忍者ブログ
Norlys(ノールリース)-日々のあれこれ
Posted by - 2024.05.17,Fri
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

Posted by norlys - 2010.07.13,Tue

先々週遡行した小室谷川の記録も書きたいところだけど、それはまたいつかの今度、ということで。

先週は小川山へ。北海道からJ支部長が出張でいらっしゃるということで週末をご一緒することに。
J支部長の希望は「アルパインかフリー」とのこと。生憎と内地は折りしも梅雨の季節なので、天気予報は前線に振り回されて変わりまくり。この有様では本チャンの予定を組むのは難しい。

ならば、アルパインとフリーの間をとって(?)、小川山の烏帽子岩左稜線はどうでしょう? と提案。先日ネットであれこれ検索しているときに、ふと目にした烏帽子岩のスカイラインを辿る長いマルチピッチルートことが頭の一角を占めて離れずにいた。全体のグレードはそれほど難しくない(らしい)、ただトータルのピッチ数が多く、とにかく長いらしい。

幸いなことにJさんとYさんからは異論は出ず、しかも金曜夕方の時点で翌日土曜日は終日晴れの予報。こんな千載一遇の機会は滅多にない。本当にラッキーだったと思う。

金曜日の夜に都内で集合し、一路周り目平へ。
土曜日の朝、前夜の就寝が遅かったので7時半過ぎに起床。外はすっきりとした青空。前夜キャンプ場入りした際には車もテントもまったく見かけず閑散としていたのに、すでに支度を整えて岩場へ向かうパーティ達を見送る。今の時分は日も長いので特に急ぐこともなく朝食を食べ装備を整え、8時半頃歩き出し。

初見のルートなので第一の核心は取り付きへのアプローチだと考えていた。けれど、頂戴したトポの記述が簡潔にして非常に的確だったお陰で迷うことなく取り付き地点に至る。各ピッチの詳細も同様で感銘を受ける。9時半前に取り付き地点に。ここにザックをデポして登攀準備を整える。

3人パーティだけどシングルロープしか用意していなかったので、トップはシングルロープ1本で登り、セカンドがもう1本をバックロープとして引く形。短いピッチならば1本目でセカンドとサードが登り、長いピッチはバックロープでサードを確保。
ギアはキャメロットを1セットとナッツを1セット。10時10分に登攀開始。

1-2P:自分がリード。立ち木に囲まれた泥付きのルンゼ。前日までの雨でかなりの染み出し。問題はないと思っていたのに、スタンスに乗り込む際にスリップしてフォール。あちゃ。。幸い左足首の擦り傷だけで済んだ。乾いていたらまったく問題のないところ。

気を取り直してリトライ。すぐ上のテラスに至るも、目の前に次のピッチの終了点が見えたのでそのままロープを伸ばす。
少々ざらり+しっとりとした岩をトラバース。途中の残置ピトンにスリングをセットするのに手間取る。このピッチのリードで30分もかかってしまった。この先も長いのに…とメゲる。ダブルクラック手前の小テラス下で立派な立ち木を支点にビレイ。

3P:Jさんリード。短いダブルクラック。自分は今度はサードで確保されているので緊張から解放され楽しく登る。バンドを少し右に歩いて移動。

4P:Yさんリード。目の前に明るい階段状の岩がばんと現れる。振り返るとガマの頭が眼下に見える。Yさんはカムと残置のピトンでランニングビレイを取りながらロープを伸ばしていく。終了点は近そうで案外遠い。上部は岩がややざらつき気味で、浮石に注意しながら登る。ひょっこり岩峰の上に至る。

P7101809_s.JPG5P:自分がリード。岩稜歩き。北アルプスの岩稜帯ならノーロープかな…と思いつつ、ロープを出した以上は中間支点をとらなければ意味がないなぁとも思い、カムをセットしながら岩を巻いたり登ったり下ったり。樹林帯手前の立ち木で確保。マラ岩をこの角度から見下ろすと、頂上付近がナイフ状であることを初めて知る。

6P:樹林帯歩き。ロープを畳んで次のピッチまで移動。

7-8P:Jさんリード。木の根の多い藪がちな岩尾根から取り付き、8P目の途中に現れるすっきりとした小テラスへ。
この時点で13時20分。お腹が空いたので20分ほど休憩。
右手に小川山の山頂、リッジの先右に金峰山山頂が見える。左には烏帽子岩の頂点と思しき岩峰、左手に烏帽子沢右俣の涸れ沢。絶景かな、絶景かな。

