い島とか、できれば徒歩やレンタサイクルで回れる(レンタカーではなく)手頃な広さの島とか、そういう諸条件で選んでいったら、新島が一躍筆頭候補に。
新島は「サーファーのメッカ」という先入観があってなんとなく行きそびれていたのだけど、冬ならサーファーさんたちや賑やかな観光客の集団もそんなにいないだろうし。。な、と。
そんな訳で、東海汽船のWebサイトで船を予約。宿代を節約する分、船旅をちょっとランクアップ。実は、調布から飛行機に乗ったほうが安かったのだと後から気付いてちょっとショック(笑)。まぁやっぱり島に行くなら旅情溢れる船旅ですよ、船。と、自分を慰めてみる。
ところが出発直前になって、ひよって宿を予約することに。ただし、運悪く到着日のみ満室。なので1泊のためにテントを担いでいくことに。もう出発前からいきあたりばったり。
出発当日の12月27日の夜、浜松町駅から竹芝桟橋へ。夏ならもう少し人が多いのだろうけど、旅客ターミナルは閑散とした様子。乗船客は釣り人さんが多いかな。サーフボードやマウンテンバイクを抱えたグループもちらほら。
定刻22時にかめりあ丸が出航。デッキに出て東京湾を眺める。東京タワーや晴海、お台場の夜景が一望。しばらくしてレインボーブリッジの下をくぐる。ごちゃっとした電飾ワンダーランド。昼間のゴミゴミした風景よりはキレイだけど、正直安っぽい。
週末便なので23時25分に横浜港に寄航。横浜港は海からのアプローチを考えてちゃんとデザインされているのがわかる。ターミナルもきれい。この都市デザインのセンスの違いはなんだろな。
横浜港を出てしばらくすると風が強くなってきたので、部屋に戻って就寝。夜明け頃ふと目が覚めると、ぐねぐねと船が揺れている。強い冬型の気圧配置だったので風が強いらしい。乗り物の揺れには割と強いほうだけど、さすがにちと気持ち悪い。
朝6時に大島の岡田港に着岸。下船完了を待つうちに、島影の向こう側の空に曙光の兆し。岡田港を離れて船が再び走り出す頃には空がすっかり白み、東の洋上からご来光。波浮の港を右手に見送ると、大島の島影を出たためにうねりが強くなる。おえっぷ。
←伊豆大島の三原山を裏砂漠方面から。
利島への就航は条件付だったけれど、うねりが強いので今回は欠航とのアナウンス。利島、御蔵島、青ヶ島のように就航率の低いところは、離島好きにとっては憧れの島(上陸できない確率も高いし、逆に帰れなくなる可能性も高いので)。
船室でもう一度寝こけていたら、朝8時20分過ぎに右手の船窓に島影が。あれ、右舷に島影? と、慌ててデッキに出てみると、どうやら新島のメインポートである黒根浜(前浜港)ではなく、羽伏浦港に接岸する模様。
通年オープンしているキャンプ場があるスポーツ広場に行くには羽伏浦港の方が近いので、なんかちょっとラッキー。
なんてほくほく思いながら8時半過ぎに下船したものの、港には猛烈な風が吹き抜け、潮の飛沫が飛んでくるわ、砂がバチバチ顔面に当たって目が開けられないわ、風に煽られて海に落ちそうだわ。ひー。
慌てて港に戻るとすでにタクシーは1台もなく、巡回中のパトカーが停車しているのみ。ほかにすべがないのでパトカーに駆け寄りドアにしがみつき(風が強いので)、中にいたお巡りさんに「タ、タクシーを呼んでください!!」とお願いしてしまいました。その節はほんとうに、どうもありがとうございましたm(_"_)m
5分ほどしてタクシーが1台港に到着。「冬は西風が強いんだけど、今日はいつもより風が強い」というドライバーさんの言葉に少しだけほっ。港からキャンプ場までは車で5分ばかり。風がなければ港からでも余裕で歩ける距離なのに、わざわざ申し訳なかったです。でも助かりました。
