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Norlys(ノールリース)-日々のあれこれ
Posted by - 2024.05.02,Thu
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Posted by norlys - 2007.11.18,Sun
今週の木曜日に開催された、山野井泰史さんの講演会の感想をようやく書こうかと。
でもスライドショーの具体的な内容にはほとんど(まったく?)言及しません。
個人的な雑感です。

子供の頃、外に雪が激しく降って家に閉じ込められた日には、かつては山男だったという父親の書架を漁って山の絵葉書を眺めたり、新田次郎の著作などの山岳小説を読んで、どこかにある遠い山や生死を分けるほどの厳しい寒さを想像していました。
(雪国育ちの乱読家の典型ってやつです。長い冬は書物の中で旅をするという。)

ちなみに、一番好きな冒険物語は、山の話ではなくて、ヘイエルダールの「コンチキ号漂流記」という海が舞台のノンフィクション。ホントに底抜けに面白いです。
山の物語は、選ぶのが難しいけれど、(純粋な山岳小説に絞らず)「冒険」という観点からいうと高木正孝著の「パタゴニア探検記」に一票。

山岳小説は、その多くが悲しい結末を迎えたりするので、これ面白いよ! 的な優劣はつけがたいです。。

山を登るようになって、山野井さんという方がいるということを知り、なんでもすごい人らしいぞ…ということで、氏の著作である「垂直の記憶-岩と雪の7章」を読んだのは、去年の秋か冬の頃でした。

青年期のヒマラヤへの憧れ、単独行を選んだ理由、数多くの困難なアルパインルートでのソロ登攀成功、そして2002年、ギャチュン・カン(わたしはこの山の名前がどうしても覚えられない)の登頂後のアクシデントからの生還-と、山野井さんが自らのクライミング人生を回顧した記録が、裏表のない実直そうな筆致で綴られています。

この本を読む間、なんども「山野井さんはちゃんと生きて還ってきてこの本を書いたんだからだいじょうぶ」と自分に言い聞かせましたっけ。後半に近づくにつれ、なんだか今にでも哀しい結末が待ち構えているようで、ヒヤヒヤしながらページを繰った覚えがあります。

さて。
講演会が始まり、都岳連の司会の方がご挨拶を終えると、ひょっこりと人懐っこい表情の山野井さんが押し出されるようにして会議室の前中央に進み出ました。

DSCF5554_s.JPG山野井さんが20代の頃には「(日本で? 世界で?)もっとも危険なクライマー」と呼ばれていたとか。
本とかエッセイとか、メディアを通じてしか知らない、そんな山野井さんの印象が自分の中で強烈すぎて、目の前にご本人が立って話していることに、われながらしばし呆然。

うわーホンモノだ。て、当たり前ですが。
写真のまんまには違いないけれど、動いている姿は写真よりも若々しいし、そんなに変わった人に見えない~と、またまたしばし呆然(失礼でなければよいのですが。。ミーハーです。すいません…)。

グリーンランドでのビッグウォール初登攀がメインの講演会でしたが、その前に2005年や2006年のクライミング実績の報告もありました。


2006年に山野井さんがネパールのパリラプチヤ北壁を目指したとき、自分は山野井通信の更新を今か今かと-同時におそるおそる-待っていたひとりですが、いざ更新されると、「敗退を決めた」というような内容の簡潔な文章だけがぽつりとあって、あれ? と拍子抜けしたことを思い出しました。

「うーん、なんだろう。今の僕にはヒマラヤは無理だと思ったんですね。正直怖いというか…」という言葉を直接耳にして、すっと自分の中のモヤモヤが霧散したような気がしました。(山野井さんの台詞はうろ覚え~です)

敗退を決意するのはそうそう簡単なことではないと思います。時間もお金もかけてここまで来た、今度はいつ来れる? 前進か撤退か、答えはYesかNoしかないのに、どこかに絶妙な妥協点はないものかとギリギリの計算が最後まで働くハズ。
そのギリギリの計算の過程が、なんだか圧倒的な重みをもって伝わってきたような気がしたというか、なんというか。
うーむ、さすが山野井さんレベルになるとオーラが違うなー、というか。
講演会に行ってよかったと、まじまじと思った瞬間でした。

ギャチュン・カンの下山時に嵐に巻き込まれ、奥様の妙子さんと共に奇跡の生還を果たしたものの、山野井さんは生の代償として手足10本の指を凍傷で失われました。

そのため、以前のようなアグレッシブな登攀をこなすことは困難になったものの、結果論を何度も繰り返すよりも、今自分ができる範囲でベストのクライミングを楽しんでいこう、もっと先に進んでいこう、という山野井さんの姿勢がとても印象的でした。

そんなわけで、グリーンランドのクライミングの様子も実に楽しそうでした。
グリーンランドなんてなかなか気軽に旅行で行けるところではないので、正直うらやましいー。
「もっと困難な登攀を目指してもいいかなと思った」くらいだそうなので、次はどんな山を目指すのか、幸運にも同時代を生きる者としてまたーりヲチさせていただきたいと思います。

あと、会場にはいらっしゃいませんでしたが、奥様でもありクライミングのパートナーでもある妙子さんのことを語るときの山野井さんの表情もとても印象的でした。
事前情報をとりこみ過ぎて、自分の目にややフィルターがかかっていることは否めませんが、彼の文章そのままに実直で真摯な印象を受けました。

たとえば、こんなの-

我が家では、片方が死んだときの約束がある。
それは墓を立てる代わりに木を植えることだ。
僕が死んだらカブトムシやクワガタがたくさん集まるようにクヌギの木を、妙子が死んだら柿の木を……。
あまり自分から果物を食べない僕だが、柿だけは好きだからだ。
多分、妙子は一人でも生きていけるが、僕は一人で生きていけないような気がする。
きっと歳をとり老人と呼ばれるようになっても、僕たちは生きているかぎり一生登っているのだろう。


「垂直の記憶-岩と雪の7章」の中のミニコラムの一文です。(´;ω;`)ブワッ
 
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自己紹介:
Norlys(ノールリース)。極光、いわゆるオーロラ。雪の降る季節と雪の降る景色がすき。趣味は編み物。週末は山を散策。

色々と気になることをメモしたり、グダグダ書いてみたり。山の記録はなるべく参考になりそうなことを…と思いながらも思いついたままに垂れ流し。。
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