本日の日経BPオンラインの内容で目に留まった記事。
資源、エネルギー、アフガン情勢、中国。。と、個人的な関心ツボのど真ん中に直撃ヒット。
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アフガンを攻める中国の資源戦略
2008/12/12 谷口 正次 氏
アフガニスタンでは、アルカーイダがいまだに跋扈しているばかりか、反政府勢力タリバンが復活してきたために米軍が増派されようとしている。
そのような危険な国において、中国は大規模銅鉱山を開発しようと計画している。
2007年11月、中国はアフガニスタン政府と35億ドルの投資を行う契約を結び、30年間の探鉱・開発権益を取得した。この銅鉱床は、2004年以降、中国、カナダ、ロシア、米国、インドから来た9社の探鉱会社が調査をしていたが、争奪戦の結果、中国が落札したものである。
確認されている埋蔵量が6.9億トンで品位が1.65%と高く、1130万トンの銅地金が取れる。これは地質技術者によると世界最大になるということである。
銅鉱床は首都カブールの南部、ロガール州アイナク(Aynak)にある。35億ドルという外資による直接投資はアフガニスタンの歴史始まって以来最大の金額である。銅鉱石の価値は880億ドルとも言われている。
しかし、その地域には鉱山開発に必要な電力を供給できる発電所はなく、そのうえ採掘した銅鉱石を運搬する鉄道もない。したがって、投資額35億ドルの中には、鉱山の近くに400メガワットの石炭火力発電所と鉄道の建設費用も含まれているわけだ。
発電された電力の一部は首都カブールへも送られる。なにしろカブールでは現在1日に数時間しか電気が来ないところが多い。この発電所では5000人の雇用が生まれるといわれ、そのほかに、銅鉱山と鉄道建設にも5000人の労働者が必要だそうだ。
中国企業は、発電所と鉄道が完成する時期に合わせて、6年以内に銅採掘のフル操業をしたいという意向だ。鉄道のルートは、西中国からタジキスタンとアフガニスタンを通ってパキスタンとつながることになる。貨物鉄道の建設はアフガニスタンでは初めてである。
民間企業にとっては、アフガニスタンのように危険なところでインフラを建設することは極めて高いコストとリスクを覚悟しなければならないため、手を出せないのが普通だ。
しかし、中国国営企業にとっては、中国西部を開発するとともに周辺国とリンクさせて貿易ネットワークを作るという北京政府の遠大な計画に貢献するプロジェクトであるから、いくら高くついても許容されるわけだ。
したがって、このプロジェクトは、いま大規模投資が行われている西部開発の一環として捉える必要があると同時に、中央アジア、南アジアそしてイランへもリンクされることになる。中国西部開発のためには、エネルギーも鉱物資源も必要になるからだ。
(どんと中略)
中国がこのプロジェクトの開発権益を落札したわけだが、入札には英国企業のカザフミス・コンソーシアム(Kazakhmys Consortium)、カナダのハンター・ディキンソン(Hunter Dickinson)そして米国の資源メジャー、フェルプス・ダッジ(Phelps Dodge)が参加した。
多くのアナリストを驚かせたのは、中国冶金科工集団の35億ドルという応札価格の高さだ。他はみな20億ドル以下と踏んでいたようである。
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全文を転載するには長いけど、要約するまでもなく簡潔にまとめられた内容なので、前半半分と最後をまるっと引き写し(申し訳ありません)。
全文を読むには読者登録(無料)が必要なのでちょっと面倒だけど、日経BP社のサイトは玉石混交でなかなか面白いので個人的にはオススメ。自分の場合は仕事上の必要があって登録したのですが、あれこれ拝読させていただいております。
この記事を読んで思うことは色々とあります。
世界規模での経済恐慌の衝撃を自らも真っ向から食らいつつも、一度火のついた中国の経済発展は走り続けるしかないのだと中国側が認識していること(それが良いことか悪いことかはひとまず脇において)。
中国の西部拡大主義はさらに進むであろうということ。そのために、チベットや東トルキスタンなどの中国西部に位置する自治区の自治権拡大や独立はますます困難になるであろうということ。