「そこで受付してね」とドライバーさんに言われた建物に向かうものの、入口は施錠され中は無人。ま、朝早いからまだ人が来ないんだろね、と、テントサイトに向かう。宮塚山に連なる丘陵の麓にあり、羽伏浦海岸まで徒歩10分というロケーションの良さもさることながら、ここのキャンプ場はとてもきれいに整備されていて、トイレやシャワー(水のみ。海の潮を落とすため)、炊事棟にBBQ用のコンロ、分別ゴミ箱などが完備。でもタダ。すごい。ちょっと住民税のモトがとれたような気がする(深い意味はありません)。
キャンプ場には先客さんが1組のみ。挨拶を交わし、自分たちのテント装備をデポし、炊事棟で朝ごはんの支度。朝食を済ませた後は、新島本村の中心部をぶらりとお散歩。
羽伏浦から、町の表玄関になる前浜までは徒歩で30分弱。ほとんど平坦な道なので歩きやすい。
空はすかーんと快晴でいい天気なんだけど、風さえなければ。。という感じ。
ただ、横殴りの風が吹き付けてもあまり寒くないのはありがたい。
宮塚山と向山の2つの山に挟まれた平坦地は、886年(仁和2年)に起きた向山の噴火で噴出した火山灰が宮塚山との間に堆積したのではないかと言われているそうな。向山の噴火が本当に886年かどうかはほぼ定説らしいが現在でも証明はされておらず、伊豆国が「新たに1島を生じたという」「銀岳」の絵図を朝廷に献上したという古文書の記録に基づいて考察するとどうやら新島近海で噴火があったのは間違いないんじゃないか。。ということらしい(古文書の文献は残っているものの、「銀岳」の絵図は残っていないとかetc. 。。ということを、宿にあった新島の歴史の本で読みました。面白いですな))
なるほど、それで新島というのかと合点。でも、もうかれこれ約1100年以上前の記録が未だに名前に残っているというのもすごい。いつまでも新しい、永遠のヤング。
宮塚山の「宮塚」とはいわゆる「古墳」のことかな。おそらくは遠い昔に島外の人がもたらした名前、なのかな。で、宮塚山の向かい(集落を挟んで反対側)にあるから向山(むかいやま)で、宮塚山の奥(北東)にあるから阿土山(あっちやま)。シンプルで即物的で好きです。こういう地名。
道の両側には新島特産のコーガ石(抗火石)で造られた家や塀が続いていて、この島独特の景観。明治初期以降、火事の延焼を防ぐために木造ではなくコーガ石を用いるようになったとか。
←コーガ石ブロックで造られた家。一見軽量コンクリートにも似ているけどより深い趣がある。夏の陽射しならもっと白く輝くんだろうな。
コーガ石は黒雲母流紋岩。学名は石英粗面岩。成分の約80%がシリカ(二酸化ケイ素)、約15%がアルミナ。多孔質の溶岩(いわゆる軽石)で、鋸で切れるほど柔らかく、発泡性なので軽くて水に浮くらしい(良質と分類されるもの。神津島や天城山のコーガ石は比重が重いのと埋蔵量が少ないらしい。でも新島でも比重の軽い良質のコーガ石はもう少なくなってきたのだとか)。
非晶質のガラス繊維が主体で、飴細工みたいな石。石板を叩くとカンと澄んだ金属質の音がする。極めて小さい石英と黒雲母の結晶粒が含まれていて、風化しているものはさらさらさらと結晶粒が零れてくる。これが新島の白い砂浜の元。
あっという間に集落を抜けて前浜に出る。観光客はおろか町を歩く人自体ほとんどいない。浜辺はやっぱり風が強くて吹き飛ばされそう。防波堤に豪快な白波がぶつかっては砕ける。そんな荒れた海でも水の色がきれい。沁みる。。
海岸沿いの道端にはコーガ石を彫ったモヤイ像(渋谷駅南口にあるアレ)が並んでいて、なんか不思議な風景。切り出した状態とか自然な造型のままでいいんじゃないかと思うんだけど。まぁいんだけども。
←並び立つモヤイ像より断然グレイトなコーガ石で覆われた公衆トイレ。中は極めて普通だしキレイ。アルパインだとしたらII級程度(中は覗けませんよ)。コーガ石はガラス質なので結構手に痛い。