8-9P:Yさんリード。恐竜の背びれのようなリッジから凹角を登り、トラバース手前のバンドでピッチを切る。この辺りにも古い残置ピトンが散見される。

10P:自分がリード。一瞬怖いトラバース。それほど怖くないけど、やっぱり怖い(どっち?)。リッジを右に巻いて古い残置クイまで歩き。短いのでロープを伸ばしたいところだけれどZ字状になり流れが悪いのでピッチを切る。ところで、このクイは一体いつ誰が何のために設置したのだろう…

11P:自分がリード。烏帽子岩前衛壁と烏帽子岩本峰が目前に聳えている。登攀要素が低い岩尾根歩きが続くので、続けて自分が進ませてもらう。この辺りは天上の回廊、天空の迷宮という感じ。岩稜のピクニック。
終了点からは烏帽子岩本峰西面のすらりとした壁と終了点が見える。烏帽子岩本峰最上部に連なるキレイなクラックも。

P7101871_s.JPG12P:Yさんリード。前衛壁から烏帽子岩本峰へ岩の擁壁上を辿る。ヨーロッパの古城や城壁巡りをしている気分。西股沢の森は遥かに眼下。高度感が麻痺しそう。

13P:Jさんリード。キレイなハンドクラックを登る。楽しい。まさかこんな場所に、こんな快適で楽しいクラックがあるとは…と思わせる、ルート全体のハイライト。

14P:歩き。小川山の岩峰頂点によくある空中庭園のような道を辿り、烏帽子岩本峰の頂上へ。チムニーやワイドクラックのある岩壁が奥に続いているのを見る。一方で本峰の頂点に到達したことで十分充実感を得る。

15P:頂上裏手から少し下り、岩のカンテ伝いに懸垂下降。

P7101911_s.JPG16P:小さな突起状のリッジを回り込み対岸へ。チムニーを登る。上部に行くほど岩が風化して脆いけれど、このチムニーは見た目よりも簡単で面白い。

17P:残置支点を利用して懸垂下降。

18P:岩の基部を回りこんで樹林帯を抜けてコルへ。このコルからエスケープ可能ということで、見れば近くにある木に目印のテープがある。
この時点で17時半を廻っていたのと、烏帽子岩本峰の頂点に至ったことですでに充足感を得ていたので、今回はこれにて終了。
残り2ピッチのワイドクラックとチムニーは、いつになるかは分からないけれど、また機会があったらいつの日にか。

ぐるりと烏帽子岩の基部を回り込むように歩く。途中、いくつかルートと思しきボルトを見る。取り付き地点に戻ったのは18時半前。
登攀道具を片付け、来た道を戻る。樹林帯は薄暗いけれど、アプローチの大半は空が開けているので明るい。

テン場に戻ると、一足先に下山されたJさんがすでに夕飯の準備を進めていてくれた。感謝。行動時間が長かったので、すっかりお腹がぺこぺこ。Yさんが大量の薪を見つけて盛大に焚き火を起こす。

この日は文字通り梅雨の晴れ間で、暑過ぎず寒くもない快適な一日。時折雲が流れていくだけで一日中青空が広がっていた。この長いルートにお付き合いくださったYさん、Jさん、本当にほんとうにありがとうございました。

***
最後に、このルートを再生された方々に、深く心から感謝の意を表します。言葉では言い尽くせませんが、ありがとうございます。

***
ルートの途中にはいくつかのピトンが残置されていました。決して多過ぎず、極めて限定された箇所に控えめに、確かにそこにありました。今の時代の私達には、性能にすぐれたカムデバイスがあるので、残置ピトンがなくとも登攀に支障はありません。けれど、恐らくは30数年を経て未だそこにある人工物からは、かつてここを登った昔の人の声を聞いたような気がしました。

PR
Comments
Post a Comment
Name :
Title :
E-mail :
URL :
Comments :
Pass :   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
TrackBack URL
TrackBacks
Calendar
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
最新記事
(07/27)
(07/13)
(07/10)
(03/18)
(03/17)
(03/16)
(03/16)
(03/16)
(03/12)
(03/10)
Profile
HN:
norlys
性別:
非公開
自己紹介:
Norlys(ノールリース)。極光、いわゆるオーロラ。雪の降る季節と雪の降る景色がすき。趣味は編み物。週末は山を散策。

色々と気になることをメモしたり、グダグダ書いてみたり。山の記録はなるべく参考になりそうなことを…と思いながらも思いついたままに垂れ流し。。
つぶやき。
Search
Meteo
Look down on Earth
↑陸域観測技術衛星ALOS(だいち) 「P」ボタンを押すと衛星画像になりますyo
Ads
Comments
[09/23 ヨシ]
[02/06 kacky]
[09/22 kacky]
[07/31 vini]
[07/06 FilsNoel ]
Trackbacks
バーコード
Tool
Log
Template by mavericyard*
Powered by "Samurai Factory"
忍者ブログ [PR]