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Norlys(ノールリース)-日々のあれこれ
Posted by - 2024.04.25,Thu
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Posted by norlys - 2014.12.16,Tue
先日(11月20~23日)にイギリスで開催されたKendal mountain festivalにて初公開された、"Redemption - The James Pearson story" (Hot Aches社) をDLで購入。
15ドルでした。ストリーミング視聴なら4ドル。

DVD化されるのを首を長くして待とうかな…と思っていたのですが、なんとなくパッケージ販売される気配がなさそうなので、とうとう我慢たまらずポチリ。

"Redemption" (リデンプション)という聞きなれない単語は検索してみると、
【名詞】【不可算名詞】
1買い戻し,質受け; 償還.
2a身請け,救済.
b【神学】 (キリストによる)(罪の)贖(あがな)い,救い.
3(約束・義務などの)履行; 補償.
とありました。
つまり「贖罪」ということのようです。

クライミング動画のタイトルにしては随分と重々しい印象を受けますが、この動画のラストには先日ジェームス・ピアソンが第4登を果たした"The Rhapsody(E11)" の完登シーンが含まれると知り、「あ」と思いました。その理由は追々述べていきます。

ジェームス・ピアソン(JP)氏は英国を代表するトラッド・クライマーのひとり。
「Redemption」は、そんな彼の幼少期のホームビデオや写真でとにかく登ること高いことろが好きという微笑ましいエピソードの公開とJPへのインタビューを織り交ぜながら始まります。
(以前、ご両親へのインタビューの中で「(ジェームス・ピアソンは)歩き始める前からキッチンテーブルを登っていたの」とお母様が仰ったように born to be the climberなんですね)


そんなジェームス・ピアソンは「Hard Grid(1998年公開)」の動画に強く感銘を受け、トラッドクライミングに傾倒。2003年2月には17歳にしてE9のルート(The Zone)を完登。
あどけなさの残る10代後半からトップトラッドクライマーとしての地位を確立した30代前半までに登った数々のラインの映像と、その当時の映像と当時を振り返りながらのコメントが続きます。

JPの順風満帆な栄光の日々に転機が訪れたのは2008年10月の終わり。Devonのシークリフに拓いた48mに及ぶ"Walk of Life"というルートに対し、世界で初めてE12 7aというグレードを付けたことで、トラッドグレード論争が湧き上がりました。「JPはE11を登っていないのに、なんでいきなりE12なんだ?」とか。

2009年1月に、トラッドクライミング界の王ともいうべき存在のデイブ・マックリード(世界で初めてE11というグレードを初登した方)が"Walk of Life"の第2登を果たし、自身のブログの中で「Walk of LifeのグレードはE9 6cが妥当」だと詳細なコメントを残します。

その結果、JPに対し「ヤングスターにありがちな傲慢さ」「グレーディングから勉強し直したほうがいいのでは?」等々と更なる非難の矢が放たれました。


前後して2008年には、アメリカやカナダのトップクラッククライマーたちがイギリスを訪れて、高難度のトラッドグレードのルートを次々と攻落するというアメリカンショック(?)も。

メンツが面子なので(チーム・アメリカはアレックス・オノルド、ケビン・ヨルグソン、マット・シーガル。カナダからはソニー・トロッター)、そりゃもうツヨツヨ揃い踏みという感じだけど、もし自分がイギリス人でハードグリッドなハードトラッドルートこそ至高…!というある種の矜持を持っていたとしたら、やっぱりちょっとショックだよな…とは想像に難くなく。

そして湧きあがったグレード論争が収まらぬ英国のクライミングの舞台からひっそりと身を引き、ジェームス・ピアソンはヨーロッパに活動の拠点を移しました。

大陸の岩場を巡る中で、トルコにてJPはキャロライン・シャバルディーニと出逢い、やがて共に過ごし一緒に登るようになります。キャロラインは仏領レユニオン島出身の元コンペティター(フランス代表)。ばりばりスポートクライマーなキャロラインはジェームスからトラッドを学び、ジェームスはキャロラインからスポートクライミングを学んだそうです(「自分はトラッドの経験がゼロだったし、最初のうちは彼はスポートクライミングがヘタだったわー、だからお互いが先生であり生徒であり、ちょうど良かったの」とキャロラインの回想にあるなどwこの2人、ほんとお似合いです)。

で、まぁキャロラインさんのお陰もあって意欲的に世界各地の岩場でのクライミングや冒険を楽しむ訳ですが、それでも各地でトラッド・クライミングを実践してしまうのは、ジェームス・ピアソンが根っからのトラッドクライマーだからなのでしょうか。

イタリアでの"Is not Always Pasqua" (最小トライカムをポケットに、5番のデカカムを浅いクラックに縦置きからのどーんとボルダームーブが印象的)、トルコでの"Cobra crack"(スモールカムが決まりそうなのに敢えてナッツ連発!が印象的なフィンガークラック)など。
最近では南アフリカのロックランズでもトラッドを実践したり。