海岸沿いにてくてく歩くといつの間にか黒根浜に到着。今日は船が島の反対側の羽伏浦に接岸したし、海が荒れているので新島と式根島を結ぶにしき号も出航を見合わせたのか、島のメインポートも閑散としている。ラッキーなことに島の人に拾ってもらい、車で富士見峠や若郷の集落を案内していただく。車じゃないと遠くてなかなか行けない場所だけにうれしい。本当にありがとうございました。
←富士見峠から。式根島、神津島が見えました。
「隣村にも行ってみる?」と島の人に問われて、「隣村?」と尋ねると「若郷」とのこと。あぁ、なるほど。若郷は浜に開けた西側を除き、三方を山に囲まれた小さな集落でした。玄武岩質の黒い岩肌が路頭していて、脆そうだけど登れそうな気もする。それに脆いといってもコーガ石よりは硬そう。
もともとそのつもりで水着を仕込んであったので、島の案内の最後に湯の浜露天温泉で降ろしてもらう。浜辺にある無料の露天風呂。24時間いつでもタダでお風呂に入れます(要水着着用)。
中途半端な時間だったので貸切。ここの温泉の泉質はナトリウム-塩化物強塩温泉だそうで、すごくしょっぱ苦い。にがりみたい。海の水をさらに濃縮した感じ。
ここの浴槽やギリシャをモチーフにした神殿(なぜ神殿?)もコーガ石。石の階段を上がって神殿部分に行ってみたけど、オフシーズンのためか空でした。残念。
小さく仕切られた石造りの浴槽が4つ。一番上が一番熱くて順々に温くなる。それと別に、足湯がひとつ。源泉かけながしだけど、温度が高いので加水している。それでも一番上はアツアツ。
風が強い日だったためか、一番下の浴槽はほどよくぬるめで、ざぶんざぶんと砕ける波飛沫を眺めながら1時間以上も入っていた(ナトリウム分が強いのでたぶんそんなに長湯をしないほうがよいかも)。
お湯から上がったあともずっとぽかぽかと温かくて湯冷めしない。いいお湯でした。
←手前が温泉、真ん中が海、その上が空。寄せては返す波のリズムが心地良くて、ぼけ~っとするのに最適。
来た道(島の方いわく「山の道」)とは別の、平らな道を歩いて羽伏浦浜に戻る。道の途中にスーパーがあったので立ち寄る。生鮮食料品や日用雑貨などたいていのものが揃っている。お菓子などは定価販売のものが多いのでちょっと高いかなという印象だけど、べらぼーというほどでもない。
船の自販機で買ったビールが1本のみだったので、追加でお酒を購入。
ぷらぷらと歩いて羽伏浦のキャンプ場に戻る。夕陽を背に受けて島の反対側へ。山の麓は緑が濃くて、鬱蒼としている。相変わらず風が吹いているけど朝よりは少し穏やか…かな。
炊事棟でラーメンを作り、ビールで乾杯。いつの間にか陽が落ちて、空には満点の星。
ヘッデンを灯してぷらりとひとり羽伏浦の浜辺までお散歩。羽伏浦側には家がほとんどないし、風の強い冬の夜の浜辺にわざわざ来る人もいない。
ここにもコーガ石の石像が並んでいて、NHKのキャラクターである「どーもくん」の石像が薄暗がりの中でひときわ怖い、すんげぇ怖い(笑)。ふと遠くを見ると草原の中に緑色の目が光っていた。なんだろ、動物かな? なんか奇妙な感じがして街灯のあるメインゲートの方に戻る。振り返ると緑色の光は海の方に移動したらしく、でもまだこっちを見ている。
さっきはヘッデンの灯りを反射したのだろうと思ったけど今回は直射していなし、夜の山道で出会う小動物の目の反射とは違って蓄光塗料みたいにぼーっと光っている。ひー、なんか怖い…。怖かったので、来たときとは別に街灯の点る道路を経由してキャンプ場に戻った。あれはなんの動物だったんだろう。。
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色々と気になることをメモしたり、グダグダ書いてみたり。山の記録はなるべく参考になりそうなことを…と思いながらも思いついたままに垂れ流し。。
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