Norlys(ノールリース)-日々のあれこれ
Posted by norlys - 2009.03.18,Wed
週末は八ヶ岳の中山尾根を登りました。去年の12月に登った赤岳主稜に続いて、今シーズン2回目の冬季バリエーション。
土曜日の朝、温かい雨の降る都内を出発。富士見高原のあたりでも周辺に雪は見当たらず。それでも美濃戸口に向かう途中で、次第に雨がぼたぼたとぼたん雪に変わりました。
水分多めのじっとりと重い湿雪で、こんな中を歩いたらあっという間にぐっしょり濡れてしまうよなぁ…と、いまいち出発するモチが上がらず。
それでもまぁ11時には出ますかね…と、ぼちぼち準備を進めていると、ちょうど赤岳主稜狙いのNさんたちが美濃戸口に到着。Nさん車は4駆なので赤岳山荘まで便乗させてもらうことになる。ラッキー。
Nさんたちが美濃戸口の八ヶ岳山荘で朝ごはんを食べる間しばしお待ちし、ほぼ12時に赤岳山荘の駐車場に到着。1時間の林道歩きを省略できたのはありがたい。
これから装備の最終準備を行うというNさんたちパーティと分かれて、自分たちは一足先に12時5分に赤岳山荘から南沢経由で歩き出し。
ゆっくりめのペースでお願いしますと同行のY氏に伝える。登りの間いつも話の途切れないY氏が、今回は不思議なくらい口数が少ない。
標高1800mあたりまでは降ったばかりだというのにぼってりとした雪が靴の裏にダマとなってくっついて気持ち悪い。それでも、高度が上がるにつれて気温が下がり、標高1850mを過ぎたあたりから雪は次第にさらさらとした感触に変わる。風はなく、湿り雪なので降り積もるはしから自重で嵩が減りラッセルにならずに済むのはありがたい。
それにしても、午後遅くには降り止むとの予報だったけど、空は厚い雲に覆われなかなか天候が回復する兆しは見られない。
間に2回休憩を挟んで15時ちょうどに行者小屋に到着。すでにテントが4、5張りほど。空いているテン場を踏み固めテントを設営していると、自分たちの30分後にNさんたちが到着。この頃から時折雲の間に青空が覗くようになり、阿弥陀岳や赤岳、横岳が見える。中山尾根の取り付き地点は、あの二つの三角形がM字を成す、あのラインだよねと確認。
もう夕方なので夕飯の準備に取り掛かる。赤岳鉱泉からテント場代を徴収しに来た小屋の人が「昨日までは暖かくて雪が氷板になった上に今日は60cmの降雪なので、明日は雪崩に注意してください」と言う。60cmかぁ。結構降ったんだな。。
Nさんたちはひとりずつ個人用テントを担いできたので、自分たちの4人用テントに集まり夕飯。Nさんたち3人がいっぺんに3つのガスを使ったら、テント内があっという間に酸欠状態に。息苦しい。まるで自分が真っ暗な水の底にいて、水面は遥か高みで浮上できないみたいな感じ。
外の雪は未だ降り止まず、あまつさえ風が出てきた。今夜は冷えそう。
「この分だと明日はラッセルかなぁ」とY氏とN氏。「まぁ雪が重いからそれほどではないと思うけど、トレース泥棒狙いでのんびり出発すればいいんじゃないかなぁ」と自分(←姑息。ごめんなさい)。
Nさんたちがたんまりお酒を担ぎ上げてくれたけれど、ほとんど消費することなく散会。少しばかり明日の準備をし、お酒が入ったせいかとにかく眠くてたまらず8時過ぎにさっさと就寝。
シュラフの隙間から冷たい空気が忍び込み、夜中何度か目を覚ます。トイレに行くときにテントの外の温度計を見たらマイナス14度。飛び雪が風に舞っている。雪は止んでいる。
朝4時半に目覚まし時計が鳴る。聞こえないフリをして二度寝を決め込む。4時50分頃にぼちぼち起きる。朝ごはんを食べ、装備を整えていると次第にテントの中が明るくなってくる。