自分は中共の方針は好きではないので、どうしても批判的なフィルターを外せずにいます。たとえば、厭が応にもスーダンにおける石油利権をめぐる中国の暗躍などを思い出してしまいます。
たとえ、この契約が国際的な入札制度の下に決定したものであっても、中国の資源戦略と聞くだけで脊髄反射で湧き上がる嫌悪感を抑えることはできません(大人になろうぜ、はい)。
ただ、中共が順調な経済発展こそが幸福の証であると説き主導することを、ただ単に非難することは難しいというジレンマもあります。
石油価格の暴騰暴落に翻弄され、欲望にまみれた市場主義経済に疲弊し、いったいどこに軸足を置くべきか迷いがある自分に対し、躊躇いもなく拡大発展路線を掲げる野蛮さと野放図さと能天気さが少々羨ましいような気もするし。
かといって、もうそろそろ資源戦略をめぐって地域紛争を続けるような世界からは脱却してほしいような気もするけど、そんな絵空事が今すぐ叶うような現実とは思えんし。
まぁ、個人的に、先日のインドのセーン国連大使の発言はごもっともだと思いまする。
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私から見れば、開発・人権に貢献してきたとうたうこの年次報告書の評価は、『無意味』とまで言わなくても『不適切』だ」と語った。さらに「国連は(このような報告書ではなく)世界の政治経済をどのように再構築できるかという報告書を作成するべきだ」と現在の経済危機で国連が取るべき役割の重要性を論じた。
(「インドのセーン大使、国連を激しく非難」 Voice Of India, 2008/10/08 16:46:19 JST)
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国連が大好きでたまらない朝日新聞こそ、こういう主張をすべきだとも思うわ(はぁと。
第一、アメリカの時期大統領オバマ氏がイランとの対話路線を掲げながらもアフガニスタン増派を支持しているとのことだし。おまけに、すぐ近くのカシミール地方も一触即発の状態だし。そんなわけで、アフガン和平の実現はまだまだ予断を許さないものがあるし。
それでも、さまざまな国の思惑や自国内の勢力によって壊滅的に破壊されてきたアフガニスタンという国の経済発展という萌芽が潰えることなく、人や環境と調和を保って根付いてほしいという気持があります。
収益がお役人の懐に収まるのではなく、現地に学校ができ教育の場が広がったりすると。。いいんですけどね。。操業開始後は、中国は年間4億ドルをアフガン政府に支払うそうですが。。
そういえば、ちょこっと情報を検索していたら、こんな記事がありました。
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「書籍販売業者が読書の習慣を奨励」(在日アフガニスタン大使館、2008/08/01 ※元ソースはロイター)
国内の30年にわたる戦争のために、かつては多くの重要なアジアの学者、科学者、そして詩人たちの生まれた場所であるアフガニスタンで、読書は虐げられてきた。
「書物を通して、子供たちは自分の文化や歴史を知り、世界を理解するのです。書物は海のようなものです。真珠を手に入れるためには、海に飛び込まなければなりません。」と(書籍販売業者である)Rais氏は語った。
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タリバン勢力は情報や教育を悪と捉え、書籍の販売や読書を禁じあまつさえ焚書にしたそうです。
長い紛争の中で疲弊した社会にあっても、それでも人は書物を愛し知に飢えているのだと、そう思うだけでなんだか希望の光が見えるような気がします。
(このRais氏って、「カブールの本屋 」の主人公の方ですね。ご健勝そうでなによりです)
まー。。。なんかもう、色々と考えさせられます。
ぶっちゃけ、たいそう複雑な気分です。
幸いにも、この記事がとても淡々と経緯や事実だけを列記して書かれたレポート的な文章だということだけが救いです。
