残雪の浅草岳、守門岳の山行の帰り道、関越道から見た谷川岳の姿が脳裏にこびりついてしまい、谷川岳-万太郎山-平標山の縦走をしたいよーと、週の始めに山好きの元同僚にメールを出した。
土曜日は用事があるけど、日曜日なら空いてるよーという返信を受けて、では縦走ではなくて谷川岳に登ることにしましょうかと、必要な装備についてとか予定のルートとか、電車の時刻表やら最近谷川を登った人の山BlogやらのURL、国土地理院の2万5千分の1地図を加工したものやら盛り込んでメールを送信した。
谷川岳なら電車の駅からスタートできるし、シュラフなどの荷物も麓のロープウェー乗り場のロッカーにデポできるので、自動車のないハイカーにとっては好都合。
天候が思わしくなかったら、水上温泉を散策しましょう、とも伝えた。
事前にできる準備としては割とちゃんとしたつもりだったのだけど、彼女から届いた「了解」という本文のメールの件名は「あてどなく谷川岳」に改変されていた。
あてどなく。。。
ただでさえ天候の変化が激しい谷川岳を「あてどなく」歩くのはあまり感心しないけど。。。とむにゃむにゃ思いながらも、メールの件名には突っ込まずにおいた。
それからは毎日天気図とにらめっこ。当初、日曜日は寒冷前線が直撃という最悪の予想だったけれど、気圧配置を見る限りそこまでひどいことにはならないだろうと予測していた。ただ、あまり山歩きに適した日和ではないことも覚悟していた。
当日、出発の少し前に元同僚から携帯にメールが入り「遅れます」とのこと。とほほ。。。土合駅に同日中に到着するには遅れては困るんだが。。と思いながらも大宮から高崎まで新幹線で来てもらうことにする。
わたしはひとり高崎行きの湘南新宿ラインに乗り、ほんとうに「あてどなく」谷川岳に行くことになったなぁと心細い。
無事に高崎駅で元同僚と合流し、上越線を乗り継いで8:46pmに土合駅に到着。
土合駅といえば、もぐら駅として有名な駅。下りホームは地下70mにあり、462+24段の階段を登らないと改札口に到達できない。いささか鉄分の濃いわたしは、その昔青春18切符でこの駅を訪れたことがあるが、目的地はさらに先だったので、その当時は改札まで登らずに社内に戻った。
土合駅の階段を登り待合室に着くと、すでに5人の登山客が夜仕舞をしていた。ご年配の男性が3名と、若い男性が2名で、女性はわたしたちふたりきりだった。みな車で駅舎まで来たようで、電車で土合まではるばるやってきたのもわたしたちふたりだけだった。
ご年配の男性3人はそれぞれ単独だけど足繁く谷川岳を訪れることで顔なじみになったらしい。土合駅や谷川岳についてあれこれ教えてくれた。
先客のアドバイスに従い、待合室の長椅子をふたつ並べて寝床を用意して10時に就寝。
待合室は煌々と蛍光灯がともり、貨物列車や夜行列車が頻繁に往来する。下り列車のときは地下の深いところからごおおと風が吹き上げる音がし、上り列車のときはすぐそばをごとんごとんと通過する。
次の日の朝4時に目を覚ますと、ちょうど上野に向かう北斗星が目の前を通過した。なにしろ鉄分が濃いので、わたしは鼻血を吹きそうな勢いで元同僚に呼びかける。「見てみて、北斗星だよー」
元同僚はあまり寝付けなかったのか、寝ぼけ眼で列車の行方を振り返ったが、特に感想はなさそうだった。
北斗星を見たヨロコビ(?)で、嬉々としながら支度を始める。外はうす曇、携帯でみなかみの天気予報を見ると、明け方に小雨、午前中は曇り、午後は晴れという予報。
この様子なら天気はもつかもしれないなと思った。
5:35amごろに土合駅を出発。谷川岳ロープウェー乗り場を目指す。夏場なら駐車場に寝泊りしている登山客がいるのだけれど、今朝は一台の車も止まっていない。がらんとした建物をエレベータで4Fまであがり、女性用更衣室のロッカーにシュラフやガスなどの荷物を預ける。
いざ準備を終えて6Fのロープウェー乗り場についたのが6時ちょっと過ぎ。
ロープウェー乗り場のすぐそばにある登山指導センターで水を補充し、登山計画書を提出。ここで西黒尾根と天神尾根の状況を聞こうと思っていたのだけど、人気がなく静まり返っている。
「朝早いと寝ているかもしれないけど、叩き起こせば大丈夫」と、昨晩の土合駅にいた先客の方から聞いたけど、叩き起こすのもしのびないので、そのまま出発。