空は雲ひとつないすっきりとした快晴。Nさんたちパーティに声をかけ、6時20分過ぎに出発(当初は6時出発の予定だったので二度寝した分きっちり後にシフトした^^;)。
行者小屋前から赤岳鉱泉方面に向かい、中山乗越の指導標から樹林帯の尾根筋に入る。すでにくっきりとしたトレースがある。7時過ぎに下部岸壁下に到着。ちょうど1番目の先行パーティが登攀を開始したところだった。2人組が2パーティ。自分たちは3番目。
それまで1ピッチ目の下部岸壁は自分がリードで登るつもりでいたけれど、実際に岩場を眺め、先行パーティの方たちが苦心している様子を見ると「これは無理ぽ」とヒシヒシ。Y氏の「どうする?」という問いに、「すみません、トップをお願いします」と即答。ちょっとだけ気持ちが楽になる。
風が吹き抜ける雪稜上なので、待っている間どんどん体が冷えていく。足指と指先がじんじんする。阿弥陀岳の山頂付近から赤岳の肩にかけては太陽の陽射しが眩しい。この陽の当たらない暗くて冷たい尾根筋に比べたら、あそこは暖かそうでいいなと思う。赤岳主稜の取り付き地点にトラバースする場所にたくさんの人が立ち止まっている様子も見える。
8時前に2番目のパーティが登りはじめ、自分たちも取り付き地点に移動。立派なペツルのアンカーが2つ。そのうちの1つでセルフビレイをとって待機。
取り付き点から直上して左上するルンゼに合流するルートにもピトンが打ち込まれているけれど、ホールドが乏しくて細かそう。
前のパーティのフォローの方が登り始めたすぐ後に、Y氏が登攀開始。M字の左側の岩場を少し右に回りこみ、順調に左上に上がっていく。
「登ってきていいよー」とコールを受けて、自分も登り始める。右に回りこむところの足元がいまいち悪い。いったん引き返してここかいなと取り付くと、頭上のY氏から「もっと右から」とのアドバイス。左壁をアンダーで抑えて回り込むと、あぁなるほどここか、というルンゼ。傾斜は緩やかだけど、中間部が少しいやらしい。薄く草の付いた凹みにピッケルを刺しても、雪の状態が悪くてちっとも決まらない。岩に氷が張り付いていてつるっとした感触にヒヤり。上部も良い手がないものの、足場は割と良くハイステップで抜ける。あぁ、自分がリードだったら抜けられなかったかもな。。
肩で息をしながらY氏に合流。ぜーはぜーは。「じゃあ、つるべで行く?」とY氏に問われ、ちょ、ちょっと待ったと息を整える時間をもらう。ぜーはぜーは。「出てすぐの木でランナー取るといいよ」とY氏。了解だす。というわけで、左の草付き帯へ踏み出す。ふわ雪の下は腐れ雪で、いまいち心許ない。点在する潅木にしがみつくようにして雪壁を登る。できるだけロープを伸ばし、少し傾斜が緩くなったところで支点をセット。
その先の雪稜はコンテで慎重に歩く。垂れたロープが時々足元にまとわりつく。少し傾斜が強くなったところで再度ロープを出すことにする。冷えた指先に温かい血が戻り、指先の深部が鈍く傷む。
雪稜なのでどうぞと言われ、自分がリード。先ほどと同じく尾根の左側の草付き帯を登る。下部よりは雪が締まっていて少しほっとする。途中の潅木でランニングビレイをとりながらできるだけロープを伸ばす。ふと見上げると尾根の右手に陽射しが当たり明るい。あぁあそこまで行こうと、さらにロープを伸ばす。潅木にビレイ点をセット。上部岩壁の取り付き点が目前に見える。
Y氏が上がって来た後、上部岩壁までそのまま歩く。
10時20分に上部岩壁下部に到着。喉がカラカラなので小休止。陽射しが強く暖かく、表層の雪はみるみる焼結し、てらてらと光る。雪と氷と過冷却水と水と、小さな熱平衡のダイナミックなゆらぎ。
上部岩壁は見るからに手強そう。先行パーティの登る様子を凝視していたY氏が、「そうかあそこはレイバックか」と気合を入れ、いざ登攀開始。少し上がったところで「しっかり頼むよ」と声がかかる。