スポートクライマー出身のキャロラインさんもトラッドに取り組んだ初めの頃は「クライミングは自分にとってスポーツであって、命を賭けるとかそういうものではない」というようなことを述べていましたが、今ではすっかり最強トラッド女性クライマーのひとりに名を連ね「イギリス人になれた気がする」とのこと。ほんとにキュートでステキな人です。

そして「Redemption」の最後はRhapsodyの登攀シーンへ。

きっかけはキャロラインさんだったそうです。彼女が「Rhapsodyを登らなくていいの?」とジェームス・ピアソンに尋ねたことが。

それがJPの背中を押し、「Rhapsodyを登ろうと思うんだけど、撮影することに興味はないかな?」とHot Aches社に連絡をしたことが今回の映像作成のきっかけになったそうです。

E11というグレードのルートを、Rhapsodyという、ハードトラッド界におけるマイルストーン的なルートをきっちりと完登することで、それが過去に引き起こしたことのRedemption=贖罪になるではないか、と。

ジェームス・ピアソンがRhapsodyにトライする当日、かのデイブ・マックリード氏も現場に登場。そう、"Walk of Life" を巡るグレーディング論争に論理的な裁きを下し、若きトラッドクライマーの旗手の一躍に決定的な終止符を打ったデイブ・マックリードが。なんというお膳立て。

このルート、上部約三分の一はノープロテクションなのに、核心は最上部。なので核心のムーブを繋げられない限りロングフォール必至。トライを重ねる毎にメンタルが擦り減ってしまいそう。

動画の中でジェームス・ピアソンは一度はロングフォールを喫するものの、続くトライでは休むことのできない壁の中で遠く細かいカチを繋ぐボルダームーブをこなし、そして…ガバを掴んで乗り上がり草原へ。

無事に完登を果たしたジェームス・ピアソンとデイブ・マックリードの二人はがっちりと握手。うるる…。
ビレイヤーを務めたキャロラインの下に降りて、ジェームスさんががばっと抱き寄せると、キャロラインさんが腕の中でぴょんぴょんぴょこぴょこ飛び跳ねて、もうね、なんてかわいいの!

RhapsodyをRPしたジェームス・ピアソンは、動画の最後に、"I feel like...the end of chapter."(ひとつの章が終わった気がする)と述べています。それは、"Redemption"-贖罪、救済、約束・義務の履行-を遂に果たしたことで、新たなステップを踏み出せるということなのかも。これからの2人(ジェームス・ピアソンとキャロライン・シャバルディーニ)の活躍に大いに期待したいところです。

クライミング動画にはロードトリップ的なものが多いかな…と思いますが(どうなんでしょう)「Redemption」はひとりのクライマーに焦点を当てたライフヒストリーです。

映像はとてもきれいですし、派手なフォールシーンは多数あって、結構心臓に悪いです。スモールカムをプロテクションに、カンテの甘いスローパーを抑えて極小エッジに乗り込んでランジ一発決めて…と、ムーブの強度は高く、なによりもプロテクションワークがすごく難しそうなのですが、余り派手さを感じないのはジェームス・ピアソンの人柄を反映して、なんでしょうか。

フォールした時も無暗に罵らないし、完登した時もぐっとこみ上げるものを少し抑制した感じのコメントを出すので。これが英国紳士ってやつ?

なので「Redemption」は、どちらかというと、というか完全に篤志家向きだと思います。

それでも、できればクライミングを愛する多くの人が観る機会があったらいいなぁと願いつつ。。


若気の至りと揶揄され炎上沙汰になり、世知辛いグレード論争の果てに親しみ慣れたハードグリッドの舞台を去らざるをえず、そこでとても素敵な奥さんを見つけたりスポートクライミングを楽しんだけれど、結局トラッドの世界を完全に断ち切ることはできなかった一人のクライマーの姿に、クライミングという行為に人生のすべてを捧げた登攀に、静かで深い情熱の炎を見る思いがします。

(情熱大陸だったら神回になりそうな…)

それにしても、だ。JPさんがインタビューの間中ずっと上裸で、いつになったら服を着るんだろ…と考えてしまったわ…。
「Odyssey」のレビューに「JPがサングラスをかけっぱなしで、ヘイゼルの帽子の影が濃くて、せっかくのインタビューなのにクライマーの表情が見えなくて残念」みたいなコメントがあったから、その反動で思いっきり見せつけてみたんですかねぇ…。寒波到来を予想させる冬の夜にひんやりとした部屋の中で観ていたら「早く服着てくれないかなー」と思うこと幾度がw
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非公開
自己紹介:
Norlys(ノールリース)。極光、いわゆるオーロラ。雪の降る季節と雪の降る景色がすき。趣味は編み物。週末は山を散策。

色々と気になることをメモしたり、グダグダ書いてみたり。山の記録はなるべく参考になりそうなことを…と思いながらも思いついたままに垂れ流し。。
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