途中、西黒尾根のとりつきを間違えて一の倉方面に進んでしまったので、道を戻る。
西黒尾根を登り始めたのは、かれこれ6時45分くらいになってからだった。これなら7時から動き出すロープウェーに乗って、当初の予定どおり天神平をピストンしても良かったかも。。。とも思いながら、西黒尾根の急登を登る。
1130mあたりの小ピークまではずっと急登が続くので、息があがらない程度ののんびりペースで歩く。
雪の気配はまったくなく、なんなく夏道をたどることができた。
1200mあたりで少しだけ雪の斜面が現れたけれど、あとはところどころしか雪がない。例年なら、もう少し雪が残っているらしいけれど、今年はほんとうに雪が少ないそうだ。
のんびりペーすながらにコースタイムどおりに登っていたけれど、岩場が連続したあたりからペースが落ち始める。元同僚は岩場と雪面が苦手なので、岩と雪が現れると途端に前に進まなくなる。あまり先を急ぐ必要もないし、急かすことで事故が起きたら困るので、のんびり行く。
10時ごろ、ラクダのコルに到着。コースタイムでは2時間40分のところを、3時間15分かけたことになる。休憩が多かったし、ペースもだんだん落ちているので、こんなものだろうと思う。
ただ、その先山頂までコースタイムでは1時間20分となっているけれど、このままでは2時間+αになるだろうな、と思った。
遅くとも午後1時までには山頂に到着しないと、元同僚は下りも苦手なので、最終のロープウェーにぎりぎり間に合う。。。なんてことになる可能性もある。
それに。。。ラクダの背、ラクダのコルを過ぎたあたりから、一の倉沢方面の上空に寒気が噴出し始めたのが気になる。まるで冷蔵庫を開けた瞬間みたいに、冷気が降りてくるのが見える。
まだ谷川岳山頂方面は目視できるけれど、その向こうに白い雲が厚く集い始めているのも見える。
これは無茶しないほうがいいかもなぁ。。と、ココロの中で思っていると、1700mあたりの岩尾根を渡っているあたりで、マチガ沢方面から冷たい強風が吹き込んできた。天神平方面から吹き上げる空気と対流を起こしているのが見える。
おお、目前に寒気と暖気の層が見える、見えるよ、ママン。
と、お天気マニアでもあるわたしにとって、自然現象のすばらしさを味わうチャンス。ただ、山登りの場面であることを考えると、決して歓迎される状況ではない。ましてや傾斜のキツい岩尾根にいる山登らーにとっては。。。
マチガ沢方面様子を横目に見ながら、とさらにペースを落としてゆっくりと岩尾根をたどる。
しばらくすると、山頂があっという間に雲で覆われてしまった。。。ま、まずい。
1800mあたりの岩場の終わる地点で岩の陰に座り、早めの昼食をとることにした。午前11時になるところだった。その先は斜面が少し急になり、すっかり雪に覆われている。
ふと足元を見ると、風化した薄茶の蛇紋岩に一条の白い筋が走っていた。白い筋はよく見ると六角柱状の石英のようだった。石英脈。。。? 米粒大の水晶の結晶が詰まっている。きれいだな。
霧の中から、6名の男性グループが西黒尾根を降りてくるのが見えた。
上のほうはクラストしているので、ピッケルがあったほうが良さそうだ、とのこと。今回はアイゼンはもっているがピッケルではなくストックのみ。
あと少し登りつめれば肩の小屋に出れる。。。1年前の夏にも西黒尾根を登っているので、自分たちが今いる場所はわかっているけれど、風の吹く中雪の斜面を登って肩の小屋にたどりついても展望も望めないし今のペースで谷川尾根を降りても。。。と、しばらく逡巡する。
40分ほど岩陰に潜んで天候の様子を見た。回復が望めないと判断し、11時45分に西黒尾根を降りることにする。
2時45分に西黒尾根下山口に到着。天神平には陽が差しているが、相変わらず谷川岳山頂は雲で覆われていた。
3時32分土合駅発の電車にのり、帰京。
次回はもっと天気の良いときにリベンジしたいものです。。。
色々と気になることをメモしたり、グダグダ書いてみたり。山の記録はなるべく参考になりそうなことを…と思いながらも思いついたままに垂れ流し。。
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