するすると順調にロープが出て、Y氏は難なく抜けてしまった。さすが。
自分はフォローなので落ちても大したことはないだろうけど、それでも緊張。。
ここも中間部がいやらしく、ピックは効かずホールドは氷のスローパー。実際に登ると左の足元が切れ落ちていて高度感がある。ランニングビレイの回収を急ぐ。実は足場はそこそこ安定していても、気持ちが先に折れてしまいそう。
上部のややハングした抜け口は、フレークを頼りに体を上げたものの、その先に手がなく焦る。ピックを持ち替えた方がよいと言われるもののピッケルバンドがロープに交差して上手くない。あーもう。どうにかピックを引っ掛け、アイゼンの爪先を岩に載せてハイステップ。上部の岩を掴む。やった。
わぁー。。。恐かった。。
またしてもぜーはぜーはと肩で息をしつつ緊張がまだ解けないうちに「じゃ、つるべで」と言われ、はいよと登り出し。
尾根の左に出て、下に草が透けて見える雪の斜面を登る。少し傾斜が緩み尾根筋を目指して右上すると前方に岩壁が見える。雪の斜面の摩擦が大きくてロープが重いことこの上なし。
手頃な潅木が散在しているけれど、おそらく前方の岩にしっかりしたアンカーがあるのではないかと、そこまでいっぱいにロープを伸ばす。ビンゴ。ペツルのボルトがあった。
最後の岩場はY氏がリード。先行パーティのトレースを追うように左から回りこむラインをとる。この辺りはピッケルがしっかり決まるし岩のホールドもぬめらないので、少し安心。残置がないらしく、ランニングビレイは顕著なピナクルにスリングをかけたものが続く。なるほどなと思いながらできるだけ素早く回収。
Y氏に合流。岩を回り込むと広いテラス。風はなく、ぽかぽかと陽射しが暖かい。
快適。
ゴジラの背中のような荒々しい赤茶の岩に白い雪がこびり付いていて、真っ青な空とのコントラストが美しい。あぁこんなところを登ってきたんだな…と、ちょっと感慨無量。
ここで少し休憩し、ロープをザックに片付け、バンドを右にトラバースして12時50分前に登山道に合流。
稜線上なのに無風快晴でぽかぽかと暖かい。北アルプス、中央アルプス、南アルプスに富士山もくっきり。絶景かな、絶景かな。
写真を撮りまくり、お昼ごはんを食べて…と、緊張と疲れからか、顎が疲れていてうまく咀嚼できない自分に笑ってしまう。
13時5分に下山開始。なんだか名残惜しくて、途中何度も中山尾根を振り返る。地蔵尾根を下り、14時10分に行者小屋に戻る。樹林帯に入ると、濃厚なシラビソの香りに満ちる。雪はまだ深いけど、ここももう春なんだなと実感する。
赤岳主稜からNさんたちが戻るのを待ちながらのんびり撤収開始。
Nさんたちが戻ってきたのは午後3時半頃。なんでも赤岳主稜は激混みでNさんたちは6パーティ目だったとか。待ち時間が長くて辛かったけれど、無事に登ることができて最高でした! という晴れ晴れとした表情。
ほんとうに。無事に登れて良かったです。お天気も展望も素晴らしく、最高でした。
途中途中、必死すぎて断片的だけど、核心箇所のホールドやムーブ、必死でロープを伸ばした雪の斜面、振り返って見た周囲の風景を、繰り返し鮮明に思い出します。
とはいえ。核心箇所はすべてフォローで、登らせていただいたというのが正解なので、もっと登れるようにならければ、またはもっとロープワークを素早くするとか荷物を背負えるようにならなければ、次のステップには進めないなぁ。。と反省もしきり。。
土曜日の朝、温かい雨の降る都内を出発。富士見高原のあたりでも周辺に雪は見当たらず。それでも美濃戸口に向かう途中で、次第に雨がぼたぼたとぼたん雪に変わりました。