この中国の貪欲な経済発展を手放しで賞賛してきた故筑紫哲也氏などや、「国益優先」主義で国体重視の割にはそこに住まう人を考慮せずに神の視点で語る佐藤優氏、最近主張がフラフラ偏向している伊東乾氏などのジャーナリスト諸氏がこの記事を扱ったら、いったいどんなプロパガンダが展開されたかと想像するだけでうんざりしますもん。
まぁ、日本はアフガニスタン支援に今まで累積20億ドル近くを支出してきたそうだけど、いったいどこに消えたんだ?? とかは突っ込んでみてほしいかな、とは思いますが。
上記の記事に参考記事のリンクが貼られていますので、別のリンクを。
■Related Links:
バンクーバーの鉱山会社Hunter Dickinsonが、アフガニスタンの銅鉱山に入札
(2007.09.21 在日アフガニスタン大使館 (ソースはThe Canadian Press))
中国冶金建設集団公司、アフガニスタン銅鉱床開発権取得
(2007.11.27 独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構)
中冶集団と江西銅業の共同体、アフガニスタンで中国全体の銅鉱埋蔵量の3分の1に相当する銅鉱開発事業の鉱
(2007.12.03 中国環境能源資訊)
はー、どっとはらい。
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/*以下、自分用メモ
中冶集団と江西銅業の共同体、アフガニスタンで中国全体の銅鉱埋蔵量の3分の1に相当する銅鉱開発事業の鉱
(20071127)
「中国冶金科工集団公司」(以下、中冶集団と称す)と「江西銅業集団〔香港H株〕」は21日、アフガニスタン政府から大型銅鉱開発プロジェクトの入札権を獲得したとの連絡を受けたことを明らかにした。これにより、2社は「Aynak copper」銅山の鉱山権100%を取得することになる。プロジェクトの投資総額は約37億ドル(約4,000億円)とのこと。
「Aynak copper」銅山は首都カブールから東南約35キロメートルにあり、1974年に発見されたが、長い内戦によって開発されずに現在に至っている。銅鉱床の規模は大きく、鉱石品位も高く、資源としての将来性も高い。すでに調査された銅鉱石の埋蔵量は6.9億トン、銅金属量1,100万トン、鉱石量7.05億トン、平均銅含有率は1.56%とのこと。商務部の資料によると、同銅山の埋蔵量は中国全体の銅鉱埋蔵量の3分の1に相当するとのこと。
アフガニスタンは鉱産資源に恵まれており、6,000万トンの銅資源のほか、222.6億トンの鉄鉱石資源と宝石および大理石を含む其の他の鉱産資源を有する。30年にわたる内戦が終わり、アフガニスタン政府は外国から鉱業企業を誘致し、自国の鉱業を重要な経済の柱として蘇らせようとしている。
中冶集団と江西銅業の入札プランによると、年間22万トンの電解銅を生産する計画。建設作業は半年から1年後に開始し、5年後の完成時には、アフガニスタン政府に毎年4億ドル(約432億円)の運営費用を支払うことになっている。
中冶集団の関係者によると、将来的には自社の工事総請負経験を活かし、国際慣例に基づいて「Aynak copper」銅山開発プロジェクト総請負に参与したいと考えている。また、江西銅業は銅選鉱の需要が大きいため、銅選鉱は優先的に江西銅業に販売される見込みだ。
中国は2003年から世界最大の電解銅消費大国となり、世界消費量の約5分の1を占め、その半分は輸入に頼っていた。2004年以降、国際銅価格が約2 倍に値上がりし、国内の銅鉱資源は埋蔵量の67%がすでに開発されている状況であった。そこで、国内の大型企業は海外の銅鉱資源に目を向け始めたのである。2006年、中国最大の金属鉱産品輸出入企業である「中国五鉱集団公司〔ミンメタル〕」が、世界最大の銅生産を誇るチリの「コデルコ」と合弁会社を設立し、チリの銅資源の開発提携を結んでいる。一期投資額は5.5億ドル(約600億円)。最終的な投資総額は20億ドル(約2,160億円)に上る見込みだ。
(2007年11月22日付「第一財経日報」を基にMURCS整理)
2007-12-03更新
色々と気になることをメモしたり、グダグダ書いてみたり。山の記録はなるべく参考になりそうなことを…と思いながらも思いついたままに垂れ流し。。
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