水分多めのじっとりと重い湿雪で、こんな中を歩いたらあっという間にぐっしょり濡れてしまうよなぁ…と、いまいち出発するモチが上がらず。
それでもまぁ11時には出ますかね…と、ぼちぼち準備を進めていると、ちょうど赤岳主稜狙いのNさんたちが美濃戸口に到着。Nさん車は4駆なので赤岳山荘まで便乗させてもらうことになる。ラッキー。
Nさんたちが美濃戸口の八ヶ岳山荘で朝ごはんを食べる間しばしお待ちし、ほぼ12時に赤岳山荘の駐車場に到着。1時間の林道歩きを省略できたのはありがたい。
これから装備の最終準備を行うというNさんたちパーティと分かれて、自分たちは一足先に12時5分に赤岳山荘から南沢経由で歩き出し。
ゆっくりめのペースでお願いしますと同行のY氏に伝える。登りの間いつも話の途切れないY氏が、今回は不思議なくらい口数が少ない。
標高1800mあたりまでは降ったばかりだというのにぼってりとした雪が靴の裏にダマとなってくっついて気持ち悪い。それでも、高度が上がるにつれて気温が下がり、標高1850mを過ぎたあたりから雪は次第にさらさらとした感触に変わる。風はなく、湿り雪なので降り積もるはしから自重で嵩が減りラッセルにならずに済むのはありがたい。
それにしても、午後遅くには降り止むとの予報だったけど、空は厚い雲に覆われなかなか天候が回復する兆しは見られない。
間に2回休憩を挟んで15時ちょうどに行者小屋に到着。すでにテントが4、5張りほど。空いているテン場を踏み固めテントを設営していると、自分たちの30分後にNさんたちが到着。この頃から時折雲の間に青空が覗くようになり、阿弥陀岳や赤岳、横岳が見える。中山尾根の取り付き地点は、あの二つの三角形がM字を成す、あのラインだよねと確認。
もう夕方なので夕飯の準備に取り掛かる。赤岳鉱泉からテント場代を徴収しに来た小屋の人が「昨日までは暖かくて雪が氷板になった上に今日は60cmの降雪なので、明日は雪崩に注意してください」と言う。60cmかぁ。結構降ったんだな。。
Nさんたちはひとりずつ個人用テントを担いできたので、自分たちの4人用テントに集まり夕飯。Nさんたち3人がいっぺんに3つのガスを使ったら、テント内があっという間に酸欠状態に。息苦しい。まるで自分が真っ暗な水の底にいて、水面は遥か高みで浮上できないみたいな感じ。
外の雪は未だ降り止まず、あまつさえ風が出てきた。今夜は冷えそう。
「この分だと明日はラッセルかなぁ」とY氏とN氏。「まぁ雪が重いからそれほどではないと思うけど、トレース泥棒狙いでのんびり出発すればいいんじゃないかなぁ」と自分(←姑息。ごめんなさい)。
Nさんたちがたんまりお酒を担ぎ上げてくれたけれど、ほとんど消費することなく散会。少しばかり明日の準備をし、お酒が入ったせいかとにかく眠くてたまらず8時過ぎにさっさと就寝。
シュラフの隙間から冷たい空気が忍び込み、夜中何度か目を覚ます。トイレに行くときにテントの外の温度計を見たらマイナス14度。飛び雪が風に舞っている。雪は止んでいる。
朝4時半に目覚まし時計が鳴る。聞こえないフリをして二度寝を決め込む。4時50分頃にぼちぼち起きる。朝ごはんを食べ、装備を整えていると次第にテントの中が明るくなってくる。
空は雲ひとつないすっきりとした快晴。Nさんたちパーティに声をかけ、6時20分過ぎに出発(当初は6時出発の予定だったので二度寝した分きっちり後にシフトした^^;)。
行者小屋前から赤岳鉱泉方面に向かい、中山乗越の指導標から樹林帯の尾根筋に入る。すでにくっきりとしたトレースがある。7時過ぎに下部岸壁下に到着。ちょうど1番目の先行パーティが登攀を開始したところだった。2人組が2パーティ。自分たちは3番目。
それまで1ピッチ目の下部岸壁は自分がリードで登るつもりでいたけれど、実際に岩場を眺め、先行パーティの方たちが苦心している様子を見ると「これは無理ぽ」とヒシヒシ。Y氏の「どうする?」という問いに、「すみません、トップをお願いします」と即答。ちょっとだけ気持ちが楽になる。
風が吹き抜ける雪稜上なので、待っている間どんどん体が冷えていく。足指と指先がじんじんする。阿弥陀岳の山頂付近から赤岳の肩にかけては太陽の陽射しが眩しい。この陽の当たらない暗くて冷たい尾根筋に比べたら、あそこは暖かそうでいいなと思う。赤岳主稜の取り付き地点にトラバースする場所にたくさんの人が立ち止まっている様子も見える。
8時前に2番目のパーティが登りはじめ、自分たちも取り付き地点に移動。立派なペツルのアンカーが2つ。そのうちの1つでセルフビレイをとって待機。
取り付き点から直上して左上するルンゼに合流するルートにもピトンが打ち込まれているけれど、ホールドが乏しくて細かそう。
前のパーティのフォローの方が登り始めたすぐ後に、Y氏が登攀開始。M字の左側の岩場を少し右に回りこみ、順調に左上に上がっていく。
「登ってきていいよー」とコールを受けて、自分も登り始める。右に回りこむところの足元がいまいち悪い。いったん引き返してここかいなと取り付くと、頭上のY氏から「もっと右から」とのアドバイス。左壁をアンダーで抑えて回り込むと、あぁなるほどここか、というルンゼ。傾斜は緩やかだけど、中間部が少しいやらしい。薄く草の付いた凹みにピッケルを刺しても、雪の状態が悪くてちっとも決まらない。岩に氷が張り付いていてつるっとした感触にヒヤり。上部も良い手がないものの、足場は割と良くハイステップで抜ける。あぁ、自分がリードだったら抜けられなかったかもな。。
肩で息をしながらY氏に合流。ぜーはぜーは。「じゃあ、つるべで行く?」とY氏に問われ、ちょ、ちょっと待ったと息を整える時間をもらう。ぜーはぜーは。「出てすぐの木でランナー取るといいよ」とY氏。了解だす。というわけで、左の草付き帯へ踏み出す。ふわ雪の下は腐れ雪で、いまいち心許ない。点在する潅木にしがみつくようにして雪壁を登る。できるだけロープを伸ばし、少し傾斜が緩くなったところで支点をセット。
その先の雪稜はコンテで慎重に歩く。垂れたロープが時々足元にまとわりつく。少し傾斜が強くなったところで再度ロープを出すことにする。冷えた指先に温かい血が戻り、指先の深部が鈍く傷む。
雪稜なのでどうぞと言われ、自分がリード。先ほどと同じく尾根の左側の草付き帯を登る。下部よりは雪が締まっていて少しほっとする。途中の潅木でランニングビレイをとりながらできるだけロープを伸ばす。ふと見上げると尾根の右手に陽射しが当たり明るい。あぁあそこまで行こうと、さらにロープを伸ばす。潅木にビレイ点をセット。上部岩壁の取り付き点が目前に見える。
Y氏が上がって来た後、上部岩壁までそのまま歩く。
10時20分に上部岩壁下部に到着。喉がカラカラなので小休止。陽射しが強く暖かく、表層の雪はみるみる焼結し、てらてらと光る。雪と氷と過冷却水と水と、小さな熱平衡のダイナミックなゆらぎ。
上部岩壁は見るからに手強そう。先行パーティの登る様子を凝視していたY氏が、「そうかあそこはレイバックか」と気合を入れ、いざ登攀開始。少し上がったところで「しっかり頼むよ」と声がかかる。
するすると順調にロープが出て、Y氏は難なく抜けてしまった。さすが。
自分はフォローなので落ちても大したことはないだろうけど、それでも緊張。。
ここも中間部がいやらしく、ピックは効かずホールドは氷のスローパー。実際に登ると左の足元が切れ落ちていて高度感がある。ランニングビレイの回収を急ぐ。実は足場はそこそこ安定していても、気持ちが先に折れてしまいそう。
上部のややハングした抜け口は、フレークを頼りに体を上げたものの、その先に手がなく焦る。ピックを持ち替えた方がよいと言われるもののピッケルバンドがロープに交差して上手くない。あーもう。どうにかピックを引っ掛け、アイゼンの爪先を岩に載せてハイステップ。上部の岩を掴む。やった。
わぁー。。。恐かった。。
またしてもぜーはぜーはと肩で息をしつつ緊張がまだ解けないうちに「じゃ、つるべで」と言われ、はいよと登り出し。
尾根の左に出て、下に草が透けて見える雪の斜面を登る。少し傾斜が緩み尾根筋を目指して右上すると前方に岩壁が見える。雪の斜面の摩擦が大きくてロープが重いことこの上なし。
手頃な潅木が散在しているけれど、おそらく前方の岩にしっかりしたアンカーがあるのではないかと、そこまでいっぱいにロープを伸ばす。ビンゴ。ペツルのボルトがあった。
最後の岩場はY氏がリード。先行パーティのトレースを追うように左から回りこむラインをとる。この辺りはピッケルがしっかり決まるし岩のホールドもぬめらないので、少し安心。残置がないらしく、ランニングビレイは顕著なピナクルにスリングをかけたものが続く。なるほどなと思いながらできるだけ素早く回収。
Y氏に合流。岩を回り込むと広いテラス。風はなく、ぽかぽかと陽射しが暖かい。
快適。
ゴジラの背中のような荒々しい赤茶の岩に白い雪がこびり付いていて、真っ青な空とのコントラストが美しい。あぁこんなところを登ってきたんだな…と、ちょっと感慨無量。
ここで少し休憩し、ロープをザックに片付け、バンドを右にトラバースして12時50分前に登山道に合流。
稜線上なのに無風快晴でぽかぽかと暖かい。北アルプス、中央アルプス、南アルプスに富士山もくっきり。絶景かな、絶景かな。
写真を撮りまくり、お昼ごはんを食べて…と、緊張と疲れからか、顎が疲れていてうまく咀嚼できない自分に笑ってしまう。
13時5分に下山開始。なんだか名残惜しくて、途中何度も中山尾根を振り返る。地蔵尾根を下り、14時10分に行者小屋に戻る。樹林帯に入ると、濃厚なシラビソの香りに満ちる。雪はまだ深いけど、ここももう春なんだなと実感する。
赤岳主稜からNさんたちが戻るのを待ちながらのんびり撤収開始。
Nさんたちが戻ってきたのは午後3時半頃。なんでも赤岳主稜は激混みでNさんたちは6パーティ目だったとか。待ち時間が長くて辛かったけれど、無事に登ることができて最高でした! という晴れ晴れとした表情。
ほんとうに。無事に登れて良かったです。お天気も展望も素晴らしく、最高でした。
途中途中、必死すぎて断片的だけど、核心箇所のホールドやムーブ、必死でロープを伸ばした雪の斜面、振り返って見た周囲の風景を、繰り返し鮮明に思い出します。
とはいえ。核心箇所はすべてフォローで、登らせていただいたというのが正解なので、もっと登れるようにならければ、またはもっとロープワークを素早くするとか荷物を背負えるようにならなければ、次のステップには進めないなぁ。。と反省もしきり。。
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norlys
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非公開
自己紹介:
Norlys(ノールリース)。極光、いわゆるオーロラ。雪の降る季節と雪の降る景色がすき。趣味は編み物。週末は山を散策。
色々と気になることをメモしたり、グダグダ書いてみたり。山の記録はなるべく参考になりそうなことを…と思いながらも思いついたままに垂れ流し。。
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